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卒業研究(2003年度版)

卒業研究
「核磁気共鳴装置の建設と
       応用エレクトロニクス」

 
 卒業研究は核磁気共鳴装置を共同で製作し,核スピンの信号を実際に観測することを目的とする.そのために卒業研究は3つの部分に分かれる.

1.基礎エレクトロニクス
 卒研生は回路製作の経験がないものと仮定し,初歩から回路製作を試みる.
 最初の課題はエミッタ接地増幅回路である.このエミッタ接地増幅回路はエレクトロニクスの基本であるから,電子回路で習った理論と実際回路の比較をしながら回路製作の技術を身につける.このエミッタ接地増幅回路の製作が出発点である.
 次にOPアンプを用いた増幅器を作る.トランジスタに比べて,ICがいかに便利なものかが実感できる.次に無安定マルチバイブレータをトランジスタとICを用いて作る.
 基礎エレクトロニクスの仕上げとしてFETを用いたゲート接地で高周波増幅回路を作る.エミッタ接地増幅回路やマルチバイブレータは接続さえ間違えなければ動作するが,高周波回路は回路図に示されないいろいろな配慮が必要である.従って,同じ回路で同じパーツを使っても,発振してしまったり,増幅しても得られた利得は学生によってずいぶん異なる結果となる.
 ゲート接地の高周波増幅器が一応出来るようになると,回路製作に必要な最低限の事項を身につけたことになり,基礎エレクトロニクスは完了である.

2.核磁気共鳴の原理
 核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance,NMR)は核スピンのエネルギー準位の間のエネルギー差に等しい電磁波のみを吸収するという性質を利用した実験手段である.
 核磁気共鳴の原理は量子力学に基づくので面倒であるが,物性基礎や電子物性の講義を元に,基礎理論を勉強する.


3.核磁気共鳴装置の建設
 原理は難しいが,核磁気共鳴の観測装置は完全にエレクトロニクス装置である.高周波増幅回路やパルス発生器など,卒業研究では各自がそれぞれの部分を分担して製作する.核磁気共鳴装置の一部を写真1に示す.
 最後に各自が作った回路を用いて,強磁性鉄(57Fe)の核磁気共鳴信号を観測する.2003年度の学生が作成した高周波増幅回路を写真2に示す.

4.応用エレクトロニクス
 
基礎エレクトロニクスをこなし,核磁気共鳴装置の回路が製作できるようになると,ほとんどのエレクトロニクス回路を作成することが出来るようになる.そこで卒業研究の後半には,核磁気共鳴装置を作りながら,並行して各自が希望する応用エレクトロニクス回路を製作する.この応用エレクトロニクス回路は学生の希望により自由に作りたい回路を選ぶ.
 今までに実際に学生が製作したエレクトロニクスはオーディオアンプ関係やワンチップマイコンを用いた回路が多い.2003年度の4年生が作成したワンチップマイコンの温度測定回路を写真3に示す

写真1 核磁気共鳴装置

写真2 高周波増幅回路

写真3 ワンチップマイコンを用い
     た温度測定回路

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