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沈降する液滴の分裂現象

分野
非平衡物理
キーワード
渦輪、重力不安定性、モード選択
工学部 知能機械工学科

助教 下川 倫子

研究概要

 インクを一滴水中に落とすと、沈降しながら滴が分裂し、美しいパターンが観察される [1-3]。沈降過程で、滴は渦輪に変形し、渦輪の不安定化によって、複数個の滴に分裂する。この現象は誰でも簡単に実験することができるが、沈降しながら変形していく非定常な系であり、パターンの形成機構は明確になっているとは言えない。この現象の理解を深める目的で、下記の実験的研究を行った[4]。

1. 分裂を引き起こす渦の不安定性の起源

 渦輪の不安定性の起源を知るため、不安定化波長を実験で測定した。得られた波長は重力不安定性における成長率が最大となる波長とよく一致していた。以上のことより、重力不安定性が液滴の分裂現象において支配的な役割を果たすことが分かった。

図1:粘性流体中を沈降する滴の鉛直方向の変形
t = 0で滴は沈降し始める

2. 分裂個数を決定する物理量

 粘度や二流体の密度差、滴の粒径を変化させたときのそれぞれの実験から分裂個数mに関する頻度確率分布を調べ、mの平均値を求めた。1.に示すように滴の分裂は重力不安定性に起因するので、ブシネスク近似の下、密度差による重力の効果を駆動力としたナビエストークス方程式で分裂現象を表現した。前述したナビエストークス方程式を無次元化することによって得られた物理量で様々な実験から得られたが整理できたことから、重力による滴の沈降現象と沈降中の流体間の粘性散逸の競合が分裂モードの決定において重要であることを考察した。

図2:粘性流体中を沈降する滴の水平断面での変形 [4]
(a)m = 3, (b) m = 4, (c) m = 5, (d) m = 6

参考文献

[1] D’arcy Thompson, “On growth and forms”, Cambridge University Press (1961).

[2] F. T. Arecchi, et al., Europhys. Lett., 9, 333 (1989).

[3] F.T. Arecchi, et al., Europhys. Lett., 15, 429 (1991).

[4] M. Shimokawa, T. Nakamura, N. Mayumi, T. Takami, and H. Sakaguchi., Phys. Rev. E, 93, 062214 (2016).

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