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広帯域誘電分光を用いた凝縮系における分子運動に関する研究

分野
化学物理、生物物理
キーワード
分子運動、広帯域誘電分光、ガラス転移、生体分子、水、氷
工学部 電気工学科

助教 中西 真大

研究概要

1.液体の分子運動に関する研究

 物質はミクロに見ると原子や分子から構成されている。液体の特徴は流れることができ、その形を変えることができる点であるが、この特徴は液体を構成する分子が運動することに由来している。
 本研究室では、電場に対する応答性からこの分子運動の様子を調べている。

◆広帯域誘電分光法とは

 多くの分子は電荷の偏りを持っていて、+の電荷が強い部分と-の電荷が強い部分に分かれている(図1)。こうした電荷に偏りを持った分子に電場を加えると、+の部分は電場の方向に、-の部分は電場と逆向きの方向に引き寄せられ、分子に回転が生じる(図2)。この様に電場を印加して、分子に向く方向を指示し、分子がそれに対してどれくらい並べられたかを表わすのが「誘電率」という物理量である。直流電場の代わりに交流電圧を加え、分子の向くべき方向を一定の時間間隔で変化させた場合、分子はその方向を電場の周波数に従って変化させる。ところが、分子の動ける速さには限界があり、その限界の速さよりも早く電場の方向を変化させると、分子は電場の指示する方向に従うことができずに、ばらばらの方向を向いたままになる。このときの誘電率は、遅い周波数の電場を加えたときよりも小さくなるはずである。実際に電場の周波数を徐々に早くしながら誘電率を観測すると、ある周波数を境に大きな誘電率から小さな誘電率に変化する。この周波数から、分子の動ける速さが分かる。

図1:水分子の電荷の偏り

図2:電場に対する分子の応答

2.水と生体分子の分子運動及び氷中の水分子の配向運動に関する研究

 生命活動には水が不可欠なことから、タンパク質やアミノ酸などの生体高分子の働きは水に支えられていると考えられている。誘電率の測定を通して、このような水と生体分子の相互作用を分子運動の観点から研究している。
 また、氷は固体であるが、実は氷の中では水分子は配向をランダムに変えることができる。つまり、分子の方向の点から見ると氷は固体ではなく液体なのである。このような氷の中の水分子の運動やその不純物効果などを誘電率の測定を通して研究している。

3.ガラス転移に関する研究

 身の回りのプラスチックは、高分子というスパゲッティのような分子でできている。これも実は液体の一種で、温かいときには柔らかい餅が、冷めるにつれて徐々に硬くなるように、連続的に粘っこくなった状態である。これをガラス転移という。誘電分光法の広い周波数レンジを生かして、このような急激な分子運動の緩慢化を調べている。

利点・特徴  動的粘弾性測定とほぼ同等の情報が得られるが、測定できる周波数範囲が1010~10–5Hz程度と非常に広いこと、電気測定なので感度が高いこと、選択性が高いことなどが特徴である。
応用分野  コンデンサの材料の評価、高分子ダイナミクス、レオロジー、電池、水溶液の研究などによく応用される。