荒屋 真二 著 「明解 3次元コンピュータグラフィックス」 共立出版 (2003.9)
VRML97が制定された当時のパソコンの性能では十分な描画速度を確保できないという問題点があった.しかし,ここ数年のCPUとビデオチップの性能は飛躍的に向上し,描画速度の問題点は解消された.また,仮想世界の規模が大きくなるとダウンロードに時間がかかるという問題点もあった.しかし,ブロードバンド化も急速に進み,ダウンロード時間の問題はほぼ解消されたといってよい現状である.要するに,VRML97が誕生したのがちょっと早すぎただけである.現在でもインテル,マイクロソフトを始めとするそうそうたる会社が,Web3DコンソーシアムのメンバーとしてVRMLの標準化作業を続けている(FAQ7を参照).Web3D普及の鍵は,良質のコンテンツを低コストで開発できるようにすることにあり,3次元CG自体の課題とほぼ同じであると言ってよい.
Web3DとVRMLを違うものと考えている人がいるようであるが,VRMLはWeb3Dの代表的存在で唯一の国際標準である.現在,VRML以外にもViewpointやCult3dなど,いくつかのメーカが独自の技術を提案しているが,現在のところVRMLが最も普及している.
インタラクティブな3次元仮想世界をWeb上に公開するだけであるならば,VRMLを利用したほうが開発効率が高く,ユーザの準備作業も簡単である.しかし,VRMLではレンダリングはVRMLビューアに完全にお任せであるため,制作者独自のレンダリングをさせることはできない.レイトレーシングやシャドウマッピングなどを行いたいならばJavaを使わざるを得ない.VRMLのJavaに比較しての優位点は,@大部分のCGソフトがVRML形式でファイルを保存できる,Aレンダラを毎回ダウンロードする必要がない,B豊富なサンプルがWeb上に公開されている,などである.
VRMLは今後次のように変化してゆくと思われます.
(1) 使用目的に応じて必要な機能だけをもつコンパクトな3次元ビューアを構築できるようになる.
(2) 使用目的に応じて高度な機能を簡単に追加できるようになる.
(3) 3次元データをXMLで記述することにより,空間情報の意味解析や自動生成処理が容易になるとともに,他のWebメディアとの統合が容易になる.
これはX3Dと呼ばれ,2004年にISOから承認されました。FAQ7を参照ください。
VRMLコンテンツを制作する方法は,大きく分けて次の三つの方法があります.
(1) 簡単な3次元形状を使った世界を作る場合
テキストエディタだけでVRMLファイルを作成します.
(2) 複雑な3次元形状を使った世界を作る場合
3次元モデリングソフトを使って顔や動物などの形状データを作成し,
それをVRML形式で保存します.それをテキストエディタでVRMLファイルに
貼り付けるか,Inlineで読み込みます.
(3) 複雑なアニメーションの世界を作る場合.
アニメーション専用のソフトを使って複雑な動きの設定を行います.
キャラクターなどの動きはモーションキャプチャシステムを使うと
効率的によいデータを作ることができます.
光源も物体も固定の場合,両者の違いは目立たない.しかし,よく観察するとテクスチャマッピングの場合には光源の位置と凹凸による陰影のでき方が矛盾していることがある.特に,光源の位置あるいは物体の向きなどがリアルタイムで変化した場合,テクスチャマッピングでは陰影の状態が変化しないのに対し,バンプマッピングではきちんと変化する.
X3DはVRML97が進化したもので,3次元ファイルフォーマットの国際標準であり,その仕様は完全にオープンになっています。3次元データはXMLで記述されるため,すべてのアプリケーション間で実時間通信が可能です。また,X3Dは豊富な機能をもっているため,工学・科学・医学分野での可視化,CAD(建築,土木,機械など),訓練,シミュレーション,マルチメディア,娯楽,教育など,幅広い応用が考えられます。X3DとVRML97の主な違いは,次の6点です。
@ XML 統合:3次元コンテンツをWebサービスや分散ネットワークと統合可能。また,異種プラットフォーム間やアプリケーション間でのファイル/データ転送が可能。
A 部品化:核となる軽いブラウザを構成できるので,配布が容易。
B 拡張性:部品を追加して機能を拡張できるので,ニーズに応じたアプリケーションやサービスを提供可能。
C プロフィール:特定の応用分野ごとに決められた仕様のサブセット(標準拡張セット)を提供。
D 進化性:既存のVRML97コンテンツをX3Dに変換可能。
E 同報/組込対応:携帯電話からスーパーコンピュータまでが利用可能。