荒屋真二著 「人工知能概論 (第2版)」 共立出版 2004.10.1

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演習問題の解答例(第6〜12章)    最終更新:2004.10.1


第6章

6.1 図6.1の構文規則を用いて次の英文を構文解析し,生成される構文木を図示せよ.また,トップダウン手法とボトムアップ手法のそれぞれに対してルールの適用順序を書け.
  The big dog eats an apple.

<構文木>
 

<トップダウン手法>
 R1→R2→R7→R8→R9→R5→R10→R2→R7→R8 (
失敗
                      |→R3→R7→R9 (
成功
<ボトムアップ手法>

 R7→R8→R9→R2→R10→R7→R9→R3→R5→R1 (成功

6.2 次の英文の意味構造を格文法に基づいて意味ネットワークで表現せよ.
  (a) Tom broke the desk with a stone.
  (b) Tom went to the store from his house with his bicycle.

 

6.3 いろいろな自動翻訳システムを実際に使用してみて性能を比較せよ. Web検索エンジンを用い,「自動翻訳」をキーワードとして検索すると無償の翻訳サービスサイトがたくさん存在する.

 例えば,次の「翻訳サイトへのリンク集」は便利です。
  http://www.dio.ne.jp/user/bestsites/translate.html
 この中からいろいろ使用してみてください。

6.4 いろいろな音声認識ソフトおよび音声合成ソフトを実際に使用してみて性能を比較せよ.

<音声認識ソフト>
 Google検索エンジンを用いて,キーワード「音声認識ソフト」で最新情報を調べてください。
 また,MS Word 2003 の音声認識機能も使ってみてください。

<音声合成ソフト>
 Google検索エンジンを用いて,キーワード「音声合成ソフト」で最新情報を調べてください。
 例えば,次のサイトでサンプル音声の視聴ができます。
   http://www.oki.com/jp/Cng/Softnew/JIS/sm.htm#voicesample

6.5 いろいろな文字認識ソフトおよび手書き文字認識ソフトを実際に使用してみて性能を比較せよ.

 まずはIMEパッドの手書き文字認識を使ってみよう。かなり高性能です。しかし,口や田のような簡単な文字でも書き順序を間違えると認識率が極端に低下します。ゆえに,これは通常の手書き文字認識とは違い,書き順の情報も利用しているようです。
 スキャナで読み取った画像から文字を識別して文書に変換する
OCRソフト(Optical Character Reader)も使ってみよう。

6.6 次の線画にラベル付けせよ.また,このような多面体は実在するか.
 

  このような多面体は実在します。

6.7 次の線画はラベル付け可能であるが,そのような多面体は実在しないことを確かめよ(多面体は平面で囲まれた立体であるから,平面でない面が含まれていることを示せばよい).
 

 この図の青色の面以外の面が平面であるとするならば,青色の面は曲面になってしまいます。

6.8 次の線画はラベル付け不可能であり,そのような多面体は実在しないことを確かめよ.
 

 
 図6.16のリストに従ってラベル付けを行っていくと,この図のようなラベル付けになります。しかし,赤丸で示した頂点に着目すると,図6.16のリストにこのようなL型頂点は存在しません。ゆえに,このような多面体は実在しないと結論できます。


第7章

7.1 演繹推論,帰納推論,アブダクションの簡単な具体例を考えよ.

演繹推論
  「A君は情報工学科の学生である」,「情報工学科の学生はみなパソコンが好きである」
  ゆえに,「A君はパソコンが好きである」

帰納推論
  「A君は情報工学科の学生でパソコンに詳しい」,「B君も情報工学科の学生でパソコンに詳しい」
  ゆえに,「情報工学科の学生はパソコンに詳しい」

アブダクション
  「学生Aはパソコンに詳しい」,「学生Aが情報工学科の学生ならばパソコンに詳しいのは当然である」
  ゆえに,「学生Aは情報工学科の学生であると考えられる」

第8章

8.1 我々人間が行っている,暗記学習,教示学習,演繹学習,類推学習,帰納学習,発見学習の具体例をあげよ.

暗記学習:掛け算の九九を覚える。

教示学習:先生の講義を聴講したり,本を読んだりして試験に備える。

演繹学習:オートバイの故障診断を何度も経験しているうちに,短時間で正確な診断ができるようになる。

類推学習:既にマスターしているワープロソフトAの操作法を参考にして,新しいワープロソフトBの操作法を見つけ出す。

帰納学習:小さい頃に,「あれは犬ですよ。」,「あれは犬ではないですよ。猫ですよ。」,「あれも犬ですよ。」などと繰り返し両親から教えられ,次第に「犬」という概念を学習する。

発見学習:ナメクジはどんな所に隠れているか,どんな時に活動するか,どんな所に卵を産むか,どんなものを好んで食べるか,などナメクジの生態を日常の観察を通して次第に学習する。

8.2 次の三つのルールを合成して一つのルールにまとめよ.
   r1: parent(X, Y) ∧ male(X) → father(X, Y)
   r2: sibling(X, Y) ∧ male(X) → brother(X, Y)
   r3: father(X, Y) ∧ brother(Z, X) → uncle(Z, Y)

 r4: parent(X, Y)∧male(X)∧sibling(Z, X)∧male(Z) → uncle(Z, Y)

8.3 次の4種類の文字列すべてに対して成立する規則をできるだけ多く書け.
  @ xxyxx, xxzxx, aabaa, ggggygggg
   (例:9個以下のアルファベットの列)

 ・奇数個のアルファベットの列
 ・左右対称のアルファベットの列
 ・最初の2文字が同じアルファベットの列
 ・最後の2文字が同じアルファベットの列
 ・最初の2文字と最後の2文字が同じアルファベットの列
 ・x, y, z, a, b, g からなる文字列
 など。

  A xy, xyz, def, jklmn
    (例:アルファベット順に並べられた列)

 ・5個以下のアルファベットの列
 ・2個以上のアルファベットの列
 ・a, b, c を含まないアルファベットの列
 など。

8.4 次に示す正の例をすべて説明し,どの負の例も説明しないような文字列に関する規則をできるだけ多く書け.
    正の例: 010, 0001000, 00000100000
    負の例: 00100, 0002000, 1111111
   (例: 1 の両側に 0 がそれぞれ奇数個並んだ文字列)

 ・最初に 0 が奇数個並び,その次に 1 がくるような文字列
 ・最後から 0 が奇数個並び,その次に 1 がくるような文字列
 ・1 を 1個含み,0 を 4 個未満あるいは 4 個より多く含む文字列
 ・0 と 1 からなる文字列で 00100 以外の文字列
 など。

第9章

9.1 図9.4の対称性判定問題を解くニューラルネットワークにおいて,次の入力パターンが加えられたときの隠れ層および出力層のユニットの入力および出力の値を計算せよ.
  (a) 010010

 隠れユニット1の入力 = -0.01, 隠れユニット1の出力 = 0.27
 隠れユニット2の入力 = -0.03, 隠れユニット2の出力 = 0.26
 出力ユニットの入力 = -5.00, 出力ユニットの出力 = 0.87

  (b) 110001

 隠れユニット1の入力 = 6.31, 隠れユニット1の出力 = 0.995
 隠れユニット2の入力 = -6.35, 隠れユニット2の出力 = 0.00
 出力ユニットの入力 = -9.39, 出力ユニットの出力 = 0.08

9.2 下図のような重みをもつ3層ネットワークにおいて,入力パターン(1.0, 0.0) を加えた.ユニットのバイアスはすべて0,入出力関数はf(x) = 1 /{1+exp(−x)},ε = 0.3,α = 0.9 として以下の問いに答えよ.

  (a) 隠れ層の入力と出力,および出力層の入力と出力を計算せよ.

 順番に,3, -0.6, 0.95, 0.35, -0.76, 0.319

  (b) この入力パターンに対する教師信号が1.0のとき,誤差逆伝播アルゴリズムによりすべての重みを1回だけ修正せよ.

 w1112 = 3.423, w1212 = -0.6273, w2112 = 2.3, w2212 = 1.2,
 w1123 = 0.2423, w2123 = -2.685

  (c) (b) によって得られた新しい重みを用いて,再度,隠れ層の入力と出力,および出力層の入力と出力を計算せよ.

 3.423, -0.6273, 0.9684, 0.3481, -0.7, 0.3318

9.3 3×3のメッシュによって表される三つの文字 "T","C","L" を3層のBPネットワークに学習させ,互いに識別できるようにしたい.ネットワークの構造を例えばどのようにしたらよいだろうか.そのとき,入力層および出力層のユニット数と各ユニットの意味について述べよ.また,学習に必要な訓練パターンと教師パターンのデータを作成せよ.

<ネットワーク構造>
 入力層: 9 ユニット(3×3 のメッシュに対応),隠れ層: 3 ユニット(経験的),出力層: 3 ユニット(学習させる文字数に対応)
<訓練パターン/教師パターン>
 T: (111010010)/(100), C: (111100111)/(010), L: (100100111)/(001)

9.4 下図の状態にあるホップフィールドネットワークにおいて,ユニット1への入力は−1であるので,その状態を0に変化させることができる.現在のネットワークのエネルギーE,および状態変化後におけるエネルギーE' をそれぞれ計算せよ.

 E = -1, E' = -4

第10章

10.1 Webに公開されている遺伝的アルゴリズムや遺伝的プログラミングのプログラム(Javaアプレットあるいは通常のプログラム)を探し出し,パラメータをいろいろ変化させて比較考察せよ.

以下は,すぐに実行可能なJavaアプレットです。
<遺伝的アルゴリズム>
 ・巡回セールスマン問題を解く
 ・ナップザック問題を解く
 ・多峰性関数の最大値を求める
<遺伝的プログラミング>
 ・トラックをバックで車庫入れする(学習済みのデモ)
 ・曲線を近似するプログラムを自動生成(ソース公開)

第11章

11.1 擬人化音声対話エージェントのツールキット Galatea(ガラテア)が,オープンソース,ライセンスフリーで次のサイトで公開されている.ダウンロードして実際に使ってみよ.
     http://hil.t.u-tokyo.ac.jp/~galatea/index-jp.html

 使ってみてください。

第12章

12.1 Webインテリジェンスコンソーシアムの最近の活動について次のサイトで調べよ.
     http://www.wi-consortium.org/

 @ Web知能に関連する会議やワークショップの組織化
 A Web知能に関連する学術雑誌,本,ニューズレターの発行
 B Web知能に関連するツール,システム,規格の促進
 C Web知能に関連する研究センターと会社の設立と支援

12.2 Webインテリジェンスコンソーシアムの日本研究センターの最近の活動について次のサイトで調べよ.
     http://www.wi-consortium.org/wic_japan/index_j.html

日本センターは,国際的組織であるWebインテリジェンスコンソーシアムと提携するセンターであり,Web/エージェント知能の時代における科学的研究と産業的開発の促進に専念しています。