Seminar
数理情報セミナーなど (日程一覧、発表一覧、詳細)
- 場所:福岡工業大学 C33講義室(C棟3階)、参加自由(最終講義を兼ねています)、連絡先:丸山
- 講演者:郷六一生 福岡工業大学
概要:講義では、本学における私の研究の履歴をたどり、現在までの素粒子論の歴史を自己流に振り返る。
私は大学院での基礎的な学習を終えたのち、π-N散乱現象を説明できる強い相互作用の理論を調べることから研究を始めた。その研究を通じて明らかとなったことは、中間子(π)や核子(N)などのハドロンと呼ばれる強い相互作用をする物質は、より基本的なクオークから構成されており、それらのクオークは非アーベル群に属するベクトルボゾン(グルオン)により媒介される力で強く結合されている、ということであった。しかし、構成要素と力がわかってもそれは摂動論的な計算しかできなくて、S-T Dualityと呼ばれるπ-N散乱振幅のもつ2重性をうまく説明できなかった。この障壁を突破して生まれたのが、ひも理論である。従って、ひも理論によって素粒子間のハドロンの非摂動的な相互作用を取り入れた計算ができなければならないが、この理論は10次元時空で作られているために、先ず我々の住む4次元時空へ持ってくる必要がある。これは、しかしとても困難なことでまだ誰も成功していない。一方で、ひも理論の作り出す物理状態にD-braneと呼ばれる開弦の集まりの存在が発見され、これを考えることによりクオークとグルオンの理論は重力の理論とみることもできるという2重性が発見された。その結果、現在ではハドロンの質量やその他の期待値が簡単な微分方程式(“1次元シュレーデインガー方程式”)を解いて得られるようになった。
- 場所:福岡工業大学 E棟3F カルサイトR1、参加自由、連絡先:知能機械 下川
- 講演者:鴇田昌之 教授(九州大学理学研究院)
ゲルは三次元的に架橋された高分子網目と溶媒からなる希薄な固体である. つまり,「溶質」である高分子網目は高々数%であり,残りの90%以上は「溶媒」である. つまり,熱力学的には希薄溶液(というより準希薄溶液というほうが適切かもしれないが)に対応する濃度であるにもかかわらず,架橋高分子の特性を合わせ持つため,「固体」と認識できる程度の弾性率を有し,したがって「形」を保つことができる. このような特徴を有するため,ゲルには様々な面白い現象が観測される. ゲルが大きく膨潤する過程で右図のような美しいパターンを形成することはよく知られている[1].同様に,ゲルが収縮する過程においてもパターンが形成されることが知られている. しかし収縮過程におけるパターン形成のメカニズムはより複雑なようである[2]. このような,膨潤や収縮の過程でゲルが形成するパターンの形成メカニズム(の本質的な部分)については既に明らかにされているといって良いだろう. これらの論文で議論されているパターンは,しかしながら,ゲルが体積を大きく変化させる過程において出現する過渡的パターンであり,数ヶ月にも亘ってパターンが観測される場合もあるが,ゲルの平衡状態においてはいずれにしろ消失する運命にある. これに対して,ゲルに恒久的なパターンを形成させることができれば,様々な可能性が広がる[3]. ここでは,ゲルの初歩からはじめて,ゲルのパターン形成について簡単な解説をしようと思う.
- 【文献】
[1] T. Tanaka, et al., Nature, 325, 796 (1987). [2] E. S. Matsuo and T. Tanaka, Nature, 358, 482 (1992). [3] T. Narita and M. Tokita, Langmuir, 22, 349 (2006).
- 場所:福岡工業大学本部棟(1F)カルサイトR2, 参加自由, 連絡先:知能機械 下川
- 講演者:小谷野 由紀 氏(千葉大学大学院理学研究科)
自由エネルギーから運動エネルギーを生み出す構造を持ち、 摩擦などによってエネルギーを散逸しながら自発的に動き回る 系は、自己駆動系またはアクティブマターと呼ばれる。水面に 浮かべた樟脳粒はその一例である。樟脳粒は水面に界面活性剤 である樟脳分子を拡散し、表面張力勾配に駆動されて動く。 樟脳分子の濃度場は領域の境界からも影響を受けるため、 樟脳粒の運動は水面の形状に依存する。例えば、擬1次元的な 水面に樟脳粒を浮かべると、水路長に応じて、水路の中心に 静止した状態や水路の中心位置まわりの振動運動が観察される。 実際に樟脳粒の運動に関する数理モデルを少数自由度の力学系 に縮約することで静止状態と振動運動する状態の分岐構造を 調べることができたので報告する。また、講演の最後に樟脳粒 の形状が運動に与える影響や樟脳粒同士の相互作用についても 触れたい。
- 場所:福岡工業大学D棟D31教室
- 参加自由
- 連絡先:知能機械 下川
- 講演者:江端 宏之 氏(九州大学大学院理学研究院)
細胞運動に代表されるように、多くの生物は変形をしながら自 発的に動き回ることが出来る。より単純な系では、液面上のアルコール液滴や反 応拡散系の孤立ドメインなどが変形をしながら運動をすることが報告されている。 生物・無生物に関わらず外からの刺激を必要としない自発的運動をするためには、 非対称な形状など、空間的な対称性の破れが不可欠である。 我々は水よりも重い粘性の高いシリコンオイル上に水滴を乗せ垂直加振すること で、液滴が変形をしながら自発的に運動することを発見した[1]。これは加振に より水滴上に局在した定在波が起こり、液滴表面に波が立つことで流体中を液滴 が「泳いで」移動していることが分かった。さらに、加振周波数を変えていくこ とで、液滴の形状の対称性が次々と破れてゆき、自転運動・公転運動・直線運動 ・ジグザグ運動と運動のモードがカスケード的に分岐していくことが分かった。 セミナーでは液滴上のファラデー波の自発的対称性の破れと液滴の運動モードの 関係について議論したい。
[1] H. Ebata & M. Sano, Swimming droplets driven by a surface wave. Sci. Rep. 5, 8546; DOI:10.1038/srep08546 (2015).
(2015-09-30 09:00 情報更新)
- 場所:D32教室 (福岡工業大学D棟)
- 参加自由
- 連絡先:知能機械 下川
- 発表者:北畑 裕之 氏(千葉大学大学院理学研究科)
非平衡条件下での自発運動は、生物の運動のメカニズムとの関連も期待され 近年興味を持たれてきている。そのような自発運動を行う系で非常に簡単な ものとして、水面に浮かべた樟脳粒があげられる。樟脳粒を水面に浮かべると、 粒子の形状が円形であっても、わずかな揺らぎにより濃度プロファイルの 対称性が破れ、一方向への運動が見られる。物質の拡散に関する時間発展 方程式(反応拡散方程式)と粒子の運動方程式をもとに考察すると、この運動 は、粒子の静止解からピッチフォーク分岐により等速運動解が生成することに 対応する。 粒子の形状の対称性が破れている場合、その分岐構造がどのように変化する のかは興味深い。そこで、もっとも単純な対称性の破れとして、円から楕円に 変形した場合を考えた。粒の形状を円形から摂動的に変化させた場合について 安定性解析を行い、楕円形状に変形させた場合には、必ず短軸方向に運動する ことを明らかにした。また、実験においてもこの理論を支持する結果が得ら れた。 本発表では、自発運動についての一般的な概要を話した後、樟脳粒の運動に 関して、そして運動に対する形状の影響について詳しく述べる予定である。
Reference: [1] H. Kitahata, K. Iida, M. Nagayama, Phys. Rev. E., 87, 010901 (2013). [2] K. Iida, H. Kitahata, and M. Nagayama, Physica D, 272, 39 (2014).
- 場所:C33教室
- 参加自由
- 連絡先:知能機械 下川
自然界には軽くて丈夫な物質が数多く存在する。 例として、木や竹、貝殻や歯といったものが挙げられる。 これらの物質に共通するのは、硬い物質と柔らかい物質を巧く組み合わせた内部 構造を持つことである。 そして、その構造は進化の過程で長い年月を経て洗練され、最適化された形であ ると考えられる。 本研究では、丈夫な物質として古くから知られている「真珠層」と「クモの巣」 について、破壊力学の視点から研究を行った。
破壊力学では、弾性体中に亀裂がある時に外力が働くと亀裂先端に集中して大き な応力が働くことが知られており、この現象を応力集中と呼んでいる。 亀裂先端の応力の最大値が物質固有の限界値を超えた時に破壊が始まると考えら れるため、破壊を回避するためには応力集中をいかに小さく抑えられるかが重要 になってくる。
真珠層は硬い層と柔らかい層が幾重にも重なった積層構造を持つ[1]。 線状亀裂が存在する層状構造体において、亀裂先端での応力と変位について解析 した研究[ 2][3]をもとに、シンプルなネットワークモデルを用いて数値計算を 行った。 その結果、ひずみによる変形の際に、亀裂先端で柔らかい層が大きく変形し、そ の分、硬い層の変形が小さくなることで応力集中が抑えられているとがわかった。 このように、強度において一見、逆の働きを示すと考えられる柔らかい層が、応 力集中の抑制に大きな役割を果たしていることが明らかになった[ 4]。
クモの巣は古くから研究がなされているが、そのほとんどがクモの糸に関する研 究であり、巣の構造に関する研究[5,6]は非常に少ない。 そこで、クモの巣の構造を幾何学的に簡略化して数値計算を行ったところ、巣を 構成する縦糸と横糸の弾性率の比が巣に働く応力集中の度合いを決定しているこ とが明らかとなった[7]。
[1] K.S. Katti, D.R. Katti, Mater. Sci. Eng. C (2006) 26 1317 [2] K. Okumura and P.G.de Gennes, Eur. Phys. J. E (2001) 4 121 [3] Y. Hamamoto and K. Okumura, Phys. Rev. E (2008) 78 026118 [4] Y. Aoyanagi and K. Okumura, Phys. Rev. E (2009) 79 066108 [5]E. Wirth, F.G. Barth, J. Comp. Physiol. A (1992) 171 359--371 [6]L.H. Lin, D.T. Edmonds, F. Vollrath, Nature (1995) 373, 146 [7] Y. Aoyanagi and K. Okumura, Phys. Rev. Lett. 79, (2010) 104 038102
- 場所:C33教室
- 連絡先:知能機械 下川
講演者:稲垣紫緒 九州大学理学部物理
水平に置いた円筒容器に大きさや形の異なる2種類の粒子を封 入して回転させると、粒子の分離現象が観察される。従来円筒に半分程度に粒子 を詰めた場合は、水平方向に分離したバンドが徐々に結合してドメインを広げる 緩和現象がよく知られている [1]。 我々のこれまでの研究で、円筒に充分粒子を詰め、なだれ面が殆どない状態でも 粒子が自発的に分離し、バンドの生成・合体のダイナミクスが観察されている [ 2]。 今回は、細長い二重円筒容器に二種類の粒子を高充填率で封入し、回転させて起 こる相分離現象で見られる時空間ダイナミクスについて報告する [3]。
[1] B. Levitan, Phys. Rev. E 58, 2061 (1998). [2] S. Inagaki and K. Yoshikawa, Phys. Rev. Lett. 105, 118001 (2010). [3] S. Inagaki, H. Ebata, and K. Yoshikawa, Phys. Rev.E 91, 010201(R) (2015).
- 場所:福岡工業大学 本部棟(1F)カルサイトR2
- 参加:自由
- 連絡先:情報システム工学科 丸山勲
- 講演者: 中村勝弘 (ウズベキスタン国立大学)
概要: 既知の量子ダイナミクスを早送りして目標とする状態 を任意の短時間で実現する方法を考える.これは,適当な 補足的ポテンシャルあるいは外場をかけることにより可能 である.重要な例として、波動関数の断熱的な輸送、分解 、圧縮過程の早送りを示す.この考えは,BEC基底状態の 光学格子への高速ローディングにも適用できる.最近,私 たちは,ゲージ場を導入することにより,早送りの途上で 、振幅だけで無く、位相も厳密に早送りできる方法を考え た.これによると,トンネル現象及びトンネル電流の早送 りも可能となる。
「8月1日土曜談話会」 場所:福岡工業大学 日時:8月1日土曜日午前10:30~12:00頃(注意:誤った日時を表記しておりました。お詫びして訂正いたします) 会場: 本部棟(1F)カルサイトR2 講演者: 中村勝弘 (ウズベキスタン国立大学) テーマ: "ピストン運動とナノスケール熱機関". 概要: 運動するピストンを持つナノスケール・シリンダー内量子気体の非平衡状態方程式を求める.ここでは、熱的に孤立した系に限定し、フェルミ速度を基準にして超低速、超高速の両極限のピストンを考察する(ただし、非相対論の範囲内).圧力演算子の期待値の二つの表現を導出することで,ベルヌーイ則(ボイル・シャルルの法則の一般化)やポアソン断熱方程式へのピストン運動による非平衡効果を見積もることができる. 今回の仕事の副産物として,高速ピストンに誘起される量子気体の遷移確率スペクトルの多重ピーク構造の漸近的挙動を得た.この多重構造は高速ピストン系での量子揺らぎ定理の妥当性を保証する.
研究会「最近の AdS/CFT 研究の話題から-2」
福岡工業大学 C棟3階 3CA大学院講義室
連絡先:情報工学科 郷六先生
東京大学 13:30-14:30
In this talk I will give an overview over two recent areas in which holographic models have been applied to otherwise hard to understand problems in condensed matter physics: the fractional quantum Hall effect and Non-BCS (mostly high temperature) superconductivity. I will introduce into both problems, and then give an overview over the different holographic approaches. I end with an outlook for future work.
東北大学 14:45-15:30
Recently, various applications of AdS/CFT correspondence in condensed matter systems have been proposed, such as holographic superconductors . Some critical behaviors of superconductors can be successfully reproduced from the symmetry breaking of the Abelian Higgs model with gravity. We promote this idea to SU(2) non-Abelian Higgs model with gravity, which describes the phase transition of magnetizations. Using the techniques of the holographic duality, we can compute such quantities as magnetization, susceptibility. Furthermore, this formalism leads to an effective theory of low energy magnetization dynamics.
場所:福岡工業大学B棟3階 B36
所属:兵庫県立大学 大学院 物質理学研究科 物質科学専攻
昨年9月に開催した第1回数理情報セミナー「エントロピーの学際的 広がり~数学・物理・情報~」に引き続き、第2回の今回も物理学と 数学の結節点に位置する話題を取り上げます。 より詳しくは、物理学(量子力学)で重要なシュレーディンガー方程式と、 数学(関数解析学)の主要関心事の一つである作用素とそのスペクトルの 双方に関連する話題として、Wigner-von Neumann 型のポテンシャルを 持つシュレーディンガー作用素の正固有値について、講演して頂きます。 物理学的観点と数学的観点のどちらからでも、関心をお持ちの方の お越しをお待ちしております。なお、本セミナーは本学情報科学研究所の 平成25・26年度の研究費により開催します。 |
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