紫外パルスレーザーによる微細工具の加工法に関する研究

山中 康徳      中本 陽介

 

1.    緒言

 紫外パルスレーザーを用いた微細加工では、レーザー光を照射した部分のみをはじき飛ばして加工を行い、5軸加工台により通常の旋盤では不可能な断面形状の物も加工することができる。昨年度までの工業用ダイヤモンドでの微細加工法に引き続き、実用的で形状が簡単な工業用ダイヤモンドを用いた加工用ドリルの加工法についての研究を研究目標とした。

 

2.    実験装置

 実験装置を図1に示す。パソコンに取り付けたTTLボードからの信号により、レーザー発生装置のON/OFF制御や、5軸加工台のコントロールを実行する。プログラム言語には、N88BASICを使用した。加工レーザーには、YAGレーザーを使用し、波長の変換には高調波発生装置を用いた。5軸加工台とは、3軸はステージのX軸、Y軸、Z軸の直線移動をし、残りの2軸はθ軸とω軸の回転をさせることができる。

 

 

 

 

 

 

 


図1.実験装置

 

3.    実験結果及び考察

3.1     ポリイミド樹脂の円柱形状加工

 適度な大きさのポリイミド樹脂の破片を接着し、その加工物を垂直方向に回転させて、照射エネルギー62.4μJ、波長266nmの4倍波で加工を行った。 その際、モーターの回転軸(ω軸)の中心と加工物の中心にズレが生じる。そのため、加工物の中心の検索を行った。観測は、レーザー旋盤装置の中にCCDカメラを設置し、モニターに映しだした。その手順として、ω軸のモーターを回転させ、モニターに映る加工物の上下の最大変位点を探し、その点から90度回転させた点を始点とする。

 さらに、上下の最大変位点を二分の一にした距離が回転軸の中心を補正するときの値とする。その値をプログラムに入力し、常に加工物の中心が回転軸となるように前後左右の補正をし、加工を行った。その結果を図2に示す。

実験した結果、加工物の中心を回転軸とすることにより、補正前に比べ大幅に時間を短縮することができた。しかし、設定した値よりも約20μm小さくなった。 その原因としては、レーザーの集光径が約20μmであることや初めにレーザー光を当てる場所が約10μm内側に入っていたためと考えられる。その二点を考慮し加工を行えば精度の高い円柱形状加工を行うことができる。

 

 

 

 

 

図2.レーザー4倍波によるポリイミド樹脂の円柱形状加工

3.3 ドリル形状の試作

 加工物にポリイミド樹脂を使用し、加工用ドリルを作製する。理由として、工業用ダイヤモンドに比べると加工時間が短くなり、形状が完成できれば材質に対して、レーザー照射数や送りを変えることにより同様の形状が加工できると考えられるからである。3.1の実験と同様に、円柱形状加工をし、θ軸を回転させることにより切断することで、刃先を形状する。θ軸を回転させ、加工を行うことで刃先がより鋭利になるからである。ドリルの回転軸(ω軸)を回転させるときに、ドリル円柱部がズレを生じさせないために加工材は回転軸の中心に取り付けなければならない。加工する際、θ軸を使用することになるが、その軸は修正をしておかなければならない。具の加工は4倍波で行うことにした。θ軸はそのままではモニター上に映らないので、その軸を見つけ出すために球状のターゲット(スチールボール)を使用する。球を使用する理由はどの角度から見ても形状は変わらないからである。修正法としては、円柱状ポリイミド樹脂に球状ターゲットを取り付け、θ軸を回転させながら軸、軸を調整して軸合わせを行う。修正の確認としてθ軸を180度回転させ、モニター上に映る球が動かなくなればよい。ミラーによりレーザー光軸は調節できるので、球状ターゲットの中心にあわせることでθ軸とレーザー光軸が直交したと考える。この点を中心点と置く(図3参照)。

 

 

 

 

 

 

         図3.θ軸とレーザー光軸の軸合わせ

 

加工手順は、円柱形状加工を行い、連続して刃先形状の加工を行う。初めに、約600μmのポリイミド樹脂に対し垂直にレーザーを照射し、直径約100μm、高さ、約250μmの円柱形状を作製する。その後、加工された物を中心点に移動し、θ軸を回転させ切断加工により刃先が精製される。直径約50μm、高さ約100μmの加工用ドリルを精製するプログラムを作成し実行した。その時の照射エネルギーは45.9μJで4倍波を使用した。結果は図4,図5に示す。

実験した結果、観測値では刃先部分の直径約40μm、高さ約90μmと設定値よりも約10μm程小さくなっていた。これは3.1の実験のときよりも約10μm程誤差を減らすことができ、精度のよい加工をすることができた。

                                                  

             図4.加工用ドリルの加工(側面図)           図5.加工用ドリルの加工(刃先の拡大図)

 

5.結言

 f=50の加工用凸レンズを使用することにより、昨年までにはできなかった直径約40μmの精度の高い円柱形状を加工できることが解かった。

今後の課題としては、ポリイミド樹脂で加工用ドリルに加工することができたので、工業用ダイヤモンドでも同様な加工を行ってみる。その後、ダイヤモンドドリルの刃先の強度を調べ、ダイヤモンドドリルとして使用できるか検討してみる。