レ−ザ−加工による微小立体形状の創生法と組立法の研究

 

9831027 川畑 大志 9831036 小早川 秀一 9831062 西園 崇広

指導教授 河村 良行 教授

指導院生 吉本 隆司  吉井 啓太

 

 


1  研究目的

 

 ある程度複雑な立体形状をレーザー加工で微小かつ精密に加工することを第一の目的として、寸法が1mmのマイクロ風車を本研究により製作する。しかし、以前製作されたマイクロ風車は高速回転の途中で、軸受から外れてしまう事が問題であった。この問題を解決するべく、軸受部の改良を考えた。それは、軸受と蓋の2部品から軸受部を構成し、その2部品を機械的に締結するという事である。したがって、我々は第二にマイクロ部品の機械的締結を目標とし、研究を進めてきた。

 

2  研究内容

 

2−1  5軸マイクロレーザー加工装置

 

 Fig.1に加工装置全体図を示す。

加工する材料は、ポリイミド樹脂を使用し、加工物の回転には、ステッピングモーターを使用した。(Fig.2参照)

 レーザー発生装置や5軸加工台のコントロールはTTLボードからの信号でコントロールされており、レーザー照射エネルギーのコントロールは主に、レーザー発生装置で自由に変化できるようになっている。レーザー集光径はピンホールで変化させる事が可能である。

加工プログラム言語はN88-BASICを使用している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Fig.1 Experimental equipment

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Fig.2 Five-axis micro machining system

2−2  5軸マイクロレーザー加工装置による直線加工プログラムと円弧加工プログラムの作成

 

 マイクロ風車を製作する上で、円弧加工と直線加工プログラムが必要である。加工の流れは、5軸マイクロレーザー加工装置に使用している5軸加工台の内]軸、軸の動きの組み合わせにより、加工物を動かし、レーザー照射点を円弧形状や直線形状に導き望みの形状に加工を行なう。しかし、]軸、軸は最小可動距離が1μmである為、1μm以下の値の処理を行なわなければ、それが誤差となり思い通りの加工が行なえない。以上の様な問題の解決と合わせて、円弧と直線の加工プログラムを作成した。以下にそれぞれのプログラムの機能を記す。

 

1)直線加工プログラムの機能

 

・ 三角関数を用いて計算した照射点間距離を四捨五入し、真の値との誤差を最小限に抑えた。

・ 加工方向のレーザー照射間(送り)を一定にすることにより、加工面をできるだけ一様にした。

・ 加工形状設計、加工を座標系で考えることにより加工工程を簡易化した。

 

2)円弧加工プログラムの機能

 

・ 連続円弧加工では、加工の切れ込みが無く正確に加工される。

・ 三角関数を用いて導かれた照射点の座標を四捨五入することにより、真の座標との誤差を最小限に抑えた。

・ 2次元座標系上で加工形状を考えれば、比較的複雑な形状の加工も実現できる。

 また、完成した円弧と直線の加工プログラムは座標系を元に出来ているので、N88-BASICの機能の配列により一つのプログラムにまとめた。それに合わせて、加工データ−入力の省略等も行なった。完成したプログラムにより、今まで以上に加工工程の簡易化へとつながる結果となった。

 

2−3−1  マイクロ羽根車の製作実験

 

羽根車の部分は、回転軸の円柱を加工した後、羽根部の円弧加工を行い製作する。円柱加工は加工物であるポリイミド樹脂をω軸に取り付け、レーザーを照射しながらω軸を回転させて行なう。しかし取り付けた時点で、ステッピングモーターの回転軸中心とポリイミド樹脂の中心が一致せず、加工物は偏心を生じて回転する。その為、加工の前にω軸の中心をあらかじめ調べておき、その中心を基準に半径を定めて円柱加工を行い、羽根車の回転軸を製作した。

 羽根部の円弧加工は、円柱加工した後にθ軸ステージを90°回転させ、円弧加工プログラムを実行して製作する。θ軸ステージを回転させた際に、円柱加工時のレーザー集光点が羽根の幅の中央かつ回転軸円柱の中心軸上、すなわち円弧加工の原点に一致するように、円柱加工の終了時にθ軸を調整した。そして円弧加工により羽根部を製作し、羽根車を完成させた。加工物の観察にはSEM(走査型電子顕微鏡)を使用した。Fig.3に製作したマイクロ羽根車を示す。羽根車の直径は約1000μmである。

2−3−2  実験結果及び考察

 

結果として、直径約1000μmの羽根車を製作する事が出来た。円柱の直径も約280μmと、精度の高い回転軸が製作出来た。また、全体の加工面は良好であった。しかし、羽根部の製作では、レーザー集光径が大きく、図面よりも羽根の厚みが少ない。また、羽根車側面図から分かるように羽根幅の直角度が全く出ていなかった。この原因は、円弧加工時のレーザー集光点が羽根幅の中央になく、実際にはレーザー入射方向に対してそれよりも奥側に存在したからであると考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 


Fig.3 SEM photographs of micro bladed wheel  

 

2−4−1  マイクロ風車軸受部製作実験

 

ポリイミド樹脂に高さ1000μ、幅600μm、厚さ200μmの風車軸受部を製作した。以前に作られた軸受部との違いとして、風車が高回転した際に軸受部より風車が飛び出さないように、軸受部と蓋部の部品で構成し、軸受部に50μmの谷、蓋部に50μmの山を加工した。

 制作方法は、まず共にレーザー照射エネルギー.28mJでピンホールを使わずに1000μm以上の円柱を2本製作し、その後照射エネルギー0.15Jで600μmピンホールを使用してそれぞれの形に切り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


side view         front view

Fig.4 SEM photographs of micro bearing

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side view          front view

Fig.5 SEM photographs of micro cap

 

 

 

2−4−2  実験結果及び考察

 

 結果は、軸受部は表面もきれいに仕上がり形状も細部にわたって予定に近い形に仕上がった。ただ軸受間の距離が予定より少し狭くなった。原因として長時間の加工により加工途中に照射エネルギーが落ちた為と思われる。蓋部は。レーザー光の照射点距離が少しずれていた為に表面がきれいに仕上がらず、形も少しいびつな形になった。しかし締結部先端は潰れる事なく予定の形に仕上がった

 

2−5−1  マイクロ風車組み立て実験

 

 製作した羽根車と軸受の組み立て実験を行なった。組み立てには、3軸のステージとω軸を組み合わせた装置と5軸加工台を使用した。まず、軸受部に羽根車を保持させて5軸加工台にセットする。それと対面して蓋部を4軸の組み立て装置にセットさせ、モニターにより拡大された映像で観察しながら、2つの部品の位置調整をし、組み立てを行なう。組み立て後の蓋を保持部との切断にはレーザー光を使用した。

 

2−5−2  実験結果及び考察

 

 羽根車を軸受部に保持させた際に、羽根部の厚みの寸法が軸受の寸法よりも大きかった為に、軸受が羽根部外側を挟んだ形で組み込まれた。また、軸受部と蓋部においても、締結部寸法に微妙なズレがあった為に、締結にいたらなかった。この寸法ミスの原因は、各部品の製作の際に、集光点のズレ、もしくは集光径の把握ミスが考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


   side view              front view

Fig.6 Components assembly of micro pinwheel

 

2−6  結言

 

 組み立てられる部品というものは、設計された寸法とおりに製作しないと意味が無い。レーザー加工による精密な微小立体の創生を可能にする為には、レーザー集光径を小さくし、サイズを把握する事と、焦点を正確に合わせる事が求められる。また、加工物を拡大して映し出しているモニター精度の向上と、モニター上での寸法確認が出来れば設計図どおりの部品を作る事が可能になると思われる。

 

参考文献

 

(1)松田 一弘,山崎 恵:平成11年度卒業論文「レ−ザ−加工による微小立体の形状の創成法に関する研究」

(2)河西 朝雄:「最新はじめてのBASICベーシックって簡単ネ・・・とエルザも言った」  技術評論社