ロックインアンプを用いた片持ち梁の微小振動計測

 

9831301 小野山 浩   9832082 森園 雅文   9832052  千原 陽輔

指導院生  趙 世済        指導教員  河村 良行 教授


 

1        緒言

 

本研究の目的はレーザー光とマイケルソン干渉計を用いて、片持ち梁の固有振動数(Q値)を測定し真空度を計ることである。昨年度の課題であった、シリコン片持ち梁のQ値の改善、また片持ち梁を除振台の上に置き、片持ち梁にかかる外部からの振動を取り除くこと。さらに真空度測定装置のノイズをカットするために、ディジタルロックインアンプで最小限にして計測する。これら三つのことを重点的に研究し、片持ち梁の熱振動を計ることである。

 

2        実験装置及び内容

 

2-1シリコン片持ち梁の固有振動Q値の改善

片持ち梁の内部減衰効果によって現在の片持ち梁のQ値は最大1500である。それはQ値の1500までは真空度が計測できるが、それ以上の真空度では計測できないからである。真空度の計測範囲を広げるためには片持ち梁の低いQ値を上げる必要がある。片持ち梁の低いQ値の原因としては表面にレーザー反射のためにコーティングされているアルミによる振動の減衰効果が考えられる。この減衰効果をなくし反射面のためにアルミを上部100μmだけをコーティングする方法を選択した。

以下にアルミ蒸着過程をFig1に示す。

@片持ち梁の表面のアルミ部分全部を塩酸で腐食させる。A反射のために必要な面積以外をカプトン膜で覆う.

BAの後、アルミを蒸着させた。

 

Fig.1  Aluminum evaporation process of the silicon cantilever beam.   

 

シリコン片持ち梁は長さ240μmで、幅が30μm、厚みが3.2μmである。同じ方法でガラス板をコーティングして傷を入れ、傷の厚さを表面粗さ計で測定した。断面曲線図より読み取ると約0.1ミクロンであった。よってシリコン片持ち梁にアルミ蒸着した厚みは約0.1ミクロンであると判断した。コーティングしたシリコン片持ち梁のSEM写真をFig.2に示す。

 

 

Fig.2 Silicon cantilever beam after the aluminum evaporation.

 

2-2 ロックインアンプのデータ表示

測定精度を上げるために、計測に使用するFFTアナライザーに比べ、はるかに微小な信号も測定できるロックインアンプを使って計測する事にした。FFTが信号の全周波数帯域でスペクトルを検出するとしたら、ロックインアンプとは、雑音に埋もれている普通の電圧計では計れない信号を、ロックインアンプ内部に組み込まれているフィルタを通してノイズを除去し、微小な信号を測定するのにより高い精度の出力を得るものである。ただし問題点もあり、指定した周波数帯域でのスペクトルを計測するためにはパソコンでロックインアンプを高速で制御する必要がある。ロックインアンプにはFig.3でわかるようにデータ出力画面が3つあるだけで画像表示画面がない。画像表示のため、データ出力をWindows(PC)上のVisual Basic(VB)で出力できるようにプログラムを作成した。ロックインアンプとPCとの接続には、RS-232インターフェースを使用する。このVBとロックインアンプとの間は、コミュニケーションコントロール(MSComm)を用いて通信をする。

Fig.3  Appearance of the lock-in amplifier.

 

出力画面では縦軸に振幅、横軸に周波数をとる。測定する前に周波数帯域、振幅の範囲、AVERAGE(各データの点の平均)、STEP(周波数帯域中、ここで指定した周波数だけ進む)をPC上で決定し測定を始める。実行すると、指定した周波数をパソコン上からロックインアンプに送りロックインアンプの参照周波数をSTEP分ずつ変えていきロックインアンプに出たデータをパソコンに取り込んでい

る。それを繰り返して平均を出し、VB上の出力画面にスペクトルを表示する。出力されたスペクトルが小さくてよみとれない場合は縦軸の値を変更しCLEARボタンを押した後に更新ボタンを押すと振幅の値がよみとれるようになるようにした。スペクトルの各点の数は、横軸の周波数大域の数をSTEPの数で割った値で決まる。VB上では、高速に通信し制御するため、ループや平均をとるなどして時間を遅らせてやり安定した計測値をとれるようにした。

 

Fig.4  Execution screen on Visual Basic.

 

2-3    除振台の設計

  除振台は真空計の中で、磁石の上にバネで吊るすことによって動作させている。 除振台の上に片持ち梁だけを置き実験したが、バネでつっているので回転方向に揺れて干渉じまを計測することができなかった。検討した結果、除振台の上に干渉計を載せて実験することにした。回転方向の揺れが生じても、干渉計が一体化されているので揺れを無視できると考えた。Fig.5はそのために設計した除振台上の干渉計である。

 

Fig.5   Michelson interferometer on vibration isolator.       

 

2-4    ロックインアンプの性能実験

 ロックインアンプの性能を調べるためダイオードの光をアテネーターでカットし、その光を光検出器で受けそれをロックインアンプで計測した。計測結果はFig.6に示す。

グラフからわかるように0.01mVで収束したことから測定限界は0.01mVであることがわかる。

 

 

 
 
Fig.6  Marginal characteristic of lock-in amp.

 

2-5          実験方法

設計した除振台を真空計の中に入れた後に真空計の中を真空にしてレーザー光を、ピエゾ素子と片持ち梁に照射しミラーを使い真空計の外に出す。その反射光を光検出器で受け、ロックインアンプで計測したデータをPC上のVBプログラムで解析する。その解析結果より、Q値を求め真空度を計測する。

 

3.     結果 

 

今回の研究では、ノイズや片持ち梁の低いQ値と除振の問題を改善して実験し、熱振動を測定する除振台に干渉計をのせることにした。ロックインアンプを制御するVBプログラムはロックインアンプで測定したデータを取り込みPC上で解析できるようになり計測できるようになった。

  

     Fig.7   Experimental equipment appearance

 

4.     今後の課題

 

1.) 除振台のばねを吊る本数を増やし回転方向の除振を行う。

2.) 任意の値を正確に読み取れるようなプログラムを作ることと、 Q値測定をVB上でおこなえるようにする。

3.) Fig.5に示す除振台の上の干渉計はばねで釣ってから微調整するため調整することが困難である。よってバネでつった時に安定する方法を考える必要がある。

 

5参考文献

1.) エヌエフ回路ブロック:ディジタル ロックインアンプ操作マニュアル

2.)     Visual Basicサンプルプログラム:ラリースミス・

吉田 元美(訳)

3.)     InternetVisual Basicを使った通信プログラム開発

  www.rakuten.visualbasic1.ne.jp