電波工学，通信工学．

移動体通信における遮蔽壁をもつ構築物内の電波伝搬の解析

　　携帯電話等の移動体通信は，今日の情報化社会に著しく貢献し，その重要性は益々高まりつつある．しかしながら，電波伝搬の問題で地下街などの地下構築物内及び大型ビル内等では，その使用が制限されており，特に遮蔽壁により分岐折れ曲がりがあれば通信がかなり困難である，地下街等の各種の伝搬路をコンクリートで代表される損失誘電体で囲まれた中空導波路と見なすことによって，その伝搬特性をＦＶＴＤ（Finite Volume Time Domain)法やレイ・トレース法を適用して理論的に明らかにすると共に，コンクリートで作られた模型を用いたマイクロ波によるモデル実験によって，その理論解析結果の実用的な応用範囲を拡張しようとするものである．特に，現実問題に即した，分岐等をもつ構築物内の電磁波伝搬問題の解決に主眼を置き，複雑化した電磁環境化においても信頼性の高い無線通信システムが確保できるための基礎資料を与えることを目的とする．本研究では，地下街及びビルディング内等の複雑な遮蔽壁による分岐折れ曲がりをもつ構築物を取り上げ，実用的な観点から解析と実験を進めようとするものであり，従来の研究からの大きな前進が期待できる．

  上記研究テーマの現在までの

　　　　　　　成果/データなど

地下街等の基本的な分岐をもつ構築物内の電波伝搬について明らかにした．

　例えば，十字形分岐，ステップ形，Ｔ字形分岐，Ｌ形曲がり及びクランク形曲がり等の２次元構造，更に，それらが複数個組み合わされた場合のトンネル内の電波伝搬について理論解析と実験を行って，両者がよく一致することを立証している．ＦＶＴＤ法による解析では時間的に電波が伝搬する様子を３次元グラフで描いている．分岐をもつ方形構造（３次元問題）については，２次元構造のＨ波とＥ波を重ね合わせた近似解と実験値が一致することを明らかにしている.

今後の研究テーマ（予定）

複雑な遮蔽壁をもつ構築物内の電波伝搬の解析．

戸建て家屋内の電波伝搬の解析．

　上記の結果を基に，都市部の地下街等の複雑な地下構築物内における移動体通信の実用的な応用範囲と対策について検討する．また，実際の建物構造と関わりの 深い，伝搬方向に遮蔽壁により分岐・折れ曲がりをもつ構築物内の電波伝搬について精密な理論解析及び実験の両面から明らかにする．

共同研究・受託研究・技術契約の可否

受託研究．

トンネル内電磁界分布推定のためのレイ・トレース法について．

　　電子情報通信学会論文誌，J82-B,5, (1999)

FVTD法による任意の折れ曲がり角をもつ２次元トンネル内の電波伝搬の解析．

    電子情報通信学会論文誌，J81-B-II,8, (1998)

基本的な分岐をもつ方形トンネル内の電波伝搬特性．

　　電子情報通信学会論文誌, J79-B-II,7,　(1996)

FVTD法による基本的な分岐をもつ２次元トンネル内電波伝搬の解析．

　　電子情報通信学会論文誌，J79-C-I, 7, (1996)

FVTD Analyses of Electromagnetic Wave Propagation in Tunnels Proceedings of the 1995

　 Asia Pacific Microwave Conference (1995)

地下街等をモデルとした電波伝搬の近似．

　　電子情報通信学会技術研究報告, 93-68, EMCJ92-10 (1993)

地下街等の基本的な分岐をもつ方形トンネル内の電波伝搬．

   テレビジョン学会技術報告，17-62, BFO93-50, ROFT93-78 (1993)

インピーダンス壁をもつ方形トンネル内電磁波の励振．

　 電子情報通信学会論文誌，J73-B-II,8 (1990)

複数の変形十字形分岐をもつ２次元インピーダンストンネル内の電波伝搬．

　 電子情報通信学会論文誌，J72-B-II, 8 (1989)

上記研究テーマに関する情報提供・

　　　　　　コンサルテーション事項

地下構築物内における移動体通信の実用的な電波伝搬対策

上記研究テーマに関する公的補助金

　　　　　　採択・交付実績

S.６３年度(1988)科学研究費補助金 一般研究（C）,代表者

H.  ５年度(1993)科学研究費補助金 一般研究（C）,代表者

H.  ８年度(1996)科学研究費補助金 基盤研究（C）,代表者

H.10〜12年度(1998〜2000)科学研究費補助金 基盤研究（C）,代表者

H.14〜15年度(2002〜2003)科学研究費補助金 基盤研究（C）,代表者

電波無響室