現在の研究について

 

斬新なエネルギーの散逸原理を用いたコロイダルダンパーの開発と応用に関する研究

 

福岡工業大学 工学部 知能機械工学科

工学博士 数仲 馬恋典 教授

 

20世紀に提案された「トライボロジー」とは摩擦・摩耗・潤滑に関する科学と技術であり、人類の科学技術の進歩(例えば、ロボット・知能機械、自動変速機、アンチロックブレーキシステム、新幹線、ジャイロスコープ、ハードディスク装置、宇宙望遠鏡、

人工衛星、宇宙ステーション等)に重要な影響がありました。

21世紀では人類が忘れてしまった地球の環境に優しい(ナノ)テクノロジー作りが大切になります。省エネルギー、省資源、代替エネルギー資源、環境を汚さないグリーンなエネルギーで走らなければなりません。そこで、将来の自動車(ソーラーカー、電気自動車等)を考えると、サスペンション部のダンパーも改善しなければなりません。

 

概要

機械工学の分野にナノテクノロジーを適用したコロイダルダンパーを行っています。コロイダルダンパーは通常の油圧ダンパーの代替となるものです。コロイダルダンパーは、油圧ダンパーのオイルの代わりに疎水化多孔質シリカゲルと水からなるコロイド溶液を使用した、高性能で環境に優しい液圧ダンパーです。コロイダルダンパーと油圧ダンパーは両者共に、作動流体がオリフィスと呼ばれる穴を通過するときに力学的エネルギーを散逸します。この両者ではオリフィスの径が異なります。油圧ダンパーのオリフィスの径はミリメーターであるのに対し、コロイダルダンパーのオリフィスの径はナノメーターです。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


油圧ダンパー (粘性散逸)              コロイダルダンパー (表面散逸)

 

エネルギー散逸の斬新な原理とは?

細孔内へ繰り返し水の吸着・脱着(加圧・減圧)することにより振動のエネルギーを散逸できます。油圧ダンパーの場合、油の粘性(流体摩擦)がエネルギーの消散を生むのに対し、コロイダルダンパーの場合は、表面張力(表面エネルギーの変動)がエネルギーの散逸を発生します。ナノメーターの細孔()で効果的に衝撃や振動のエネルギーを吸収できるので、コロイダルダンパーの効率は油圧ダンパーの効率より23倍高いこと、コロイダルダンパーはピストンの速度に依存せずエネルギーを散逸できること、また周波数範囲は油圧ダンパーより広いことが明らかとなりました。コロイダルダンパーは環境に優しくて、油圧ダンパーにない優れた特徴を持っているといえます。

 

産業技術化の背景と実用可能な分野

車・飛行機・バイク・自転車等乗り物のダンパー、耐震ダンパー等

 

キーワード

コロイド、(ナノ)ダンピング、ナノテクノロジー、シリカゲル、水、表面張力、接触角ヒステリシス、スリップ、車・飛行機・バイク・自転車等乗り物のダンパー、耐震ダンパー

 

研究分野

ナノ・マイクロトライボロジー、コロイド及び界面科学、機械設計