本稿ではこのような運動を剛体の回転運動のコンピュータシミュレーションで再
現してみる.ペンチに固定された座標系a,b,c軸を導入しよう.ペンチの中心軸をc軸とする.
ペンチの面内に,重心を通り中心軸に直交する軸を考え,これをb軸とする.こ
れらに直交するもうひとつの軸をa軸とする.中心軸cの周りを回転しながら上下
反転するの仕組みは,a軸,b軸,c軸まわりの慣性モーメントを
と
するとき
の関係になっていると,回転は不安定になることが知ら
れている.
実際,回転軸の方向と回転の周期を与えると回転は決まり,大きな軌道を描いてペンチは反転し
始める.
構成としては,第1章では,はじめに,剛体の回転運動の文献を解説する. 次に,回転運動をシミュレートするプログラミング言語の選定について述べる. 第2章ではプログラミングにおける問題点とその対策について述べる.無重力状 態での剛体の回転を記述するVectorクラス,Matrix クラスの導入,ベクトル微 分方程式に対するRunge-Kutta 法,数値シミュレーション結果の可視化につい て述べる.
この記事は2000年度に行なわれた緒方隆一,古賀俊崇君の卒業研究に一部手を加 えて再構成したものである.しかし,両君の卒業研究を可能な限り尊重し,修正 は最小限にとどめた.