
大学院工学研究科生命環境化学専攻2年(修士)
(2023年7月取材時)
植物の新規計測法の開発
呉研究室は分析化学、特に「新しい分析法の開発」の研究に力を注いでいます。たとえば、「植物表面でO2やCO2等の生理活性物質の出入りを、1本のレーザー光でリアルタイムに測定できる新規計測法の開発」や、「鉄やリン酸イオン等の簡易測定法の開発」、「お茶中の抗酸化物の分離測定」、「金ナノ粒子の新たな応用」などの研究をしています。
私の研究テーマは、「植物の新規計測法の開発」です。世界は人口増加によって食糧増産が求められています。その為、植物の生長に関する測定・研究はより一層重要になってきています。既存の植物測定法は同化箱法等があり、植物をある容器(チャンバー)内に設置します。そして、その容器内のO2やCO2の平均濃度を測定することにより、植物の生長状況を検討します。一方、植物の光合成や呼吸に伴うO2やCO2の濃度変化は植物の葉の表面近傍で最も大きいです。即ち、植物の葉の表面近傍でO2やCO2を測定したほうが最も高感度となります。また、植物の生長に対する富栄養化や塩害等の環境変化の影響は、従来では数日~数か月経過しないと分からないことが多いです。従って、植物の高感度且つ迅速な新規計測法の開発が必要です。
私は植物の葉の表面近傍にレーザー光1本を通すだけで、植物の呼吸及び光合成等の生理活動をリアルタイムにモニタリングできる分析装置を開発しています。測定装置は市販のものに当然ありませんので、自ら製作しなければいけません。実際は試行錯誤しながら、すこしずつ進んでいます。植物の呼吸及び光合成が実験データから反映された時、大きな達成感とやりがいを感じます。将来的には、富栄養化や塩害等の環境変化が植物に与える影響の研究に応用したいです。さらに、この技術の実用化も図りたいです
実験の前に、分析装置のレンズ間に設置する、アナカリスやカボンバなどの水生植物の葉を培養する培養液を薬品と蒸留水を用いて作る。
蛍光消光、プローブ光の偏向による「新規計測法の開発」に取り組む。分析装置は、約1年間をかけて製作したオリジナル装置で、特許出願も検討している。
分析装置は暗室の中で作動させる。レンズ間に設置した培養液内の葉の表面にレーザー光を当てて、蛍光消光およびプローブ光の偏向を同時に測定する。
蛍光消光、プローブ光の偏向の状況は、電圧として装置が読み取った後、データはデジタルマルチメーターへ送られ、電圧の数値がPCに表示される。
カテキン類測定法の研究を行う。研究には薬品を多用するが、その一つであるホウ酸の緩衝液を作るため、ホウ酸の量1.237gを正確に計る。
緩衝液に、分析したい液体(お茶など)を入れた混合液を装置に設置し、電圧をかけた後に、どのような物質が入っているか紫外線を当てて測定する。
蛍光消光、プローブ光の偏向による「新規計測法の開発」の研究を行うため、先輩が製作した分析装置を動かしながら誤作動の原因を探り、その修繕に取り組む。
リン酸イオンの標準液(濃度別)を用意し、測定装置を用いずに濾紙など紙ベースでの低濃度の測定ができるかを検討する。