
生命環境化学科4年
(2024年9月取材時)
天然色素(メラニン)を用いた色素増感太陽電池の開発
私は、シリコン型太陽電池の代替となる色素増感太陽電池の開発について研究しています。シリコン型太陽電池は発電効率が太陽光の20%と高い反面、製造コストの高さがネックです。一方の色素増感太陽電池は発電効率が12%とやや劣りますが、製造コストを抑えることができます。ただし色素増感太陽電池に使用されている色素は、Ru(ルテニウム)錯体色素というレアメタルのため、この色素を有機天然色素に代替することでコスト削減と大量生産の実現を目指しています。そこで、人の髪の毛の色の成分であるメラニンの前駆体であるL-DOPAを用い、電気化学的手法を用いて酸化チタン膜上にメラニンを「その場」吸着・重合することで、発電効率を、Ru錯体色素使用の色素増感太陽電池と同等、またはそれ以上に向上させることを目標にしています。
北山先生は、いつも楽しそうに授業をしてくださる印象で、質問をしたら一緒に考え、解答が得られたら褒めてくださいます。そんな北山先生の研究室は、先輩も同期生も穏やかで優しい人が多く、居心地がいい空間です。実験は最低5時間かかるので大変ですが、前回よりも良い実験結果がでると嬉しさが込み上げてきます。また、実験データを比較して良くなかった原因を探ったり、条件を変えて実験に取り組んだりと、研究に深みを出していけることにやりがいを感じています。この研究を通じて、粘り強く取り組む継続力と集中力が身につき、自ら考え行動するようにもなりました。夢中になれるテーマで研究に取り組んでいる今が、一番充実しています。今後は条件を変えながら多くの実験を行い、研究を進めていくつもりです。卒業後は、プラントエンジニア業界に就職します。ものづくりの根底を支える人材になりたかったので、工場の設計、メンテナンス、装置の開発にあたる仕事を楽しみにしています。
「色素増感太陽電池」の作製では、導電性ガラスにメラニン色素を吸着させる回路を使用。作製中は、容器内のL-DOPA溶液が酸化しないように窒素を注入する。
メラニン色素を吸着させた導電性ガラスの「吸着度」を、目視で確認する。実験に際し、溶液pH、色素量、吸着時間などを変えて得たデータをノートに記入する。
導電性ガラスに白金を重ねて作製した「色素増感太陽電池」をソーラーシュミレーターにセットし、太陽光と同じ強さの光を当て電気を発生させ、発電効率を確認する。
ミリオンカッターを操作し、作製したセラミックス材料を評価試験のために適正サイズにカットする。導電性ガラスのカットもこの機器を用いて行う。
研究で用いる試料(炭化ケイ素セラミックスや窒化ケイ素セラミックスの粉末)を、多目的高温炉内にセットする。高温炉の温度は、最大1900℃まで設定できる。
多目的高温炉で作製したセラミックス(炭化ケイ素セラミックスや窒化ケイ素セラミックス)を取り出す。セラミックスは高温で危険なため、耐熱グローブを着用する。
多目的高温炉でセラミックスを作製するにあたり、原料のセラミックス粉末の量を電子天秤で計る。研究内容によっては50gの粉末を焼成することもある。
セラミックス粉末には、正確に計った酸化アルミニウムや酸化イットリウムなどの試薬も混ぜる。これらの試薬がなければ、セラミックス焼結体が完成しない。