
大学院工学研究科生命環境化学専攻2年(修士)
(2024年9月取材時)
桑の実搾汁液の美白化粧品素材としての検討
私の研究テーマは、新しい美白化粧品素材の探索とそのメカニズム解明です。特に、未利用資源を活用した化粧品原料の高付加価値化を目指しています。化粧品や医薬品の開発に興味があり、化粧品原料に関する研究を行う研究室を探していた際に、ここなら自分の興味に合った研究テーマに取り組めると確信して桑原研究室を選びました。現在は、人のシミなどの色素沈着のメカニズムに着目し、天然由来の有機化合物の中から色素沈着を抑制する成分を探しています。これまでの研究で、「桑の実」由来の成分に美白効果がある可能性を見出しました。現在、遺伝子発現解析や質量分析という高度な技術を駆使し、この発見を深掘りしています。なお、遺伝子発現解析のような細胞分子メカニズムの解析では、分子細胞生物学研究室である赤木研究室の先生や愉快な仲間達にサポートいただき研究を進めることができました。このように専門分野を超えた実験も他の研究室の先生方や学生にサポートしてもらいながら研究を進められる環境があり、自らの成長につながっています。
研究のやりがいは、新しい発見や解決策を見つけるプロセスにあります。今、研究課題に取り組むことで、日々の実験が少しずつ成果に繋がっていくことに大きな喜びを感じています。高度な技術を駆使して仮説が証明される瞬間は達成感があり、また、科学的な探求心を満たせる環境にいること自体も大きなやりがいに結びついています。こうした研究を通じて、自主的に研究を進める力を身につけることができました。さらには問題解決能力やクリティカルシンキング能力も向上した実感があり、併せて、学会発表や論文執筆の経験を積むことでプレゼンテーション能力もアップしました。今後は、美白素材のより具体的な作用メカニズムを明らかにし、実用化に向けた研究を進めていく考えです。卒業後は、医薬品開発受託研究機関の研究職として就職します。大学で培った知識と技術を活かし、業界や社会の発展に貢献したいと思っています。
○学部4年:「桑抽出物のマウスメラノーマ細胞のメラニン産生抑制評価」が、ポスター優秀賞を受賞(物理化学インターカレッジセミナー)。
○修士1年:「桑の実成分のメラニン色素産生の影響」が、ポスター優秀賞を受賞(物理化学インターカレッジセミナー)。
○修士1年:「イノベーションの創出を目指したXR空間での多様性の理解と国際競争力強化」が、理工系学生科学技術論文コンクール優秀賞を受賞。
〇修士2年:「Efficacy of the mulberry extract as a whitening cosmetic raw material」が Best Student Poster Presentation Awardを受賞(International Conference on Innovations in Engineering and Social Science : ICIESS 2024)
研究で用いる細胞の培養は無菌操作が必要なため、雑菌の混入を防ぎ、清潔な環境を保つクリーンベンチ内で行う。
細胞ごとに最適な培養液が異なり、実験の目的に応じて多様な培養容器が使われる。細胞は、37℃・CO₂ 5%に保たれたインキュベーター内の適切な環境下で培養する。
光学顕微鏡を用いて細胞の様子を観察する。元気な細胞を維持できているか、サンプル添加による影響で細胞の状態に変化が起こっていないかなど細胞チェックは欠かせない。
化粧品技術の応用を目指し、「高含油率エマルション(乳化剤)の調整と乳化安定性評価」のためオイルと界面活性剤、精製水を撹拌するホモミキサーを操作する。
粘度計を用いて、エマルション(乳化剤)の粘度を測定する。粘度の数値は、パソコンのモニターに自動的にグラフ化されて表示される。
ある処理を施した食品粉末表面の親水―疎水性を評価するため、静的接触角針を用いて水との接触角を測定する。
皮膚浸透性の高い新規の界面活性剤を化学合成し、精製のため分離漏斗(ろうと)を用いて、水層と油層に分かれた液体を分離する。下のフラスコに不要な水層を取り除き、漏斗内に必要な油層を残し、次の合成ステップに使用する。
人工皮膚への浸透度を研究するための「逆ミセル溶液」を作る。溶液を約10分間攪拌して、液体内物質の均一化・安定化を図る。
2種以上の市販消毒剤混合による抗菌効能低下が引き起こされるメカニズムを探るため、混合比率を変えながら液体のpH変化、透明度および濁度の評価、性状変化を調べる。