
大学院工学研究科生命環境化学専攻2年(修士)
(2023年7月取材時)
プロテノイドミクロスフェアへのDNA吸着
三田研究室では、「宇宙・地球の観点から生物と環境の関わりを解明する」という研究に取り組んでいます。私自身、小さい頃から理科が好きで、高校で生物学を学んだ際にもっと生命について知りたいと思うようになったことが生命環境化学科を選んだきっかけですが、入学後に生命の起源を研究している三田研究室を知り、配属を希望しました。私の研究テーマは、「プロテノイドミクロスフェアへのDNA吸着」。目指すのは、もちろん生命の起源の解明です。隕石から発見されたアミノ酸前駆体を加熱縮合することでタンパク質のような物質、プロテノイドミクロスフェアを作り、そこに生命に欠かせないDNAを吸着・取り込ませることで機能を発現させられないかを研究しています。ちなみに実験が成功すれば、成果をワクチン開発にも応用できるのではないかと考えています。
先輩方から引き継がれてきた実験結果に私の実験結果が加わり、これらの結果を基に後輩がさらに実験を深化させ、いつの日か世界中に役立つ物事に応用されたら、なんと素晴らしいことでしょう。そうしたワクワクするような思いが、今の研究のやりがいにつながっています。生命の起源については、まだまだ知られていないことが多いですが、いずれ研究成果をあげることで生物にとって親和性の高い(副作用や拒否反応のない)薬や機械などの開発の一助になればと思っています。この研究・実験スキルを活かせるように、将来的には、製薬会社の研究職として働きたいと考えています。
三田研究室では、宇宙環境でペプチドやヌクレオチドが生成するかを確かめるため、国際宇宙ステーションの曝露部を使った宇宙実験「たんぽぽ」に参加しています(たんぽぽ3・4・5は、三田教授が研究代表者)。また、月面上の実験や新たに建設が始まった月周回宇宙ステーションGatewayでの実験を目指した準備も行っています。
「電子プローブマイクロアナライザー(EPMA/電子顕微鏡)」に、試料をセットする。試料はDNAがあるものや無いものなど数種類を用意して、比較分析を行う。
「電子プローブマイクロアナライザー」で、プロテノイドミクロスフェアにDNAが吸着しているか、また、何の元素が何が含まれているかなど、写真をモニターで確認する。
モール温泉水の分析実験の準備中。腐植物を含むモール温泉水にどんな成分が含まれるかを分析するため、北海道、大分、鹿児島などのモール温泉水のサンプルを分析する。
モール温泉水にはゴミなど不純物が含まれるため、濾過してゴミを取り除き、ガスクロマトグラフやTOC計(全有機体炭素計)などの装置にかけて、成分を分析する。
温泉水に含まれる不純物を取り除くため、研究用の目の細かい濾過用フィルターをセット。濾過には時間がかかるため、真空ポンプで減圧してスピードをアップさせる。
モール温泉水に含まれる有機物成分と炭(亜炭)から浸みだす有機物成分と比較するための実験を行うため、炭を砕いて粉末化する。
宇宙環境でペプチドが作られるかという「たんぽぽ」の実験を、実験結果を地上で再現してみることで、宇宙でのペプチドの生成条件を明らかにする。このため、いろいろな条件で試料に紫外線を照射して結果を比較検証する。
海底火山の熱水噴出孔(高温・高圧力)の環境を模したハイパーフロリアクターを使い、熱水噴出孔でのアミノ酸の縮合に金属イオンがどういう働きをするのかを分析する。