卒業研究

福永研究室へようこそ!ここでは卒業研究の進め方や、卒業研究のテーマについて説明します。
このページはまだつくりたてなので読みにくいですが、だんだんと読みやすいレイアウトに変えていきたいと思います。

研究テーマと卒業研究の目標について

研究テーマ
福永研究室では、数学に関する研究をしてもらいます。
福永の専門は結び目理論(語のトポロジー)・特異点の微分幾何学なので、
特に希望がなければこれらの分野に関連する研究を行ってもらいます。
何か興味のある数学や読みたいテキストがある人は、可能な限り希望に応えたいと思いますので、ご相談ください。
内容は数学ですが、最終的には、生命・物質・環境・化学などへの応用を視野に入れた研究を行います。
実験は行いませんので、実験をやりたい人は本研究室にはマッチしません。

ゼミIIや卒業研究の進め方について
生命環境化学科では、3年次後期の「生命環境化学ゼミナールII」から研究室配属を行います。
福永の研究室の場合、「生命環境化学ゼミナールII」では各自一冊基礎的なテキストを選んでもらい、
ゼミナールの時間に黒板で勉強内容を発表してもらいます(授業をする感じだと思えば良いです)。
同じテキストを複数人で輪読しても構いませんし、一人で一冊読んでも構いません。

無事に進級出来たら4年次の「卒業研究」で正式に卒研生となります。
「ゼミナールII」から引き続きテキストを輪読しますが、
それと並行して文献調査や最先端の論文を読み、具体的な研究課題を決めます。
具体的な課題が決まったら、解決に向けて研究を行います。
テキストの輪読セミナーから、研究進捗報告セミナーへと移行します。

卒業論文の目標について
基本的にはまずは勉強したテキストや論文の内容をしっかりと理解してもらいます。
その上で教科書や論文に載っていない新たな具体例や公式を自分で作り、
それらを考察した結果をまとめることを目標にします。
その際、生命・物質・環境・化学いずれかのテーマと関係させることを目標にします。
単なるテキストのまとめだけではなく、必ず何らかの形で、
新しいことを考察し、卒業論文としてまとめてもらいます。

必要な予備知識や心構えについて
必修科目以外の予備知識は求めません。また、数学の成績は上位でなくても問題ありません。
下位(例えば「可」ばかり、など)だと少し厳しいかもしれませんが、
必修科目の数学をあまり使わない卒研テーマもありますので、やりようはあると思います。
いずれにしても、「生命環境化学ゼミナールII」で鍛えなおすことになります。

数学の研究は自分の頭の中で考え理解したことのみが成果物です。
自分が理解出来ていないことを卒業論文に書くことはできません。
工学部での授業における数学と卒業研究での数学の要点違いは、授業では「どのように解くか(How)」を身に着けることが要点でしたが
卒業研究での数学は「なぜその解法で解けるのか(Why)」への理解に到達することが要点ということです。

二次方程式の解法で例えると、解の公式を覚えて二次方程式が解けるようになる段階が「How」の段階であり、
なぜ次数が2の場合は解の公式が作れるのか(係数が何であっても"x="の形にできるのか)を考えることが「Why」の段階です。
「How」の理解へは、教科書の内容や公式の暗記(単純な知識の取得)・形式的な代入処理だけで到達できますが、
「Why」の理解のためには、知識を得るための勉強のみでは到達することはできず、
定義の意図や、定理・数式の意味が自分の中で「腑に落ちる」まで何度も繰り返し考え抜く必要があります。
また、数学は実験で確かめることができませんので、主張が本当に正しいのか・主張を正しく理解しているのかを
客観的に判断することは困難であり、結局は自分の理解を信じるか信じないかの問題になってきます。
(論文として出版されたあと数十年信じられてきた定理の証明が、不完全だったという事例もあります)
従って、自分を誤魔化すことは絶対にしてはならないことです。
自分の理解が間違っているのではないか、勘違いしているのではないか、望まぬ反例は出てこないか、 常に疑いながら研究を続けます。
そして、ありとあらゆる可能性を検討して、それでも正しいと思えることだけ「正しい」と言うことが許されます。
大して深く考えもせずに、安易に黒板に数式を書いたり「わかりました」と発言した場合は、非常に厳しく指導することになります。
上記の理由から、福永が教え過ぎるのも数学の卒研指導としては良くありません(単なる知識の取得になってしまう)。
大部分の時間は自分で考えてもらうことになります。
通常の授業での指導とは違うので、最初は戸惑ったり落ち込むこともあるかもしれません。
福永としても心苦しいのですが、どうしても教育上必要な指導ですので、ある程度は覚悟をしてもらう必要があります。




現在と過去の卒業研究テーマ

☆2024年度☆

●卒業研究で下記のテーマについてセミナー・研究しています(4名)
・環境問題などを通した数理モデルの考え方
テキスト
[1] J.ハート(原著)『環境問題の数理科学入門 発展編』丸善出版
・感染症の数理
テキスト
[1] 西浦 博(編)『感染症疫学のためのデータ分析入門』金芳堂
・パーシステントホモロジーへ向けたホモロジー群の基礎
テキスト
[1] 阿原一志『計算で身につくトポロジー』共立出版
・Excelを用いた曲線やパターンの生成
テキスト
[1] 岡本 健太郎(著)『アートで魅せる数学の世界』技術評論社


☆2023年度☆

●下記のタイトルの卒業論文を提出しました(4名)
『結び目図式のライデマイスター移動に対応するテイトグラフの変形について』
『メチルアルカンから得られるグラフのトポロジカルインデックスに関する研究』
『複数の正多角形および正有理数角形による平面の敷詰め』
『カウフマンブラケットの特殊値に関する考察』

●生命環境化学ゼミナールIIで下記のテキストを輪読しています(5名)
[1] 阿原一志 『計算で身につくトポロジー』 共立出版
[2] J.ハート(原著) 『環境問題の数理科学入門』 丸善出版
[3] 西浦 博(編) 『感染症疫学のためのデータ分析入門』 金芳堂
[4] 乾 敏郎 (著), 阪口 豊 (著) 『自由エネルギー原理入門 知覚・コミュニケーションの計算理論』 岩波書店
[5] 岡本 健太郎(著) 『アートで魅せる数学の世界』 技術評論社

●卒業研究で下記のテーマについて研究しています(4名)
・トポロジカルインデックスと化学について
テキスト
[1] 細矢治夫 『トポロジカル・インデックス 改訂版---フィボナッチ数からピタゴラスの三角形までをつなぐ新しい数学』 日本評論社
・組み紐と結び目
テキスト
[1] 河野 俊丈 『組みひもの数理(新装版)』 遊星社
・平面グラフから生成される平面曲線の性質の研究
・平面・空間充填図形とその3Dプリンターでの実現


☆2022年度☆

●下記のタイトルの卒業論文を提出しました(1名)
『モンティ・ホール問題とその拡張に対する計算機を用いた考察』

●生命環境化学ゼミナールIIで下記のテキストを輪読しています(4名)
[1] 河野 俊丈 『組みひもの数理(新装版)』 遊星社
[2] 河内明夫 ・岸本健吾 ・清水理佳 『結び目理論とゲーム: 領域選択ゲームでみる数学の世界』 朝倉書店
[3] 細矢治夫 『トポロジカル・インデックス 改訂版---フィボナッチ数からピタゴラスの三角形までをつなぐ新しい数学』 日本評論社
[4] 今野 紀雄 『四元数』 森北出版

●卒業研究で下記のテーマについて研究しています(1名)
・モンティ・ホール問題とその応用
参考文献
[1] ジェイソン・ローゼンハウス 『モンティ・ホール問題』 青土社


☆2021年度☆

●下記のタイトルの卒業論文を提出しました
『n次元ユークリッド空間内の枠付きベルトラン曲線について』
『数理モデルの視点からの感染症の研究』
『複数の長方形を折ることができるポリオミノの研究』

●卒業研究で下記のテーマについて研究しています(3名)
・枠付き曲線とベルトラン曲線
・感染症の数理モデル
・計算幾何学(直方体の展開図など)

●生命環境化学ゼミナールIIで下記のテキストを輪読しています(4名)
[1] 河野 俊丈 『組みひもの数理(新装版)』 遊星社
[2] 河内明夫 ・岸本健吾 ・清水理佳 『結び目理論とゲーム: 領域選択ゲームでみる数学の世界』 朝倉書店
[3] 薩摩順吉 『確率・統計(理工系の数学入門コース 7)』 岩波出版
[4] 佐藤 純 『いますぐ始める数理生命科学 - MATLABプログラミングからシミュレーションまで -』 コロナ社


☆2020年度☆

●下記のタイトルの卒業論文を提出しました
『特異点を持つ曲線の曲率とチューブの面積への応用』
『枠付き曲線の曲率とチューブの体積への応用』
『ホップリンクの領域選択ゲーム及び結び目の辺選択ゲーム』
『ボイドモデルにおける群れの回転方向に関する考察』

●卒業研究で下記のテーマについて研究しています(4名)
・結び目の領域選択ゲーム
・枠付き曲線から作られるチューブの面積
・Pythonを用いたボイドモデルの実装

●生命環境化学ゼミナールIIで下記のテキストを輪読しています(3名)
[1] 村上斉 『結び目のはなし(新装版)』 遊星社
[2] J.ハート(原著) 『環境問題の数理科学入門』 丸善出版
[3] 中内 伸光 『じっくり学ぶ曲線と曲面―微分幾何学初歩』 共立出版


☆2019年度☆

●生命環境化学ゼミナールIIで下記のテキストを輪読しています(4名)
[1] 中内 伸光 『じっくり学ぶ曲線と曲面―微分幾何学初歩』 共立出版
[2] 河内明夫 ・岸本健吾 ・清水理佳 『結び目理論とゲーム: 領域選択ゲームでみる数学の世界』 朝倉書店
[3] 岡 瑞起、池上 高志、ドミニク・チェン、青木 竜太、丸山 典宏 『作って動かすALife 実装を通した人工生命モデル理論入門』 オライリー・ジャパン


将来のテキスト候補

上記で使用しているテキストの他に、下記のようなテキストに(福永が)興味を持っています。ゼミIIなどで取り組みたい学生は声をかけてください。
数学以外のテキストも含まれていますが、卒業研究はあくまで数学的な視点からの研究になります。
また、下記の文献の難易度は様々で、本格的に勉強をしないと読み進められない文献も含まれています。
手を動かして何かを作りたい人は、シミュレーションのためのプログラム作成や、3Dプリンターを用いた図形制作の方向性も考えられると思います。

[1-a] 中平 健治 『図式と操作的確率論による量子論』 森北出版
[1-b] ボブ・クック, アレクス・キッシンジャー 『圏論的量子力学入門』森北出版
[2] 中山 茂 『クラウド量子計算入門―IBMの量子シミュレーションと量子コンピュータ』カットシステム
[3] Heather A. Dye "An invention to knot theory" CRC Press
[4] Bernd Heidergott, Geert Jan Olsder, Jacob van der Woude 『max-plus代数とその応用』森北出版
[5-a] 馬場 敬之 『集合論キャンパス・ゼミ』マセマ出版者
[5-b] 寺沢順 『現代集合論の探求』日本評論社
[6] 石本 健太 『微生物流体力学 生き物の動き・形・流れを探る』サイエンス社
[7-a] 川又生吹, 鈴木勇輝, 村田 智 『DNA origami入門: 基礎から学ぶDNAナノ構造の設計技法 』オーム社
[7-b] Garrett, J; Jonoska, N; Kim, H; Saito, M "DNA origami words, graphical structures and their rewriting systems", Nat. Comput. 20 (2021), no. 2, 217–231.
[8] 西田 泰伸 『細胞膜計算』近代科学社
[9] 手塚 集, 吉田 寛『計算統計入門/代数生物学―大規模・高精度計算が拓いた新技法』講談社サイエンティフィック
[10] 矢崎 成俊 『動く曲線の数値計算』共立出版
[11] 佐々木 浩宣『ヘンテコ関数雑記帳』共立出版
[12] 筱田 健一 『対称性の数学~繰り返し模様に潜む幾何と代数~』技術評論社
[13] Victor Kac "Quantum Calculus" Springer
[14] フィッシュ『巨大数論 第2版』
[15] 野口 和範『整数論体験入門』共立出版
[16] 西山 亨 『フリーズの数学 スケッチ帖』共立出版
[17-a] 杉原厚吉『立体イリュージョンの数理』共立出版
[17-b] 杉原厚吉『だまし絵と線形代数』共立出版
[18] 日本応用数理学会 (監), 野島 武敏 (編), 萩原 一郎 (編)『折紙の数理とその応用 』共立出版
[19-a] E.A. ロード (著), A.L. マッカイ (著), S. ランガナサン (著)『ミクロの世界の立体幾何学』丸善出版
[19-b] 細矢 治夫, 宮崎 興二『多角形百科』丸善出版
[19-c] 宮崎 興二『多面体百科』丸善出版
[19-d] 宮崎 興二『4次元図形百科』丸善出版
[19-e] J. Akiyama, M. Kobayashi, H. Nakagawa, G. Nakamura & I. Sato "Atoms for Parallelohedra", Geometry — Intuitive, Discrete, and Convex pp 23–43 (2013).
[20-a] Herbert Edelsbrunner, John L. Harer『計算トポロジー入門』共立出版
[20-b] 池 祐一,他4名『位相的データ解析から構造発見へ』サイエンス社
[21] ウィリアム・パウンドストーン『ライフゲイムの宇宙』日本評論社
[22] William A. Sethares and Ryan Budney "Topology of musical data" Journal of Mathematics and Music, Vol 8 (2014), pp 73-92.
[23-a] 時弘哲治『応用数理 ―血管新生の数理モデル』数学の現在e, 152-168
[23-b] 鈴木 貴『数理医学入門』共立出版
[23-c] 岩見 真吾, 中岡 慎治, 岩波 翔也 『ウイルス感染の数理モデルとシミュレーション』共立出版
[24] 西野友年『テンソルネットワーク入門』講談社

戻る
Updated 2024/01/09