非点収差法を用いた微小変位測定器の改良
浦田 雅士 末松 道治
1. 緒言
レーザーで微少な加工をするときに、加工物の表面を計測してデータの補正を行い、加工の補助が可能になれば、レーザー加工の精度を上げることが出来る。本研究では、非点収差法を用いた4分割光検出器を使った微小変位測定器での測定精度向上を目的としている。
2.原理
本研究の装置図を図1に示す。半導体レーザーより発射された光ビームは、加工物用凸レンズにより加工物上に、焦点を結ぶ。このとき加工物表面で光は反射し散乱する。その光を加工用凸レンズで集光して凸レンズと円柱レンズを通じて4分割光検出器上に集光させる。円柱レンズは円柱の屈折面を持っているので、縦方向のみピントが変化して焦点がずれるために4分割光検出器上に集光した光の像を変化させることができる。
3. 実験方法及び測定方法
3.1 実験方法
4分割光検出器の回路を図2に示す。パソコンのTTLボードを使用し半導体レーザーを発射させるように制御する。このレーザーの光を加工物に集光させて、その反射光を円柱レンズに通し4分割光検出器上に反射光を集光させる。この状態で加工物を一定量づつ移動させると、4分割光検出器上に入射する光が変わり光の集光像が変化する。4分割光検出器上に入射した光は、A/D変換ボードによりパソコンに取り込んで、光電変換して4電極に分割して出力する。
図1 装置全体
3.2 非点収差法による測定
図2のように4分割光検出器に入射した光の像を表す手段として縦横比Hの計算式で表すと、
H=((A+C)−(B+D))/(A+B+C+D)
のようになる。また、この計算式で4分割光検出器上に入射した像の形も判別できる。 縦横比Hの値が、H<0の時は横長の楕円となり、H=0の時は円で、H>0の時は縦長の楕円となる。
図2 非点収差法での縦横比変化
4.実験及び結果
4.1 レーザーの光量と測定平均回数について
計測精度をさらに向上させるために、半導体レーザーの光量と測定平均回数をそれぞれ変化させたときの計測を行った。計測は、アルミニウム板を1μmずつ100μmまでレーザーの光軸上の方向へ移動させて行った。図5に光量変化、図6に測定平均回数変化の結果を示す。図5での光量100%は光量(0.4mW)の状態である。図5、6を見ると半導体レーザーの光量、測定平均回数が増加すると標準偏差の値が小さくなることが分かる。従って光量と測定平均回数を増加させれば計測精度をさらに向上できると推測できる。
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図5 レーザー光量の変化による標準偏差値 | 図6 平均回数の変化による標準偏 |
4.3 測定結果
図7 光軸上の移動距離に対する縦横比
4.2の実験を考察すると、平均回数ではこれ以上精度の向上は難しいがレーザーの光量を増加させる方法なら、まだ可能性がある.半導体レーザーより光量が多いレーザーを使用して4.1の実験と同様の方法で測定を行った。使用したレーザーの光量は、多大なのでガラスフィルターを使って約10mWに調整してある。その結果が図7のようになった。レーザーの光を変えることで標準偏差1.309μmの計測精度を得ることが出来た。しかし、レーザーの光量を多量に上げたにもかかわらず大きな変化がない。これにより、この装置での測定限界に達していると思われる。
5.結言
今回の実験では、レーザーの光量と平均計測回数を変化させることで計測精度を向上させることが出来ることが分かった。非点収差法の計測では、1.309μmの計測精度を得ることが出来た。外からの外乱光は可視光カットフィルターを使用すれば全くとは言えないが避けることができる。今後は、周りからの振動や熱の変化などが計測精度に影響するかを調べ、あるならばこれらを改善し、計測精度の向上を目指す。