西

 
 

 

 


所  属 :情報工学部 情報通信工学科

大学院工学研究科 情報工学専攻 修士課程

大学院工学研究科 知能情報システム工学専攻 博士後期課程

 

専門分野 :生体情報処理

 

研究テーマ:脳波・誘発電位の定量解析

具体的な研究内容の一部を以下に示す.

 

1.       脳波モデルを用いた背景脳波の自動判読

  安静閉眼覚醒時に頭皮上から記録される背景脳波は,脳機能状態を知る上で最も基本的な脳波であり,その判読結果は臨床診断で重要視されている.背景脳波の判読は,専門的訓練を受けた脳波判読医(判読医)の経験に基づいて行われているが,判読にはかなりの熟練を要し,また,認定を受けた判読医の数も余り多くはない.

本研究では,判読医の労力の軽減と判読医の訓練のために,脳波モデルを用いた脳波自動判読法を開発した.ここで用いた脳波モデルは,先に提案したマルコフ過程振幅正弦波による脳波モデルであり,脳波の特徴を適切に表現することが可能で,かつ判読医による判読要領との対応がとりやすいという特徴を有する.図1(a)には,頭皮上16部位から導出した脳波時系列を示す.この脳波に対する判読医の判読結果は

Mildly abnormal waking record because of poorly organized background activity, and occasional theta waves anteriorly.

  である.このデータに自動判読法を適用した結果,全く同じ判定結果が得られた.

脳波モデルを用いることによって,脳波の特徴をモデルパラメータで表現することができるので,さまざまな症状の脳波の時系列を発生することが可能となり,判読医の訓練用としても用いることができる.図1(b)には,(a)と同じ症状にある脳波を模擬したモデルの時系列であり,(a)と特徴が類似していることがわかる.

 

2.       スパイクと背景脳波の信号分離

スパイクは,てんかん患者の背景脳波に埋もれて出現する突発的異常脳波である.判読医は,長時間記録された脳波時系列からスパイク波形を検出することによって,てんかんの診断を行っている.判読医の労力を軽減するためのスパイク自動検出法に関する研究は多く行われている.しかし,スパイクが出現した場合の背景脳波にはスパイクの発生メカニズムを解明するための情報などが含まれており,近年,スパイク発生時に低振幅で出現するといわれている高周波成分の特性の解析が注目されている.

    本研究では,スパイク波形を自動検出するだけでなく,検出したスパイク波形を原脳波から除去し,背景脳波と分離する方法を提案した.スパイク波形を除去した背景脳波を解析することによって,高周波成分などの特性解析が可能となる.図2には,てんかん患者から記録した脳波(a)と,スパイク波形を除去した背景脳波(b)を示している

 

 


     

 

 

 

 

 

 

 

 

            図1 脳波モデルを用いた背景脳波自動判読の結果

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


             図2 スパイクと背景脳波の信号分離の結果