Active flutter Control by sound

背景

航空機エンジンの破損の原因の一つとして，タービン及びコンプレッサーの翼列フラッタが挙げられる。翼列フラッタは航空機の心臓部であるエンジンの破損事故と直結した非常に危険な現象であり，安全性・信頼性の見地から設計・開発における最重要課題の一つとして多くの技術者を悩ませてきた。現在でも，この現象の発生機構を解明し，発生を回避するための研究が世界各国において精力的に進められているが，依然として有効な対策はほとんどとられていない。

ところで，従来，音波を用いてノイズ（不要な音波）を能動的に抑制するという概念は，Ffowcs Williamなどにより提案されていた。Huangは，この概念を一歩進めて，空気力学的外力によって生じる物体の自励振動を音波によって能動的に抑制する手法を提案した。この方法は音波を用いるため，機械的な方法に比べ応答も速いうえ，いかなる周波数のフラッタにも対応が可能である点で有効である。また，航空機軽量化の問題に関しても貢献する可能性を秘めている。しかし，音波で音波を打ち消すことについては既に多くの成功例があり，実用化もされているが，音波で物体の振動を抑止する例まだ非常に少ない。そこで本研究は，空気力学的外力によって生じる自励振動として翼列フラッタを想定し，それを音波で抑える実用システムの実現を目指す。このシステムで重要な点は，翼列フラッタの発生初期段階における微小な振動を検知し，側壁の音源から抑制音波を擾乱場に発することでフラッタを未然に防ぐという考え方である。この考え方を実証するために，音波による単独翼フラッタの能動制御が，1993年度より当研究室においてスタートした。

研究成果の例

· 流速7m/s，フラッタ周波数5Hzの2次元翼フラッタは音波により抑制することができる

· 一例として，限界フラッタ流速が約8％上昇する

· 数値計算プログラムによる最適抑止条件の算出

· 亜音速140m/sにおける三次元平板翼フラッタの能動的抑止に成功（詳細は利光まで）

などが挙げられる。