川畑研究室での主な卒業研究と特徴

自然科学や工学あるいは社会科学におけるさまざまな現象を常微分方程式や偏微分方程式などの数式を用いて表したものを数理モデルあるいは単にモデルという.例えば,天候と気象に対してこれまでに成し遂げられた進歩は,一般循環モデルによるものである.こうしたモデルの解析解はほとんどの場合得られないので,モデルをコンピュータで取り扱える形になおしたものを数値モデルと呼んでいる.コンピュータの性能が飛躍的に伸びた現在では,実現象をなるべく精度よく予測するためには数値モデル化が重要な位置を占めている.実現象を解析するためには
         実現象 -> 物理モデル -> 数学モデル -> 数値モデル
という手続きを踏む.そして,特に数値モデルを用いて現象を調べる方法が数値シミュレーションである.しかし,従来のアプローチでは解明しにくい複雑な現象が多数あり,新しいモデルが求められている.ノーベル賞受賞者の中には業績の中心的手法が数値計算であるような人々も多い.数値計算は科学の中央ステージにじわじわと進みつつある,といえる.モデルにより現象を理解しようとする試みは,科学における基本的な考え方の一つである.技術者は現実の複雑さ・多様性をとらえ,何とか制御していかなければならない.そのための鍵がモデリン グである.

具体的な現象,何か自分で知りたい非線形現象を数学を使って記述する.記述された現象のモデル の理論的解析は一般的に高度な数学を必要とし難しい.しかし,理論的にはモデルとなる方程式のす ばらしさは理解できなくともコンピュータを使いさえすればその美しさとか不思議さが感覚的に分か ることが多い.

卒業研究では,現象の数学的記述と数値解析によるコンピュータ実験を行う.

プログラミング言語について

プログラミング言語にはMATLABを用いる.MATLABは対話型および自動実行を行うことを目標に開発された汎用数値解析プログラムである.データの可視化と分析のための優れたグラフィック機能を備えているので採用することになった.C++言語の使用も希望できる.この場合,C++で作製したプログラムを用いて計算を行った後,得られた結果を可視化するためのプログラミングは行わず,市販のソフトウェアを用いる.我々が用いるのは MicroAVS というソフトである.

今後の課題

自己組織化臨界現象のモデルとしてセルオートマトンがある.セルオートマトンの応用は広く,交通量モデル,地震モデルなどさまざまなモデルが提案されている. 現在地震を説明できる理論として,セルオートマトンによるモデルを研究中である.

1952年頃から反応を伴う拡散方程式(反応拡散方程式)が脚光を浴び始めている. 自己複製パターンを発生させるGray-Scottモデルを研究中である.

 
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