福岡工業大学 教養力育成センター

 

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福岡工業大学 教養力育成センター楢﨑 兼司

 みなさんはウェルビーイング(well-being)という言葉をお聞きになったことがありますか?この言葉は一般的に「健全な生活行動や生き方を通して得られる身体的・精神的・社会的に良好な状態」を意味します。国際機関のOECD(経済協力開発機構)が、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの両方を実現するための「学び」の創出こそ、これからの教育の重要な役割であると表明したことで、最近この言葉に注目が集まっています。

 私が所属する福岡工業大学でも近年、学生達が「自分にとってのウェルビーイング」について主体的に考え、その実現のための術を習得できるような授業づくりを進めています。私は授業の中でしばしば、「自分にとってのウェルビーイングとは、個々人の資質や特性に応じて個別に、そして多様に規定されるものである。決して万人に対して単一のものではないし、人に決められるものや、外からもたらされるものでもなく、自分自身が主体的に定義しデザインしていくものである」と説いています。

 地域における住民の健康づくりや介護予防、またそれらに対して自治体や地域を取り巻くステイクホルダ―が果たすべき役割についても、突き詰めると同じなのではないかと最近私は感じています。地域にお住いのみなさんはウェルビーイング(例えば、どんな自分でいたいか、どんな状態を維持したいか)を主体的に捉えた上で、「自分なりの健康づくり」や「自分なりの介護予防」のスタイルや内容を日常生活の中で試行錯誤しながら見つけ、個人やグループとして実践し、深化させていく。自治体を含む地域のステイクホルダ―は、住民によるウェルビーイングの自分ごと化やそれぞれの主体的な実践に、サービス主体というよりはむしろ伴走者として寄り添い、様々な形で支援していく。-このような将来に向けた地域の仕組みづくりが、老若男女を問わずみんながいきいきと暮らせる豊かな地域を築き、さらに次世代に繋いでいくためにも必要なのだろうと感じています。

 私は地方のしがない一大学教員ですが、主たる専門とする運動・身体活動疫学をベースとして、お付き合いのある産官学民のステイクホルダ―のみなさんと一緒に協力しながら、みんなが「自分にとってのウェルビーイング」を大事にできるような地域づくりに少しでも役立つことができれば考えています。