福岡工業大学工学部電子情報工学科教授

川畑茂徳
KAWABATA Shigetoku
   

超準解析とSchwingerの汎関数微分方程式

16世紀後半Newtonとほぼ同じ時期にLeibnizは微分積分学の記述に,基本概念として無限大と無限小の数を含む体系を考え多くの成果を得たのであるが,その概念の基礎づけにおいて確かなものがあったわけではない.

代数的には,実数体を無限小元 を含む体,非アルキメデス体と呼ばれるもの,の中に埋め込むことは困難は無い.しかし超越的な関数を取り扱うとすぐに困難に出会うことになる.すなわち正弦関数 sin(x) を微分しようとすると,次のように書くことになる.

       sin(x+dx)-sin(x)=sin (x)(cos(dx)-1)+cos(x)sin(dx)

ここにdxは 無限小である.ところが,これを書くためには正弦関数が実数+ 無限小の形の数に定義されることと,正弦関数の加法定理がここでも成立しなければならない.これに関しては,複素関数論で正弦関数を解析接続によって定義域を拡張すれば拡張された関数に関しても加法定理が成り立つことは解析接続の原則によれば当然である,ことを思い出せばよい.A. Robinsonは1960年代の前後に近代論理学,詳しくはモデル理論を用いて無限小に関する理論の数学的基礎を与えた.
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