2002年度仙波研究室卒業研究テーマ

T.はじめに

同じ形状の部品を量産するために使われる金属製の型のことを金型と呼びます. 過去に我国が人件費の安い近隣諸国へ金型を作る技術を教えた結果,近隣諸国との国際競争に負けそうになっています. 資源が全く無い我国が今と同じように豊かな生活を将来も続けるためには,過去にそうであったように,技術立国を目指す必要がありそうです. U.の項目で提案することになる卒業研究のテーマでは,これまでは造ることができないと思われていた,非常に小さい部品を量産する金型を創ることを目指しています. ”ばくち”みたいな話になりますが,130年ぶりに九州人が我国の役に立つこと目指しています. 130年という意味,わかります?

U.テーマ&テーマ紹介

1. 折れ難く,しかも髪の毛よりも細い,マイクロ研削工具を造る研究.
1.1  硬くてねばい,めっき皮膜を造る研究.
1.2  ダイヤモンド砥粒の表面を違う物質に変え,砥粒がめっき皮膜とくっつき易くする研究.
1.3  直径が1 mm,長さが10 mm位のダイヤモンド砥粒を含むめっき皮膜を早く作るための研究.
1.4  1.3のめっき皮膜を超音波加工して,髪の毛よりも細いマイクロ研削工具を作る研究.
表題のとうり,「折れ難く,しかも髪の毛よりも細い,マイクロ研削工具を作る」ための研究です. 髪の毛よりも細い工具を造ることには成功しています.折れ難い工具を造ることについても,近未来に実現できることを確信しています. 世界に一つしかない,我々だけの技術です.

2. マイクロ部品を量産するための,マイクロ金型を造る研究.
2.1  半分だけ半導体を作る方法をまねして,2次元形状のマイクロ金型(原型)を造る研究.
2.2  半導体を作る方法とは全く違う方法で,3次元形状のマイクロ金型(原型)を造る研究.
2.3  (原型)にめっきして,マイクロ部品を量産するためのマイクロ金型(反転型)を造る研究.
2.4 (反転型)に樹脂を流しこみ,マイクロ部品を実際に造ってみる研究.
これも,表題のとうり「マイクロ部品を量産するための,マイクロ金型を作る」ための研究です. 「他人のふんどしを借りる」とはまさにこのことですが,超高速回転・超精密マイクロマシニングセンタや3次元CAD/CAMシステムを使ってマイクロ金型を造るつもりです.
3. 超音波の縦振動や捻り振動を利用して,精密金型の表面にマイクロ模様を造る研究.
3.1 ビジュアルC++やJavaを使って,マイクロ模様をシミュレーションする研究.
3.2  超音波縦振動加振機あるいは捻り振動加振機を使って,マイクロ模様を造ってみる研究.
これは,我国のために役立つかどうか,現時点ではわかりません. 過去50年くらいの間,我国は「滑らかな加工面」を造ることを目指してました. このテーマでは,「美しい加工面」を造ることを目指してみたいと思っています.

V.コメント

1.卒業研究を通じて,お互いに信頼しあえる,人間関係を作りたいと思っています.
2.成功するか失敗するか,どちらに転ぶかわからないような卒業研究のテーマを提案しています.
3.色々考えてみて,実験してみて,失敗してみて,また考えてみて,…といったプロセスを繰り返します.
4.最後に「お互いに良くやった」といえる人間関係を作りたいと思います.
5.修士,博士課程の指導資格を持っています.
6.就職状況を見ていますと,修士課程に進学することを勧めます.