研究内容
脳型情報処理のメカニズムをダイナミックな観点で解明し,また人工知能をよりダイナミックなものにするための理論的研究を行っています.具体的には
・神経回路網の自発的機能分化に関する数理モデル研究
・レザバー計算モデルの情報処理・ダイナミクス・進化研究
・人工知能におけるカオス・フラクタルの分析・生成と情報処理への応用
・神経回路における振動的ダイナミクスの計算論的役割
・大規模言語モデルの応用と分析
等の研究や、これらの理論的背景となる非線形力学系・複雑系の数理についての研究を行っています。
卒業研究/大学院
卒業研究では上記に関係するテーマや、広い意味で人工知能・機械学習・脳科学・脳型情報処理・複雑系数理に関係するテーマを研究してもらいます.最近は人工知能,とくに深層学習(Deep Learning)を用いた応用的なテーマも扱っています.大学院進学に興味がある場合は上記のような範囲の中から高度な研究成果につながるようなテーマを検討し,取り組んでもらうことになります.
現在の主な研究グループ/テーマ
リザバー・RNNグループ
はじめは均質的な構造を持ったネットワークから,部分部分に異なる機能を持つネットワークが出現することを機能分化と呼びます.脳は機能分化していますが,遺伝的要因だけではなく,発達過程での学習も分化に関与することが知られています.内部状態を持ち,外部からの入力だけでなく,自分の状態に応じて出力と次の時刻での内部状態が決まるリカレント・ニューラルネットワークを主に用いて,ネットワークが機能分化するモデルを作ろうとしています.仮想的な自律移動エージェントを制御するリザバーネットワークの進化や,複数のネットワークどうしが互いに学ぶ相互学習,生物学的なシナプス学習則のRNNへの適用など,脳とAIが交差する様々な方向から研究を進めています.
生成モデルグループ
拡散モデル(Diffusion model)やGAN (Generative Adversarial Network) らの生成モデルは,本物のデータ(画像や時系列など)によく似たデータを生成することを学習する深層学習モデルであり,世界中で盛んに研究されています.我々は複雑系の観点から生成モデルに対し興味があり,生成モデルの性質の解明や応用に取り組んでいます.例えば,GANにより画像を繰り返し変換するシステムを力学系として考え,その性質を利用した情報処理ができないか検討しています.また,拡散モデルやGANにカオス時系列やフラクタル性をもつデータを生成させ,その特徴を調べることで,生成モデルの能力を調べています.さらにGANを利用した逆さ文字の生成など,応用にも取り組んでいます.
その他
大規模言語モデル(ChatGPTなど)や画像生成AIを活用し,教育・医療など様々な社会的課題に対し,より個人の状況に応じた解決策を実現するための応用技術を開発します.また過去の卒研では深層学習による画像認識・物体検出モデルを利用して,実世界で初心者がカードゲームを遊ぶことを補助するシステムの開発,深層強化学習などの研究も行っています.
最近の競争的資金による研究プロジェクト
- 2023-2025, 科研費基盤(C)「情報流の最適化による機能分化と情報統合の実現」 研究代表者
- 2021-2023, JST 未来社会創造事業 共通基盤領域 「非線形・複雑系に着目した認知症のロバストネス数理モデルとそのハブ因子の解明」 主たる共同研究者
- 2020-2022, 科研費基盤(C)「深層ニューラルネットワークにおけるカオス的ダイナミクスの解析と情報処理への応用」 研究代表者
- 2020-2023, 科研費基盤(B)「記憶回路網における文脈情報の修飾・統合機能に関する実験と理論の融合研究」 研究分担者
- 2017 - 2023, JST CREST「脳領域/個体/集団間のインタラクション創発原理の解明と適用」研究参加者
- 2017-2020, 科研費基盤(B)「複合型視覚性幻覚の神経情報機構に関する数理モデル」 研究分担者
- 2016-2018, 科研費基盤(C)「神経振動の計算論的役割解明に向けて:時系列の時空間分節化学習の実現」 研究代表者
- 2015-2017, 科研費基盤(C) 「学習と記憶における周波数カップリングを用いた文脈情報と感覚入力の統合」 研究分担者
- 2015-2019, 科研費新学術領域 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解 「ネットワーク自己再組織化の数理的基盤の創成」 連携研究者
- 2014-2015, 科研費萌芽「脳神経ネットワークの機能分化に関する情報数理モデル」 研究代表者