*研究室配属希望を検討している福岡工業大学情報工学部情報工学科の学生向けの情報です.
山口研は理論神経科学/人工知能/複雑系などの分野で世界に通用する研究成果を生み出し続けること,
そして研究に関するコミュニケーションが学内で最も活発な研究室になることを目標に掲げています.
この目標の実現に向けて様々な取り組みを行い,学生のみなさんが意欲的に,伸び伸びと研究に取り組めるように環境を整え,研究の発展をサポートしていきます.
研究テーマ,研究室環境,セミナー等,大学院について順に紹介します.
研究テーマの設定について
山口研では脳の情報処理機構を解明し,その知見を人工知能などに応用することを目的に研究をしています.とくに脳のもつダイナミックな機能を理解し,人工知能をより動的で柔軟なものにすることに関心があります.
研究室として進めている主なテーマについては研究テーマのページをご覧ください.また論文の音声解説紹介も参考になると思います.
卒研などのテーマ決定については,教員が提案する複数のテーマ候補の中から選ぶことも,話合いながら新たに設定することもできます.
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学生が研究テーマを選ぶ際には,自分が時間をかけて取り組む価値があり,のめり込めるテーマを選ぶことが何より重要だと考えています.
研究室では,「学生がこれをやってみたら面白いのでは?」と思えるようなテーマを多数用意しています.
話し合いの中でその中から選んでもらってもよいですし,自分で新しいテーマを提案しても構いません(一定の研究レベルは求めます).
最終的には教員との相談の上でテーマを決定しますが、基本的には学生の意欲を最も重視します.
最近の卒研テーマ傾向
卒業研究ではここ数年,深層学習(ディープラーニング)に関するテーマを扱う学生が比較的多くなっています.
とくに,脳のモデル化に応用するリカレント・ニューラルネットワーク(RNN)や,VAE・GAN・拡散モデルといった生成モデルを題材とする研究を多く実施しています.
研究の方向性は多様で,応用志向の研究から,新しいモデルや学習手法の提案,さらには脳科学との接点を探る理論的研究まで,幅広く展開しています.
また,ChatGPTに代表される大規模言語モデル(Large Language Models; LLM)の基礎研究や応用研究にも積極的に取り組んでいます.
研究室としてとくに力を入れている研究テーマは下記の4つです.
- 神経回路網の機能分化に関する数理モデル
- AIへのカオス・フラクタル理論の応用
- 深層AIにおける進化的手法
- 大規模言語モデルの理解と応用
過去の卒業研究タイトルの一部を以下に示します.
- GANを用いたカオス時系列生成
- 画像認識を利用したUNOゲームプレイの補助
- 拡散モデルにより生成された海岸線のフラクタル解析
- RNNを用いたラットの記憶課題遂行時における神経活動の再現
- ChatGPTにおけるチューリングテストの有効性検証
- StyleGANとCycleGANを利用した画像変換
- RNNによる信号再分離タスクにおけるMINEを用いた機能分化構造の誘発
- DCGANによるアンビグラムの生成
プログラミング言語について
現在,機械学習(人工知能)関連のライブラリが充実しているPython を主に利用しています.

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深層学習分野の研究では,Python上で動作する機械学習ライブラリであるPyTorchまたはTensorFlowを用いることが多いです.
大規模言語モデル(LLM)に関する研究では,HuggingFaceやLangChainなどのライブラリを利用するケースが多くなります.
また,Webインタフェースを備えたアプリケーションを作成することもあり,その際にはFlaskやDjangoというフレームワークを使用することがあります.
多くの学生はPythonによるプログラミングが未経験または初級者として配属されることを前提としています.
そのため,配属後にPython言語の基礎から学習を始め,実践的課題に取り組みながら必要なスキルを身につけていく形をとっています.
研究テーマによっては,他の言語を使用する場合もあります(例:Unityを用いる場合はC++,Webフロントエンドを重視する場合はJavaScriptなど).
ただし,これらはこれまで授業で学んできたCやJavaの延長線上にあるため,新しい言語だからといってとくに心配する必要はありません.経験者も未経験者も歓迎です.
研究室環境について
山口研では,学生と教員が利用できる高度なコンピューティング環境を整備し,常に最適な状態に維持するよう努めています.
さらに,チームでの議論や情報共有を円滑に進めるためのツールも積極的に導入し,協働的で活気ある研究環境づくりを進めています.
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PC・座席について
学生一人に対し,机・椅子を一人一セットずつ割り当てています.
さらに,高性能ノートPCまたはデスクトップPCを一人につき一台以上配備しています.
現在(2025年度)では,大多数のPCがメモリ32GB以上の構成です.
ディスプレイ環境としては,4Kディスプレイを1台または2台利用できるほか,
誰でもノートPCを接続して使える共用4Kディスプレイも設置しています.
これらの設備を活用し,自由さと流動性,カスタマイズ性と集中しやすさのバランスが取れた空間づくりを目指して,継続的に環境を改善しています.
Macの利用を希望する場合にも対応可能です.
活用中のツール,設備など
現在導入している主なソフトウェア,クラウドサービス,ハードウェア等は下記のものがあります.
GitHub・Git
コードの変更履歴を管理し,研究プログラムを共同で開発・共有するためのツールです.
学生はコードの同期やレビュー,共同開発を通じてバージョン管理の基本を学び実践することができます.
Slack
チーム向けのコミュニケーションツールで,教員−学生間や学生同士のやり取りを円滑にします.
メールよりも手軽に連絡・質問・ファイル共有ができる環境を整えています.
Wiki
研究室内部用のWikiをGitHub上で運用しています.
サーバや各種ツールの使い方,勉強会資料,プログラミングの小技集などを共有しています.
ファイルサーバ(NAS)
過去の卒論・発表資料・プログラム・データセットなどを整理して保存しています.
必要な資料やデータを研究室内から閲覧・ダウンロードできます.
GPUサーバ
深層学習や大規模言語モデルの研究に利用できるGPU搭載サーバを多数整備(8台程度)しています.
Linux(Ubuntu)環境で24時間アクセス可能で,VPNを用いた自宅からの接続にも対応しています.
Python環境はすぐに利用でき,必要に応じて設定やソフトウェアを追加できます.
書籍
人工知能,プログラミング, 数学,脳科学,科学啓蒙書など各種の書籍を取り揃えています.
学生は自由に利用できます.学生の希望があれば随時研究用に新規購入を行っています.
卒研セミナー・行事予定について
山口研では,週1回,卒研生全員が集まるセミナーを開催しています.
セミナーでは,学生による進捗発表と,勉強会(Python,機械学習の基礎,PyTorchの使い方など)を行います.
また,研究テーマごとにグループ別の打ち合わせを週1回程度行っています.
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進捗発表では,毎週数名の学生が研究目的,実施内容,結果,今後の予定などを報告します.
勉強会では担当者が交代制で書籍や資料の一部を紹介し,内容やプログラムを解説します.
グループ別打ち合わせでは研究の相談,進捗の確認,起きた問題の解決,方向性の確認,論文の読み合わせなどを行っています.
8月には,他研究室と合同で中間発表会を開催しています.
研究計画や成果をまとめ,他研究室の学生・教員からの質問やコメントを受けることで,研究の目的や位置づけを明確にし,モチベーション向上につなげます.
卒業研究関連のイベントは年によって多少異なりますが,おおよそ次のようなスケジュールで進みます.
| 3年次 | 11月頃 | 3年生の配属先決定・顔合わせ・歓迎会 |
| 11月〜2月 | 研究開始準備・研究テーマ紹介 | |
| 3月 | テーマ選択のための個人面談 | |
| 4年次 | 4月 | 研究室キックオフ,打ち合わせ開始 |
| 4〜5月 | Python勉強会 | |
| 5〜9月 | 機械学習ライブラリの勉強会 | |
| 8月 | 中間発表会 | |
| 11月 | 3年生歓迎会 | |
| 1月 | 卒業研究予稿提出締切 | |
| 2月 | 卒研発表会・卒論提出 | |
| 2月 | 卒業論文提出締切 | |
| 2月 | 送別会 |
大学院について
山口研では,大学院修士課程・博士後期課程の大学院生を受け入れています.
世界を驚かせるような人工知能をつくりたい,脳の仕組みの解明に挑戦したい,人間社会に役立つAIの新しい活用法を考えたい,AI・データサイエンス分野で専門性を高めたい――そのような意欲的で野心ある学生を歓迎します.
ともに研究できる仲間が増えることを楽しみにしています.
山口研はここ数年,大学院修士課程への進学者数は学内屈指であり,多くの学生が継続して研究を深めています.
先輩たちは,修士課程でさらに専門性を磨きながら,国内外の学会で成果を発表し,大きく成長しています.
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修士課程2年間では,研究の自主性を段階的に高めながら,複数回の学会発表を通して成果をまとめ,発信する力を養っていきます.
大学院に関する一般的な情報は,大学院の公式ウェブサイトのほか,年数回開催される大学院進学説明会などでも得ることができます.
奨学金等支援制度や,学会出席旅費補助などの支援体制も整っています.
大学院への進学を検討している場合は,研究室訪問の際などにその旨を教員にお伝えください.
FAQ
よく聞かれる質問とその回答です.
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Q1. プログラミングは必ずしますか?
A. ほぼ全員が何らかのプログラミングを行います.勉強だけで終わることはありません.
ただし,研究においてプログラミングはあくまで「何かを知るため・明らかにするための手段」であり,それ自体が目的ではありません.
評価の観点も「スキルがどれだけ身についたか」ではなく,「それを使って何を達成できたか」にあります.
Q2.数学やプログラミングの能力に不安がありますが,大丈夫でしょうか?
A. アイデアから入るテーマも多く,少しずつ理解を深めていくことができます.
先輩卒研生も最初は同じでしたがほとんどの先輩が成果を上げています.
不安がある場合は,研究室訪問の際に先輩学生に話を聞いてみてください.研究室としてさまざまなサポートを行っています.
一般的に大切なのは,理解できなかった部分を自覚し,学ぶ姿勢を持ち続けることです.
プログラミングについては,自分で手を動かして試す,例題を見ずに再現してみるといった行動力があれば十分成長できます.
Q3. 社会に役立ちそうな研究ってなにかしていますか?
A.脳関係では 医療,とくにてんかんに関わる研究プロジェクトに参画しています.
また,大規模言語モデルを使った応用研究ではとくに育児・教育などの分野で人を支え育てるためのAI活用法を提案しようとしています.
Q4.研究室に入ればスキル(プログラミング力・問題解決力・発表力)は自然に身につきますか?
A. 何もしなければ身につきませんが,研究を進める過程で多くの知識やスキルを習得する必要があります.
そのため,卒業までにはスキルの向上が見込まれます.
教員は,日常的なコミュニケーションを通じて課題解決をサポートします.
Q5.複雑系とは何ですか?
A. 多数の要素から構成され,個々の要素の性質だけからは予測できない機能や振る舞いが,全体として現れるシステムのことを指します.
脳はその複雑系の代表的な一例です.