フロリダ大学

 フロリダ半島の北部内陸に位置するゲインズビル(Gainesville)に本部を置く州立大学です.1853年に創立され1905年に現在の校名に変更されました.フロリダ州で最古,最大規模の大学であり,アメリカ合衆国では3番目の大きさを誇ります.
 フロリダは野生のワニが多く,フロリダ大学のマスコット(Albert and Alberta)にもなっています.スポーツ活動も有名であり,スポーツチームは「Gators」と呼ばれています.(応援する人もGatorsとも言われてますが).バスケットボールとアメリカンフットボールが強く,フットボールファインの熱狂ぶりは有名です.学内にあるフットボールスタジアム(Ben Hill Griffin Stadium)は10万人収容することができ,いつも満員になっています.スポーツドリンクの「ゲータレード」は,フロリダ大学の教授陣がフットボールチームのために開発したもので,ロゴにはGatorsのチームカラー(オレンジとブルー)の1つであるオレンジが採用されています.


ゲインズビル

 

 フロリダ大学のあるゲインズビルは,フロリダ半島の付け根あたり,西のメキシコ湾へも東の大西洋へも車で1時間で行くことができます.人口約13万人の小都市で,約4割がフロリダ大学の学生(サンタフェ大学もありますが.)で,噂では7割が大学関係者とか.そのため,平均年齢は20歳台らしく犯罪も少ないです.(恐らく福岡より安全です).フレンドリーで開放的な雰囲気が漂うゲインズビルには,並木通りや何マイルにもわたるサイクリング道路が整っています.一方,ゴルフコースや博物館,劇場,芸術センターなどの施設もあります.気候が温暖で,ゲインズビルと周辺地域には美しい公園,湖,泉がたくさんあります.この辺は左の動画で見ることができます.田舎なので,道端や学内などで多くの野生動物(ワニ,シカ,七面鳥,アライグマ,アルマジロ,リス,などなど)を見ることができます.
 フロリダ州中北部のアラチュア郡にあるゲインズビルは,州の主要都市へも楽に行き来ができます.オーランド,タンパ,ジャクソンビルへは車でわずか2時間で行けるため,フロリダ湾や大西洋の浜辺に加え,ディズニーワールドやシーワールドも,日帰りで楽しむことができます.(NASAもギリギリ日帰りで行けます.)

 

街の様子

 左の動画では街の様子が見て取れます.2007年版の都市評価順位で,ゲインズビル都市圏が全米で最も住みやすい所になったこともあります.日本人は少なく,200名程度だと思われます.そのほとんどがフロリダ大学の学生,研究者とその家族です.日本人学校はなく,子供たちは現地の学校に行きます.留学時,中学校で日本人は私の長女しかおらず,小学校では後で紹介する住んでいた集合住宅の日本人(次女と長男,他3家族の子供達5人)のみでした.
 ATMや案内板など含め,日本語を見ることは全くなく(他のアジアの国の言語はあります.ただ,学生がしているタトゥーやTシャツで日本語を見ることはあります.),日本食材を手に入れることも困難です.そのため,日本人のコミュニティーがあり,助け合って生活しています.私達も助けて頂き,これについては後述していきます.皆さんとても明るく,楽観的で,良い方達で,円滑かつ楽しく日常生活を過ごすことができました. 


フロリダ州

 州都はタラハシー(Tallahassee),人口最大の都市はジャクソンビル(Jacksonville),その他主な都市としてはマイアミ (Miami),タンパ(Tampa),オーランド(Orlando),キーウェスト(Key West),などがあり,マイアミ都市圏は人口500万人以上を抱える州内最大の都市圏になっています.ケネディ宇宙センター,スペースポート・フロリダ,ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート,ユニバーサル・オーランド・リゾート,シー・ワールド・オブ・フロリダなどがあることで有名で,アメリカでも有数の観光地として知られています.マイアミ近くの東海岸は大統領の別荘もあり,全米のリゾート地になっていますが,フロリダの方のリゾートはというと,東海岸のエバーグレイズ国立公園ちかくのネープルズ(Naples)だそうです.
 フロリダ半島はそれ自体が沼地のようで,地下にはとても澄んだ水が溜まっています.そのため,半島のほとんどが自然公園や自然で,あちこちにあるスプリング(spring)から,とても綺麗な水が湧いています.小さな起伏しかないフロリダ州は遠くまで見渡すことができ空も広く感じます.ちなみに,フロリダ半島の最高地点はのレイク郡にあるシュガーローフ山(Sugarloaf Mountain)の海抜は,95m(312 フィート)しかありません.


留学の経緯

お世話になるラボ

 学生時代に研究室に入り,与えられた研究テーマをするために,最初に読んだ論文が,「Accurate measurement of three-dimensional knee replacement kinematics using single-plane fluoroscopy」(LINK)「In vivo kinematics of cruciate-retaining and -substituting knee arthroplasties」(LINK)でした.とても影響を受けた論文で,当時は紙媒体しかなかったため,今でも宝物のように保存しています.博士論文を書くまでの7年間,著者のScott A Banks.の論文を読みまくり,自身の研究を完成させて行くと同時に,医工連携でいつも新しいことにチャレンジしているScottを尊敬していました.
 当時の研究内容は,人工関節が置換された膝関節の動態解析をするというもので,エンジニアであるScottは解析ソフトウェアの開発に従事し,私はそれを追いかける形でScottとは少し違うアルゴリズムのソフトウェアを開発していきました.ソフトウェアは完成し,今でもブラッシュアップすると同時に,医工連携研究で多くの研究を行えています.
 Scottは医工連携・バイオメカニクス分野の世界的権威で,絶えず世界中から研究者が訪問しています.Scottが開発した解析ソフトウェアを用いた研究をするため,特に医学系研究者が多いです.その中で,私達の研究グループの九州大学医学部の先生もScottの研究室に訪問しはじめ,これまで4名の先生が訪問しています.1人目のM先生は,「Scottの研究室に行くんですか?」と驚きました.この先生のおかげで,九州大学医学部とScottの関係が築かれました.2人目のS先生は,私と同世代の先生でとても仲良くして頂いていて,「Scottのところで研究できるなんて羨ましいです」と留学される前に伝えたのですが,まだまだ自分がいる世界からは程遠いなと感じていました.3人目のK先生は,帰国されてからも研究について直接話すことが多く,その中でScottの下での研究の素晴らしさを多く聞きました.私も留学することを勧められ,「私もScottの研究室に留学したい!」となり,現実味が出てきました.そして話はどんどん進み,Scottに連絡してくださいました.そして4人目のH先生(留学記,LINK)がちょうど留学中だったので,その先生からもScottに紹介して頂き,私の留学が決定しました.(その先生には留学手続きや生活面など,多くのことを助けて頂きました).それは夢のようでした. 



渡米準備

VISAの取得

 留学は全てが初めてな事で,1つ1つに時間が掛かかりますが,渡米前の一番大変だったことは,やはりVISAの取得でした.流れとしては以下の通りで,UFとのやり取りについては,当時留学されていた九州大学H先生に多くを助けて頂きました.福岡領事館でVISAを取得する方法については,動画で説明があったので,とても参考になりました.
【UFとのやり取り】

  1. Scottに留学期間とCV(履歴書)を連絡する.
  2. ScottからInvitation Letterを貰い,本学に提出する.
  3. UFからJ1(本人)とJ2(家族)のVISAを取得するための連絡が来る.留学のためのVISAを取得するためには,留学先がDS-2019という書類を発行しなくてはならず,そのための書類を用意をする必要があります.
  4. パスポートのコピー,学位取得証明書,生活費の事,保険の事,など必要な情報をUFに送る.
  5. UFから家族分のDS-2019が郵送で届く

【領事館でVISA取得】

  1. アメリカ領事館でVISAを発行してもらうための書類を用意する.福岡領事館は他の都道府県にある領事館とは流れが異なるため,注意する必要があります.DS160をWebで作成したり,戸籍謄本を自分で英訳したりと,書類を用意するのに時間が掛かりました
  2. 面接の予約をする.VISAを発行してもらうには必ず領事館で面接する必要があり,福岡領事館は面接日が少ないので,早めに予約しなければいけません.
  3. 面接時に必要な書類を持って面接に行く.
  4. 後日VISAが郵送される.
  5. 注:書類が完璧に揃っていて,Jビザのように相手先のDS-2019やInvitation Letterがある場合は,全く問題ないようで,面接は問題なくすぐに終わりました.もちろんアメリカの方が面接してくれましたが,日本語で面接してくれたり,「6ヵ月なんてなんて短いの!(英語)」と若干世間話にもなりました.

留学時の下戸研究室のメンバー

その他の準備

 今回の留学は6月末から12月末までという6ヵ月と少しの期間でした.1年間にすると,現在所属している研究室の学生が他の研究室に移らなければならなかったり,次に研究室に配属される学生にとって,下戸研究室が選択肢としてなくなったりします.これらについて困ると言ってくれた学生が多くいたことも大きな要因でした.それと,担当している講義についても,他の先生に負担にならないように,留学前と留学後にできるだけ多くの補講をすることができました.それにしても,それらを準備し遂行するのはとても大変でした.
 
 日本でする用意としては,他には以下のようなものがありました.

  1. 送金方法の確立.情報を集めると,アメリカに比較的簡単に送金ができる銀行口座を使ったり,FXを使ったりする方法がありますが,私達は誰もしていない方法にしました.日本の収入は福岡銀行に入金されるようにし,海外キャッシングサービス(LINK)を使って,現地で必要なときに必要な分をアメリカドルで引き出すことにしました.結果,現地の銀行に比較的多く行かなければなりませんが,現地の方とコミュニケーションが取れるチャンスですし,何より手数料やレートを他の方法よりも抑えられるのでよかったです.
  2. 保険の手続き.UFが推奨する現地のものや,UFが条件として提示している保証内容を最低限クリアしている格安のものもありますが,少し高くなってもいいので,トラブルがあったときに日本語で対応できる保険(AIG,LINK)にしました.
  3. 子供の接種済ワクチンの英文証明書.必要なワクチンを打っていないと,子供達は学校に入ることはできません.現地でも接種できますが,証明書がないとゼロから全てを打ち直すことになります.母子手帳も有効です.しかし,手帳は病名など専門用語が多く,もし英訳されてなければ現地で説明に時間が掛かるので,用意万全にする必要があります.エンジニアである私達には馴染みのない単語が多く大変でした.医学系研究者は負担ではなかったそうです.大人は原則不要ですが,風疹だけ妻と一緒に接種しておきました.
  4. 国際免許証の取得.フロリダでは,在住する場合は30日以内にフロリダ州の運転免許を取得しないといけません.取得するまでは国際免許証で車に乗ります.なお,車がないと絶対に生活できません.
  5. 航空券.6ヵ月という短期間だったので,帰りの便も取得できました.
  6. 住んでいるマンションのこと,電気水道ガスのこと,車のこと,郵便のこと,研究室のこと,などの対応を決める.

渡米前の出会い

Facebook(ゲインズビル日本人会)

 前述したように,Gainesvilleには日本人が少ないため,コミュニティーがありみんなが助け合って生活しています.九州大学H先生がFacebookのゲインズビル日本人会に紹介して頂けるということで,登録だけしてずっと使っていなかったFacebookを開いてみました.しかし,乗っ取られた後があり,知り合いやリンクなど読むことができない文字で一杯に.まずはそれを元通りにするところからはじまりました.時間をかけて元通りにし,無事Facebook上でゲインズビル日本人会の皆様に挨拶することができました.日本では,FacebookやTwitterの重要性を実感することはなかったのですが,重要な情報Toolとして使うようになりました.

帰国して確認すると自宅と車が写っていた

Gainesvilleでの住居について

 通常の流れだと,現地に着いたらホテルに宿泊しながら賃貸を探し,家具など生活に必要なものを揃えていくことになると思いますが,ここでも九州大学H先生に助けて頂きました.私達が現地に到着する前日に帰国される,奈良県立医科大学W先生を紹介して頂き,契約内容や家具等も全て引き継がせて頂けることになりました.Windmeadows Apartmentsというところですが,九州大学K先生が開拓された場所で,当時はリトル九州って言われていたそうです.その後多くの日本人ファミリーが利用されており,九州大学H先生もおられたということで安心でした.(同じラボの大阪市立大学I先生もおられました).しかし,日本にいながら奈良県立医科大学W先生から引き継ぐということで,少し大変なこともありました.必要な書類を用意するなどはVISA取得で慣れてきたのですが,サインする書類は「Notary」で提出することということに戸惑いました.大学の国際連携室のアメリカ人に「Notary」について聞くと,「公証人に見てもらえばいいんだよ」と助言を貰うも,公証人って何?となっていました.色々と調べていくと,福岡にも公証役場というところがあり,何かにサインをするとき(既にサインされているものは無効.公証人の前でサインをする必要があります),公証人に見てもらうことで,その書類は確かに本人がサインしたことになるということです.公証人の前でサインしたという証明書(英文もあり)を貰え,それと一緒に契約書を提出することで,日本にいながら契約することができました.奈良県立医科大学W先生にも大変お世話になりました(渡米した後も何回か連絡させて頂き,大変お世話になりました).妻同士も交流することになり,知り合えて本当によかったです.

フロリダでの自宅と車

車について

 広大な土地を移動するにも,荷物を運ぶにしても,必ず車が必要です.ただ,車検がないアメリカ社会では,全てが自己責任となり,半年間何事も問題なく過ごせる車と出会えるかどうか心配なところです(必須は保険だけなので,ドアがない車や,ベッコベコの車も走っています.).とても助けて頂いた九州大学H先生も,Interstate(日本でいう高速道路.州間をつないでいます)で止まり,助けを待ったということです.広大な土地を有しているためか,電灯はInterstate出入口やPA付近しかなく,夜は道路に埋め込まれている反射板を頼りに走ります(そして,Interstateにはトラブルで止まっている車をよく見かけます.).九州大学H先生は暗闇の中,携帯の光で助けを待っていたと聞いたときは衝撃的でした(九州大学H先生は笑いながら語ってくれましたが.).問題が起こったときに助けを求められるか?車のメンテナンスができるか?そして,問題なく車を購入できるか?など不安が多かったです.そんな中,とても頼もしい味方が「Popular Imports Auto Sales, LINK(ぜひHPをご覧ください)」ミドリさん(日本人)とご主人のオスカーです.恐らくゲインズビルに住んでいる日本人の方なら知らない人はいないと思われます.自動車車両販売もメンテナンスもしてくれて,日本語もOKです.私達も渡米前から車種,金額,保険のことをお伝えし,Gainesvilleに到着したときには,すでに用意をしてくださっていました.日本に輸送したくなるぐらい満足いく車両と走りで,半年間快適な生活を送るための必需品になりました.壊れることもなく,気になるところはすぐにメンテナンスしてくださいました.帰国する当日まで乗ることができ,本当に助かりました.帰国の際にはナンバープレートも頂きました.
 ミドリさんオスカーには他にも多くのことについて助けて頂きました.ミドリさんは「ゲインズビル文庫」の管理人をされており,大人向けの本はもちろん,子供の絵本,教科書や各種ドリルなど様々な分野の日本語の書籍を貸し出しをされています.私達も日本語の本を見たくなったときに何冊かお借りしました.他にもお子さんが私の長女と同じ中学校に通われていることから,色んな相談に乗って頂いたり,使われていない家具をお借りしたりと,今でも連絡を取らせて頂くぐらい,とても大きな存在です.
 
 

Scottと日本人ラボメンバー

Scottラボの日本人研究者

 Facebookのゲインズビル日本人会に,2018年6月に渡米することを含めて自己紹介したら,同じScottラボに行く予定の札幌医科大学S先生夫妻からすぐに連絡を頂きました.同じラボということで親近感も沸き,それぞれが持っている情報の交換をしました.といっても,私が6月に渡米することに対し,札幌医科大学S先生は3月渡米で準備はほとんど済んでいるということで,情報を貰うばかりでした.4月以降も,私達の出発日が近づくにつれ,比例して心配事が増えていくのですが,そのたびにすでに渡米された札幌医科大学S先生に相談にのって頂きました.もう1人,大阪市立大学I先生News,LINK)も同じScottラボで,九州大学H先生から紹介して頂き,私達の渡米前にメールで連絡を取ることができました.私がScottラボに留学する間の日本人研究者は,札幌医科大学S先生大阪市立大学I先生の3人で,Scottラボでの研究生活が,一層楽しく刺激的なものになる予感がしました.
 後述しますが,私達家族をゲインズビル空港で出迎えてくれたのが,札幌医科大学S先生夫妻と大阪市立大学I先生でした.そのときが初対面でしたが,フロリダスタイルな恰好で笑顔で出迎えて頂き,今でも鮮明に覚えています.

役立つサイト

 MY GAINESVILLE LIFE -ゲインズビルに住んでいる、ある日本人家族の備忘録

  • UFにこれから行かれるという方は必ず見ているだろうサイトです.私もかなりお世話になり,このサイトもかなり参考にさせてもらっています.