2月17日(金)、「主体的・対話的で深い学び」を実現するAL型授業のコツ~物理科目を例に~」をテーマに、第11回FD CaféをE棟R1教室にて開催いたしました。
*当日の配布資料および様子はこちらをご覧ください(FIT Replay 学内専用)
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今回のFD Caféでは、講師に、小林 昭文 氏(産業能率大学経営学部教授、元埼玉県立越ケ谷高等学校教諭)をお迎えし、教職員等45名(教員23名、職員20名、その他2名)が集まり、小林先生の高校物理での実践を例に、グループ演習をどう「主体的・対話的で深い学び」につなげるのかについて考え、今後の授業改善へのヒントを得る機会を持つことができました。
講演では、物理学の他、空手にも打ち込まれたご自身の大学時代のお話から始まり、「荒れる学校」で勤務される中で、「力ずくの生徒指導」から「ビジネス理論・カウンセリングを応用した生徒指導」で成功されたご経験、その後の異動先でキャリア教育担当を経て「アクションラーニング」に出会い、2007年に着任された越ケ谷高校でアクティブ・ラーニング(AL)型の新しい物理の授業に挑戦されるに至った経緯などについてご紹介がありました。
「AL」に関しては、2016年12月中央教育審議会(第109回)において示された2020年度から始まる予定の次期学習指導要領の最終答申について触れられ、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という「AL」の3つの視点について、また「対話」という用語の解釈(対話=1人ではたどり着けないアイデアや結論にたどり着くプロセス)について確認がありました。また「主体的、対話的で深い学び」への働きかけにおいて、「対話を促進する質問」が重要であり、この対話の促進が大学の学びを変えるのではないか、とのお話がありました。
続いて、実際に小林先生の授業で起きていた「主体的・対話的で深い学び」についてお話がありました。この中で、小林先生は物理の授業を「科学者になる」ために「科学的対話力」を高めるための時間と位置づけ、「態度目標(しゃべる、質問する、チームで協力する等)」や「内容目標(用語理解、イメージを描く)」という目標を提示し、①学習内容の説明(15分間:板書・ノートなし→時間の効率化)、②問題演習(35分間:質問・おしゃべり・立ち歩き自由、解答・解説も配布)、③振り返り(15分間:練習問題と全く同じ確認テスト、チーム協力による全員満点目標、相互採点、振り返りを生徒自身に向けさせる質問項目を配したリフレクション・カード記入)のプロセスで毎回の授業運営を行ったことについて説明がありました。また、机間巡視をしながら、「あと10分だけど順調ですか?」「チームで協力できていますか?」など、コンテンツではなくプロセスについての質問を投げかけるなど、チームでの対話を促す工夫について紹介がありました。
この授業運営方法により、生徒が分からないことを分からないと言う自己開示に躊躇しなくなることや、演習問題(=確認テスト)の難易度を出題順に上げることで、トップ層も他の生徒に「教える」中で学びが深まること、またチームでの話し合いも後半になるほど活性化する効果が生まれることなどについて説明がありました。成績においても、「センター物理Ⅰ」の平均点・偏差値が向上したことの紹介があり、成績向上がなければ授業改善ではない、とのコメントもありました。また、授業時間外においても、生徒がグループ学習の場として物理教室の開放を要望し、この自由なグループ学習のスタイルが授業外でも続けられ、さらには全教科にも広がりを見せたこと、このように生徒が主体的・対話的に学び続けたことから、物理授業が「対話的な学び」を引き起こし、「課題依存型」から「自己調整型」へと主体的な学習を深化させたとのお話がありました。
続いて、生徒の学びを阻害する授業者の活動例、生じる問題、解決策の案について紹介があり、授業者がグループワークを指示したにも関わらず、グループワークの最中に講義をしたり、質問に答えるなどの事例が取り上げられた他、宿題・課題の強化(「正の強化」)は勉強を促す効果があるものの、逆に宿題・課題がないと勉強をしないという「負の強化」が起きるとの学習理論も紹介され、これは日本の教育の問題点でもあるとの指摘がありました。また、「選択理論」、「アクションラーニング」、「サーバント・リーダーシップ」、「リアルタイムリフレクション」など、ヒントとなる理論についても紹介があり、小林先生が物理授業で実践されていた、プロセスを問うような対話を促進する質問が「リアルタイムリフレクション」と同じ効果を持っている点について説明がありました。
講演参加者は4~5名ごとにテーブルを囲んで着席し、講演内容について何度か、グループで話し合った後、全体での質疑応答の時間が設けられました。この中で、参加者より、小林先生の物理授業だけで本質的な学びが起こるのか、という質問があり、小林先生からは、「授業だけでは起きないが、腹八分目の授業が生徒を「もっと食べたい(勉強したい)」という気持ちにさせ、物理教室で見られたような「対話的な学び」を引き起こすきっかけとなる」との回答があった他、いくつも質問が寄せられ、一つ一つに教育現場での実体験に基づいた回答が行われました。またALに関するお話の中で、ALを続けるためには、ALの実践は授業者の仕事量を減らすものでなければならないこと、授業改善は仕事改善でなければならないことについて、何度か触れられる場面がありました。
最後に、松尾教務部長より、講演の中で印象に残った点についての感想と講演への謝辞が述べられ、予定時間いっぱいでの閉会となりました。