本研究室の目指すもの
2023-03-15
感覚情報処理や認知機構のメカニズムに迫る
本研究室では脳波や視線など生体情報計測を行っています。計測した情報により、様々な感覚や記憶・学習などのメカニズム解明を目指しています。
脳波・視線動態の計測
脳波は脳の中に流れる非常に微弱な電気信号です。わたしたちの脳はこの電気信号を介して様々な情報処理を行っています。
よく、「脳波を計測すれば何でもわかってしまうのでしょう?」と言われますが、単に脳波計測をしただけではほとんど何もわかりません。
計測の技術が低ければノイズばかりの信号になってしまいますし、闇雲に実験しても何を示しているかわからないデータしか残らないということもあります。
本研究室では、計測の技術から実験のデザイン、適切な解析方法や解釈まで、様々な技術を学ぶことができます。
本研究室で行う研究
この研究室は「ものをつくる」よりも「まだわからないことをさぐる」ことが好きなひとに向いています。
例えば「集中できる環境には何が必要なのだろう?」「においを嗅ぎながらものを見るとき、においが見た目にどんな影響を与えるだろう?」のような疑問を解明したい場合、いっしょにいろいろな研究ができると思います。新しいシステムやロボットの開発がやりたい学生さんには向いていないかもしれません。
基本的には脳波を計測しますが、視線計測を行っている学生もいます。脳波を処理するプログラムを勉強している学生もいます。
本研究室の研究テーマ・関連実績等
2024-06-17
研究テーマ:嗅覚が視覚情報処理や居心地に与える影響
本研究室ではにおいを嗅いだときに、注意や記憶等の認知機能がどのように影響されるかに注目しています。
また、香料が屋内快適性や屋内生産性等に与える影響についても検討しようとしています。
屋内快適性等は心理評価のみによって研究されることが多かったのですが、本研究室では脳波計測と心理計測の両方を導入し、客観性を高めた評価方法を検討しようとしています。
九州産業大学・香川教授らとともに、個室ワークスペースにおける香り提示の効果について、脳波解析から検討する試みも始めています。
においと色記憶の関連性については、田村(研究室教員)が柑橘系の皮に含まれるにおい(デカナール)を提示中に、オレンジ色短期記憶成績が下がることを示しました。
また、注意等に関連する事象関連電位脳波応答の振幅が下がっていることも確認されました。
その後継続的に他のにおいと色記憶に関連する研究を進めています(科研費・基盤研究C, 課題番号:23K11297, 2023年度〜)
さらに2024年度より株式会社リーモ・トロージェン様と共同研究を開始しています。提供いただいた精油を使用して、においから連想されるイメージの個人差等に関する実験を行っています。(未発表)
Tamura, K., & Okamoto, T. (2023). Odor descriptive ratings can predict some odor-color associations in different color features of hue or lightness. PeerJ, 11, e15251.
Tamura, K., Hamakawa, M., & Okamoto, T. (2018). Olfactory modulation of colour working memory: How does citrus-like smell influence the memory of orange colour? PLoS One, 13(9), e0203876.
山下圭太郎, 西村太貴, 森千晶, 田村かおり, "柑橘系のにおいが色の短期記憶に与える影響 -色輝度N-back課題による神経生理学的検討- ", 第25回日本感性工学会大会, 2023年11月22日
西村太貴, 山下圭太郎, 田村かおり, "におい連想色計測可能な色作成システムの開発", 第25回日本感性工学会大会, 2023年11月22日
木村 美羽, 香川 治美, 田村かおり, "居心地の総合評価に関する実験研究 ―香りがソロワークブースの居心地に与える影響―", 第18回日本感性工学会春季大会, 2023年3月7日
研究テーマ:ニューロフィードバック訓練法に関する基礎的検討
脳波を自律的に変調させ、望ましい状態を維持するよう訓練する手法として、「ニューロフィードバック訓練」があります。脳波計で現在の脳波状態をリアルタイムで、わかりやすく表示して、被験者自信が自分の状態を把握しながらよりよい状態を学習していくものです。非侵襲(外科手術が必要ない・脳に電気刺激や磁気刺激などを与えなくてすむ)ため、近年注目されています。一方で、ニューロフィードバック訓練法は機序が不明瞭な部分があり、手法を標準化する上での課題となっています。
本研究室では脳波を使ったニューロフィードバック訓練法について基礎的な検討を行い、よりよい訓練方法開発につなげることを目指しています。
研究テーマ:学習中の「難しさ」感覚を視線や脳波で予測する
電子教材学習中の脳波・視線応答を計測し、学習時の「難しさ」の推定と教材改善を試みています。最近は専ら視線計測で評価しています。これらの研究は、以下の学会発表やプロシーディングス等にて発表しています。
最近は遠隔授業・オンデマンド授業も増えてきました。同じオンデマンド授業視聴時や電子教材を視聴・閲覧する際に、成績上位・下位でどのように視線の向け方が異なるかを計測しています。データをもとに教材改善等に活用することが狙いです。
堀江 馨太, 立川 大暉, 田村 かおり. 語彙力や視線動向がオンデマンド授業理解度に与える影響の検討 情報処理学会第85回全国大会 2023年3月
Tamura K, Okamoto T, Oi M, et al. Pilot Study to Estimate “Difficult” Area in e-Learning Material by Physiological Measurements. In: Proceedings of the Sixth (2019) ACM Conference on Learning @ Scale – L@S ’19. New York, New York, USA: ACM Press; 2019:1-4. doi:10.1145/3330430.3333648