第10回FD Cafe「高大接続システム改革の行方~これからの大学での学びを考える~」を開催しました

第10回FD Cafe「高大接続システム改革の行方~これからの大学での学びを考える~」を開催しました

 12月2日(金)、「高大接続システム改革の行方~これからの大学での学びを考える~」をテーマに、E棟R1教室にて第10回FD Caféを開催いたしました。

*当日の配布資料および様子はこちらをご覧ください(FIT Replay 学内専用)

 今回のFD Caféでは、講師に、柴田洋三郎氏(福岡県立大学 学長、元 独立行政法人大学入試センター試験・研究統括官(副所長)、元 九州大学 副学長)と、中島由起子氏(学校法人 河合塾 教育研究部、福岡工業大学「大学教育再生加速プログラム」外部評価委員)のお二方をお迎えし、教職員33名(教員12名、職員20名、その他1名)が集まり、高大接続をふまえた入試改革の展望について理解を深めるとともに、学力3要素の育成に向けた授業実践(アクティブ・ラーニング)と学習評価に関し、目指すべき方向性について考える機会とすることができました。
下村学長から開会にあたっての挨拶があった後、まず、柴田氏より「高大接続システム改革の展望~入学者選抜改革を中心に~」をテーマにご講演頂きました。

 2016年3月に出された高大接続システム改革会議の「最終報告」では、高校教育、入試、大学教育を通じた学力の3要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」)を伸ばす仕組みの構築が提言されています。
 講演ではまず、進学希望者の能力・適性の判定の他に、各大学の教育水準や学生の質の評価指標、高校における学力の状況の把握、高校生の学習意欲の喚起など、あまりに多くの機能が集中し過ぎてきた日本の入試の現状などを背景に、学力の3要素を中核理念とする高大接続改革が提言された経緯について説明がありました。また高等学校教育改革・大学教育改革・大学入学者選抜改革からなる高大接続改革の全体スケジュールや、各改革の具体的方策について説明があり、さらに、学ぶ意欲と力を測る大学入試への転換に関して、記述式問題のたたき台などの資料を元に、具体的な実施イメージの紹介が行われました。最後に、入学者の質の確保と数の確保、公平性・公正性・透明性の担保、不本意入学への対策、社会変動への対応、統一試験システムの課題等、新たな入学者選抜システムの諸課題についても触れられました。
 

 続いて、中島氏より「学力3要素の育成とその評価~高大接続システム改革を踏まえて~」をテーマにご講演頂きました。講演ではまず、教育力とは「教員が何を教えたか」ではなく、「学生が何をできるようになったか」を指標とする、学習者中心の視点に立つものであることが確認されました。また、教育現場に社会で活躍するために必要な能力・スキルの育成を求める社会的要請が強まる中で、近年、小~大の公教育の各学校段階においてアクティブ・ラーニング(AL)の普及が急激に進み、特に高校において著しい傾向があること、大学・高校へのAL調査結果から見えてきたALの現状について、その手法や分類、調査を開始した2011年度からの変化、他大学の取組事例やAL科目とカリキュラムとの連関等について説明がありました。また高校のAL取組校については、科目別実施率は国語が高く、数学が低い傾向にあること、AL実施授業での活動や成果物に対する評価の成績への反映についてはばらつきが大きく、多面的評価が課題として明らかになったこと等について、説明がありました。最後に、高大接続改革における多面的評価について、大学入学者選抜は学力の3要素を多面的・総合的に評価するものへ変換が求められており、これを実現するために学習履歴を記録・活用できる基盤構築の必要性が述べられました。これに関し、高校側が学びのプロセスにおける成長・変容のエビデンスを大学側に示すことに対して不安を感じていること、この多面的・総合的評価は大学入学者選抜においてのみ求められているものではないこと、大学教育においても在学生を多面的・総合的評価を行うことが、各大学の求める能力・スキル・目標の明確化につながることについて、お話がありました。
 

 

 講演を受け、下村学長よりコメントと講演への謝辞が述べられた後、総括討論が行われ、「今回の大学入学者選抜改革で、何が変わろうとしているのか」という点について議論が行われました。この中で柴田氏より、高等学校基礎学力テスト(仮称)がうまく機能すると、高校における学力の底上げにつながること、入試に集中しすぎてきた機能の分散化が図られることが、期待できる変化として挙げられた他、大学教育においては入学者選抜よりも、むしろ入学した学生にどのような教育を行うかが重要であるとのお話がありました。
 

 続いて、福岡の高校におけるALの進展について、中島氏の事例紹介にあったような勢いが感じられない点について議論が行われました。この中で中島氏より、都道府県でみるとAL取組状況に凹凸があり、これは教育委員会の影響がその背景にあること、高校生が受けてきた教育や学びの経験には地域・高校・自治体による地域差が明るみになってきていることについて説明があり、地元エリアの高校・教育委員会の動きに注目することの重要性が述べられました。その他、高校の調査書改革について、生徒自身が作成する項目が盛り込まれる方向で進み始めていること、調査書と校務システムとの関係などが話題にあがった他、ALについて、その評価の難しさや、ALの効果の保護者への見せ方、その効果を見える化し、成果として示すための大学全体の組織的な取組の必要性などについて議論が行われました。
 

 最後に、松尾教務部長より、講演の中で印象に残った点についての感想と講演への謝辞が述べられ、予定時間いっぱいでの閉会となりました。

■次回FD Cafeのご案内■
テーマ:「主体的・対話的で深い学び」を実現するAL型授業のコツ~物理科目を例に~
日 時:2017年2月17日(金)15:00~17:30
講 師:小林 昭文 氏(産業能率大学経営学部教授、元埼玉県立越ケ谷高等学校教諭)
場 所:E棟3階 R1教室
備 考:詳細につきましては、別途ご案内いたします。

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