第15回FD Café「ルーブリックを活用した学修評価~主体性の育成に着目して~」を開催しました(10/12)

第15回FD Café「ルーブリックを活用した学修評価~主体性の育成に着目して~」を開催しました(10/12)

 平成30年10月12日(金)、芝浦工業大学教育イノベーション推進センターより榊原暢久教授を講師にお迎えし、「ルーブリックを活用した学修評価~主体性の育成に着目して~」をテーマに第15回FD Cafeを開催しました。
 高等教育においては、「何を教えたか」から「何を学んだか」というパラダイム転換の必要性が言われ、成績評価についても多様な評価基準を設定することが求められています。本学においても、ディプロマ・ポリシーに定める要素として能力・態度が含まれており、その育成を各授業科目が連携しつつ担っています。本プログラムでは、成績評価の目的・意義から出発して、特に能力・態度の評価に深く関わるルーブリック評価についての基本的な考え方を理解し、ルーブリック評価表作成の基本を身につけることを目的として開催され、会場となったE棟3階R1講義室には、28名の教職員(教員21名、職員7名)が集まりました。
 まず教育技術開発WG長の松尾敬二教授(FDer)より開会の挨拶があり、現在本学はアセスメント・ポリシーの策定に取り組んでおり、DPの中で評価をすることが難しいいくつかの項目について、評価の基準の一つとなるルーブリックを取り上げたテーマであり、我々の取り組んでいる内容に非常に近く、有効な研修であるとのお話がありました。
 

松尾敬二 教育技術開発WG長

 続いて榊原教授による「ルーブリック評価入門WS」へと移り、「今日のWSで持ち返りたいこと」をペアで1分間共有するアイスブレイクが行われた後、WSの3つの目標(①到達目標に基づく成績評価の基本について説明できる、②ルーブリック評価の意義と利点について説明できる、③ルーブリック評価表の素案を自ら作成できる)の説明がありました。
 次にルーブリック評価の基本事項についてお話があり、学生が何を学習/学修するのかを示す観点と、学生が到達しているレベルを示す具体的な基準を示した「評価指標」であること、縦軸に複数の評価項目(観点)を、横軸にそれぞれの段階における典型的な状態を説明する記述(基準)をとるものであること、ルーブリック評価の背景には、明確かつ公平な評価基準およびテストだけではない評価方法の必要性が中教審の答申で示され、平成 26年度からAP「テーマI(アクティブ・ラーニング)」、「テーマII(学修成果の可視化)」等の取組が開始されてきたこと等の説明がありました。また、そもそもルーブリックで何を評価するのかについて、各科目は学科の学位授与方針に、次に学部の学位授与方針に、さらに大学全体の教育理念・目標に、そして建学の精神に紐づき、到達目標や授業はこの逆向き設計が重要であること、そして各科目の評価を行う際の1つの判断基準は、建学の精神とDPにあるとのお話があり、また汎用的能力はALとの親和性が高く、汎用的能力の育成にはALが不可欠であり、その評価にはルーブリックが必要とのお話がありました。
 

芝浦工業大学教育イノベーション推進センター 榊原暢久 教授

 また「学修成果(competence) 」 と「学習成果(learning outcomes)」の2つの違いについて、「学修成果」は学位プログラム(教育課程全体)を履修した総合的な成果として、学生が獲得することが期待されている知識・能力を抽象的に記述したものであり、直接測定することは想定されていないこと、一方で「学習成果」は学生が授業科目を履修した結果として修得することが期待されている具体的な知識や能力で、単位認定の根拠として、所定の学習期間内に達成可能であり、測定可能でなければならないものであるとの説明がありました。そしてルーブリックも、JABEE認定基準の知識・能力項目(a)~(i)を縦軸の評価観点とするような学修成果の評価を行うためのもの(汎用的ルーブリック、カリキュラムルーブリック、科目ルーブリック等)と、今回資料として配布されたような1回のレポート課題についての学習成果の評価を行うためのもの(課題ルーブリック)の2つに分けられることの説明があり、本WSの3つ目の目標「ルーブリック評価表の素案を自ら作成できる」では、課題ルーブリックに取り組むことし、実際に参加者が担当科目の課題ルーブリックを作成するワークに移りました。

 

 作成にあたり、評価観点の設定は、(想定した)科目の到達目標、その下位目標を踏まえて設定すること、その課題での学びで想定している項目を分かりやすく、もれなく配置すること、各項目の比重(配点)を決めることにより、観点を明確化して学習内容を焦点化するようにとのお話がありました。また評価基準の設定は、達成度のレベル(3~5段階)ごとに、説明は長すぎず現実的かつ、学習内容に対して適切に、具体的なレベルの違いを示すことにより、学生と教員にとって到達度を示す指標になり、次に学習すべきことの指針になるとのお話がありました。またワークの作業時間が終了すると、各自設定した観点と基準を他の参加者とペアを組んで共有し、良いと思ったことや疑問に思った点を伝え合うなどすることで、ペアで話したことをもとに設定内容を改訂したり、色々なアイデアを持ち返ってルーブリックをさらに発展させる時間が設けられました。
 

 ワーク後、ルーブリックの利点として、学生の評価に関する行動指針が明確になること、学生が自らの学習活動を評価できること、結果だけでなく、プロセスも評価できること、評価のぶれが少なく採点時間が短縮できる一方で、詳細なフィードバックが可能になること、採点に係る教員のストレスの軽減につながるなどが確認されました。最後に、ルーブリックバンクの紹介があり、ルーブリックを初めて導入するにあたっては、まずはこうしたフォーマットをカスタマイズして使ってみるのが取り掛かりとして良いとのアドバイスがありました。WSを通じ、ルーブリック評価の背景と評価に関わる要点、ルーブリックの基本事項、実際の作成手順と観点・基準設定時のポイント、ルーブリック評価の利点について学び、またワークで実際にルーブリックを作成することで、参加者の担当科目でのルーブリック導入・活用に向けて弾みとなる研修となりました。
 

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