第16回FD Café「成績評価の妥当性と信頼性の向上 ~組織的な評価体制の構築に向けて~」を開催しました (12/17)

第16回FD Café「成績評価の妥当性と信頼性の向上 ~組織的な評価体制の構築に向けて~」を開催しました (12/17)

 平成30年12月17日(月)、比較教育学・高等教育論を専門分野とされる筑波大学教育研究センター准教授の田中正弘先生を講師にお迎えし、「成績評価の妥当性と信頼性の向上 ~組織的な評価体制の構築に向けて~」をテーマに第16回FD Cafeを開催しました。
 今回は教育の質保証の基本となる成績評価について、その評価の妥当性と信頼性の向上に何が必要かを知り、本学における組織的な評価体制の在り方について考える機会とすることを目的とし、会場となったE棟3階R1講義室には、28名の教職員(教員17名、職員11名)が集まりました。
開会にあたり、下村輝夫学長から、本日の講演はステークホルダーの最たる学生と保護者にとって最も興味のある成績評価の客観性と厳格化についてのお話であり、本学における今後の取組に活かしたいとのお話がありました。
 

開会の様子

 続いて田中先生より、「成績評価の客観性および厳格化について~ガイドラインとアセスメント・ポリシーの策定~」をテーマに講演が行われました。まず本講演の目的として、日本では成績評価は大学教員の裁量にほぼ全て委ねられているため、評価基準が不統一、かつ曖昧であることが多く、よって学生の「学習到達度」(学士力)を適切に評価できず、社会の信頼を失いかねない状況にあること、そこで成績評価の妥当性と信頼性の向上のために「ガイドライン」に沿った組織的な評価の構築および実施の徹底を提案したいとのお話がありました。また、成績評価に関する多くの大学の共通課題として、成績評価の結果にバラツキがあることが挙げられ、中央教育審議会答申(2008.12.24)では具体的な改善方策として成績評価基準の策定、成績評価の結果についての組織的な事後チェックの実施、学内教員以外の第三者の参画を求める仕組みの検討が明示されたことの説明がありました。また、改善のスリーステップとして、①成績評価基準を評価の「ガイドライン」として策定し、全教員で共有すること、②組織的な事後チェックとして、同僚評価を中核とする点検制度(全学的なアセスメント・ポリシー)を策定すること、③他大学教員等の第三者の参画が挙げられました。

筑波大学 田中先生

 続いてスリーステップの①成績評価ガイドラインについて、他大学のガイドラインの概要の紹介があり、最上位グレードの評価対象者割合の上限設定や、評価の極端な偏りの点検基準としてGPA平均値との差分を目安とする方法など、相対評価の要素が取り込まれた事例等の説明がありました。またスリーステップの②アセスメント・ポリシーについて、文科省の「用語集」(2012)においては「学生の学修成果の評価(アセスメント)について、その目的、達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針」と定義されているが、科目の学修成果(成績)の評価とする解釈と、学位プログラム全体における学修成果(学士力)の評価とする解釈との二つに分かれていること、ただし、両方の実施が望ましいとのお話がありました。また、他大学のアセスメント・ポリシーの紹介があり、「機関(大学全体)レベル」、「教育課程(プログラム)レベル」、「科目(授業)レベル」の3段階で、また対象者を「入学生」、「在学生」、「卒業生」に区分する事例の紹介があった他、岩手医科大学のアセスメント・ポリシーに、評価方法の選定と合格基準の設定にあたり「その妥当性、客観性ならびに実現可能性を考慮し」との記載があることの紹介があり、「正解」がない困難な作業ではあるが、教員間で「妥当性」のあるレベルを探し、共有するということの重要性、また自学の学生の学力を把握した上で、授業の到達目標に達成できるかという実現可能性を意識して授業設計を行うことの重要性についてお話がありました。

 また、文科省はDP、CP、APの作成を義務化する一方で、アセスメント・ポリシーは努力目標としてきたが、私学助成金の配分項目に追加された動きにも見られたように、いずれ義務化されることは容易に想像できるとのお話がありました。
 また、厳格な成績評価を実施するにあたり、到達度評価を行うための「授業の目的(GIO)」と「達成目標(SBOs)」の設定方法や、科目の難易度(SBOs)を学生に知らせるツールとしての科目ナンバリングの紹介、点検のための評価として「プログラムレビュー」(機関レベルで5~7年ごとに実施)および「モニタリング」(プログラム・科目レベルで毎年実施)の説明がありました。
 続いて、本学のガイドラインとアセスメント・ポリシーに触れられ、ガイドラインにおける「主体性ルーブリック」について、主体性の評価にしっかりと取組む大学は珍しく、このチャレンジを支持したいというコメントの他、ルーブリック以外での評価方法も模索しても良いとのアドバイスがありました。またアセスメント・ポリシーについて、「機関(大学全体)レベル」、「教育課程(プログラム)レベル」、「科目(授業)レベル」という他大学の事例にも多い3段階に、本学は「学生」レベルが設けられている点について、独自性が高く、ぜひ他大学にも広めて欲しいというコメントがありました。また、学科単位で設置される授業科目レベルの評価組織について、形式的にならないよう、その構成員を学科所属教員に限らず、他学部他学科に所属する教員、学問分野を同じくする他大学の教員、学科に所属する学生、学科の卒業生を多く受け入れる企業関係者(ステークホルダー)など、第三者の参画について提案がありました。
 続いて行われた質疑応答の中では、到達目標を設定するにあたり共通認識を持つという考え方について、科目ナンバリングに関して他学科間で同一名称科目がある場合の識別方法について、授業科目レベルの評価に公正性を持たせるための組織づくりのポイントについてお話がありました。また、主体性の評価方法について、ポートフォリオ以外にどのようなアプローチがあるのかという質問があり、主体性をはかるのは非常に難しく研究対象の一つであること、今までに経験がない評価対象となるので、今はっきりとした答えを示すことはできないこと、今後は本学の成績評価ガイドラインで示された主体性ルーブリックについても試行錯誤を重ね、改善していくのがよいとのお話がありました。また、絶対にやってはいけないのは、主体性が到達目標の中に記されているにも関わらず、それについて何の評価もしないということであり、何とか皆さんでやっていかないといけないとのお話がありました。
 

 最後に、教育技術開発WG長の松尾敬二教授(FDer)より挨拶があり、成績評価に対する課題意識は他大学と同じであると感じたこと、本学のガイドラインとアセスメント・ポリシーについて多くのコメントや課題について指摘頂き、まずアセスメント・ポリシーを形作っていく段階にある本学にとって大きな支援になったとの謝辞が述べられ、閉会となりました。

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