育児休業のためのメモ

はじめに

 私が男性研究者として育児休業を取得したときの勤務調整等のメモです.これから育児休業の取得を考えている方のご参考になれば幸いです.質問などあればぜひご連絡ください.
 なお,よく混同される「育児休業」と「育児休暇」の違いについては各々お調べいただければと思いますが,休業は法律で定められた育児のために労働しない制度で,休暇は有給休暇・特別休暇などと同様に,休みを取ることだけを指すと認識しています.

育休時の基本データ

出生前準備期間

妊娠16週目(安定期,5ヶ月前):所属学科長へ育児休業の相談

妊娠20週目(4か月前):所属学科の同僚へ通知

妊娠28週目(2か月前):時間割変更・校務分担の計画

※学年単位で受講者が決まる高専だからできる授業配置かもしれません.

妊娠34週目(臨月):事務書類の手続き

出生:休業直前準備

出生1週間後:役所手続きなど

各種の提出書類にはそれぞれ添付が必要な書類があり,それぞれ発行のタイミングが違います.段取り良く手続きを済ませないと,必要なものが揃わなくなります. 例えば,健康保険証がないと医療費助成制度の申請ができません.そうすると一ヶ月健診のときに保険適用の医療処置が発生した場合に全額負担となってしまいます(事後の助成申請も可能な場合がありますが).したがって,各申請書類の提出手順は次のようになると思います.(自治体,職場によって異なる可能性がありますので,確認をしてください.)

(母子手帳) 育児休業
申出書
出生届 児童手当
認定
育児休業
期間掛金
免除申出書
出産費・
家族出産費
附加金
請求書
被扶養者
申告書
子供の医療費
助成申請書
出生前 提出
出生の日
数日〜1週間以内 退院
医療費明細書
母子手帳
 


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==提出==

出生証明

 
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==提出
 
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===提出
==提出
 
数日後
   住民票==

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==提出
1週間程度後
健康保険証

===提出

大学・高専の教員が育児休業を取得しようとする場合,取得できる期間はおおよそ以下に分類されると考えられます.

  1. 数日〜2週間
  2. 1〜2ヶ月
  3. 4〜6ヶ月
  4. 7ヶ月〜1年
 1のパターンは有給休暇を消化することでも対応できます.また,講義なども1,2回程度の休講で済むので,通常の出張などと同様に補講をすればカバーできます.
 2のパターンは私が取得したケースで,有給休暇では足りないので休業することになります.この長さはセメスター制(二期制)の半分またはクォーター制の一期分に相当します.セメスターの場合には残り半分の期間で休業期間中の講義を済ませてしまえばよいので,例年の割り当てがあっても大丈夫だと思います.
 3のパターンはセメスターの半期分なので,この期間に開講する科目はすべてはずしてもらわなければなりません.そうなると非常勤講師の代替も必要になるので,相当の準備が必要と思われます.校務についても不在期間が長いので,いろいろな考慮が必要でしょう.
 4のパターンは女性ではよくあるケースですが,年間の講義・校務を外してもらい,必要に応じて非常勤教員や短期契約の常勤教員を雇用する必要が出てきます.また,卒業研究の指導も実質不可能なので,研究室運営を検討する必要が出てきます.特に,科研費などの外部研究費を執行している場合には,研究期間の中断手続きなどが必要となります(参考:育児休業等取得に伴う手続についての質問).
 私の場合,取得期間については出産後の女性の体力の低下,約8週間の産褥期を考慮して最低1ヵ月としました.

FAQ

Q. どうして育児休業を取得しようと思った?

A.

Q. 男性が育休を取得することについての職場の理解は?

A. 必ずしも全員が賛成して温かい目で見てくれるとは限らないのが事実です.なぜなら育児休業中の人的補償は(長期でない限り)基本的にはないため,単純に休業中の業務が他の教職員に割り振られることになります.人件費の縮減による人員の減少,業務の多忙化による余裕がないことも一因と考えます.
一方で全面的にバックアップしてくれる方もいますし,休業中の分を別の機会にカバーするなど,協力的な方も少なくないので育児休業の取得を決められました.ただし,少なくとも現状では「女性は仕方ないとしても男性が取得することは想定していない」と考えられる人的配置・業務体系は事実,存在することには留意して,今後の変革を求めたいところです.

Q. 研究者が育休を取得することについてはどう考える?

A. ケースバイケースですが,ある程度の裁量労働が認められていて,テレワークなどをしやすい研究者は育児休業を取得しやすいのではと考えます.もちろん実験などラボでないとできないことは少なくないですが,論文を読む・書く,シミュレーション・計算をする,思考実験をするなど研究活動ができないことはないので,育児の合間に時間を見つけて取り組むのがよいと思います(この文章も子供が寝ている隙に書いています).あと,校務や授業から解放されるので制約なく自由に過ごせるのがいい.ある種のサバティカルとして捉えて,取得を考えてもよいのではないでしょうか.

Q. 休業中は仕事をしないで育児に専念した?

A. メールは山のように降ってきますし,学会の仕事は中断なく進みますし,学生の研究の進捗を確認したりと,いろいろな仕事はしていました.研究活動としては国際会議論文を2本書きました.集中した時間を確保できた成果といえます(ただし採択されたとは言っていない).

Q. 育休取ってまで育児に貢献できたことはある?

A. どちらかというと育児に貢献するというよりは,パートナーが育児に専念できる環境を作るほうが,父親のなす役割は大きいと思います.男性は母乳も出ないし,母親の抱っこでないと泣きやまないこともあって心が折れそうなことが多々あります.しかし,体力の弱って外出もできないパートナーに代わって家事をしたり買い物をしたり,2人以上いないと安心してできない沐浴を率先してしたり,できることはたくさんあります.自分一人で赤ちゃんの面倒も含めたこれを全部やるのが無理だと思ったら,パートナーも無理なので必然的に手伝う気持ちになるでしょう?

Q. もっと長い期間取ろうとは思わなかった?

A. 前述のとおり大学・高専教員,研究者が取得できる期間はおおよそ決まってくると思います.また,休業期間中は保険から支給があるとはいえ収入が減少します.ある程度の貯蓄と収入があれば問題ないでしょうが,育児にかかる支出分は稼がないといけないので両親とも長期間の育児休業を取るというのは現実的ではないと考えます.男性が取るか女性が取るかはそれぞれの収入や体調によって異なるでしょう.

Q. 育児休業の取得を勧める?

A. 取得することに大きなデメリットはほとんどなく,メリットが大きいと思うので勧めます.ただ,これも個人の都合があるので一概には言えませんが.休業してみて思うことは,その個人がその時に求められる業務というのはたいして多くないということです(代理がきく,時季変更がきく,テレワークで対応できる).両親が共働きであるか,すぐに頼れる実家は近郊かどうか,里帰り出産かどうかなど状況によって判断は異なることは承知の上で,可能であればぜひ取得する方が増えればいいとは思っています.