育児休業のためのメモ
はじめに
私が男性研究者として育児休業を取得したときの勤務調整等のメモです.これから育児休業の取得を考えている方のご参考になれば幸いです.質問などあればぜひご連絡ください.なお,よく混同される「育児休業」と「育児休暇」の違いについては各々お調べいただければと思いますが,休業は法律で定められた育児のために労働しない制度で,休暇は有給休暇・特別休暇などと同様に,休みを取ることだけを指すと認識しています.
育休時の基本データ
- 年齢:30代前半
- 勤務先:国立高等専門学校
- 業務:研究,授業,その他の校務
- 育休取得のタイミング:新年度開始数カ月後から
- 休業期間:1.5ヶ月
出生前準備期間
妊娠16週目(安定期,5ヶ月前):所属学科長へ育児休業の相談
- 授業担当の考慮,調整(時間割作成前)
- 開講期間の変更
- 類似科目間で担当者入れ替え
- 校務(学内委員会等)の変更,サブ担当の要請
- 運営委員会への通知
- 講義の進行に問題はないか
- 卒業研究の指導に配慮できているか
- 他学科長へ通知
妊娠20週目(4か月前):所属学科の同僚へ通知
- 担当科目の決定.後期へ変更可能な分は考慮してもらう.
- 校務分担の決定.サブ担当を据え,休業中の代理を依頼.
- 就業規則を確認して,取得可能な休暇(出産前後など),育児休業に関わる決まり事を確認.
- 教職員の労働時間,休暇等に関わる規則:特別休暇
- 生後1年に達しない子を育てる教職員は1日2回それぞれ30分以内
- 教職員の配偶者の出産に伴い,入院から産後2週間の間の2日以内
- 教職員の配偶者が出産する場合であって,当該出産に係る 子又は小学校就学の始期に達するまでの子の養育のために,出産予定日より6週間前から出産の日後8週間の間の5日以内.
- 教職員の労働時間,休暇等に関わる細則
- 育児休業等に関わる規則
妊娠28週目(2か月前):時間割変更・校務分担の計画
- 時間割,学年暦が確定したことを受けて,休業中の授業・校務代理の計画を立てる
- 基本方針
- 補講のできる空き時間があれば,休業外の期間に開講する.
- 別の開講科目との授業変更で休業外に開講する.
妊娠34週目(臨月):事務書類の手続き
- 育児休業申出書:原則,休業取得予定の1か月前までに提出.出産前は出産予定日で可.
- 所定外労働免除願:3歳未満の子を養育する教職員が所定労働時間外および休日の労働(宿日直含む)を免除される.
出生:休業直前準備
- 当日は休暇.翌日から退院まで休暇を使いながら時短勤務.各所へ報告,事務手続き,引き継ぎなどに従事.
出生1週間後:役所手続きなど
- 役所へ提出
- 出生届(出生の日から14日以内):産院の出生証明の記載が必要.親の本籍情報も.
- 児童手当認定:受給者(親)の銀行口座情報が必要.
- 子供の医療費助成申請:本人の健康保険証が必要.
- 職場へ提出
- 育児休業期間掛金免除申出書:母子手帳の写しが必要.
- 出産費・家族出産費附加金請求書:出産費用が42万円を下回った差額と,出産手当金の請求(※産院の領収書が必要).
- 被扶養者申告書:健康保険証の発行に必要(※住民票の原本が必要).
- 扶養親族届:扶養手当の受給に必要.
各種の提出書類にはそれぞれ添付が必要な書類があり,それぞれ発行のタイミングが違います.段取り良く手続きを済ませないと,必要なものが揃わなくなります. 例えば,健康保険証がないと医療費助成制度の申請ができません.そうすると一ヶ月健診のときに保険適用の医療処置が発生した場合に全額負担となってしまいます(事後の助成申請も可能な場合がありますが).したがって,各申請書類の提出手順は次のようになると思います.(自治体,職場によって異なる可能性がありますので,確認をしてください.)
(母子手帳) | 育児休業 申出書 |
出生届 | 児童手当 認定 |
育児休業 期間掛金 免除申出書 |
出産費・ 家族出産費 附加金 請求書 |
被扶養者 申告書 |
子供の医療費 助成申請書 | |
出生前 | レ | 提出 | ||||||
出生の日 | レ | |||||||
数日〜1週間以内 | 退院 医療費明細書 母子手帳 |
======= ======= |
======= ==提出== レ 出生証明 |
======= ==提出 ======= |
========= ===提出 |
==提出 |
||
数日後 | レ 住民票== |
======= |
========= |
======== |
==提出 |
|||
1週間程度後 | レ 健康保険証 |
===提出 |
大学・高専の教員が育児休業を取得しようとする場合,取得できる期間はおおよそ以下に分類されると考えられます.
- 数日〜2週間
- 1〜2ヶ月
- 4〜6ヶ月
- 7ヶ月〜1年
2のパターンは私が取得したケースで,有給休暇では足りないので休業することになります.この長さはセメスター制(二期制)の半分またはクォーター制の一期分に相当します.セメスターの場合には残り半分の期間で休業期間中の講義を済ませてしまえばよいので,例年の割り当てがあっても大丈夫だと思います.
3のパターンはセメスターの半期分なので,この期間に開講する科目はすべてはずしてもらわなければなりません.そうなると非常勤講師の代替も必要になるので,相当の準備が必要と思われます.校務についても不在期間が長いので,いろいろな考慮が必要でしょう.
4のパターンは女性ではよくあるケースですが,年間の講義・校務を外してもらい,必要に応じて非常勤教員や短期契約の常勤教員を雇用する必要が出てきます.また,卒業研究の指導も実質不可能なので,研究室運営を検討する必要が出てきます.特に,科研費などの外部研究費を執行している場合には,研究期間の中断手続きなどが必要となります(参考:育児休業等取得に伴う手続についての質問).
私の場合,取得期間については出産後の女性の体力の低下,約8週間の産褥期を考慮して最低1ヵ月としました.
FAQ
Q. どうして育児休業を取得しようと思った?
A.- 里帰り出産ではなく,ほかにサポートできる人がいないから.
- この制度を利用できるのは人生の中で数回あるかないかの貴重な機会だから.
- 出生からの1ヶ月の子供の成長を見たいから.
- まだまだ少ない事例であり,おもしろそうだったから.
- 取得することの大きなデメリットはないと考えたから,など.
働かなくても給与の3分の2くらいが保険で支給されるから.
Q. 男性が育休を取得することについての職場の理解は?
A. 必ずしも全員が賛成して温かい目で見てくれるとは限らないのが事実です.なぜなら育児休業中の人的補償は(長期でない限り)基本的にはないため,単純に休業中の業務が他の教職員に割り振られることになります.人件費の縮減による人員の減少,業務の多忙化による余裕がないことも一因と考えます.一方で全面的にバックアップしてくれる方もいますし,休業中の分を別の機会にカバーするなど,協力的な方も少なくないので育児休業の取得を決められました.ただし,少なくとも現状では「女性は仕方ないとしても男性が取得することは想定していない」と考えられる人的配置・業務体系は事実,存在することには留意して,今後の変革を求めたいところです.