感性を使ってデザイン ~対話型進化計算~

世の中には,ホームページや衣服,インテリアや車など,実に様々なものがデザイナーさんの手によって"デザイン"され,多種多様の製品があふれています. デザイナーさんは,デザインの方法やツール,配色など様々な知識/技術を駆使して,ものをデザインしますが,一般のユーザさんは誰でもこのような知識を持ち合わせているわけではありません.

しかし,一般のユーザさんも「何かをデザインしたい」という欲求に駆られることが少なからずあると思います. このようなときに,専門的なデザイン知識を持っていなくても,人とコンピュータのインタラクションによって様々なもののデザインを支援する技術があります. これが"対話型進化計算"という技術です.

それでは,対話型進化計算の仕組みについて簡単に見ていきましょう.



対話型進化計算の流れ

例えば,シャツ・インナー・ボトムス・ソックスをコーディネートする場合を想定します.まず,コンピュータがいくつかのコーディネート案をユーザさんに提示します.

次に,ユーザさんは自分の感性や好みに基づいて「この組合せが好き!」「こっちのコーディネートはイマイチ…」というように提示されたコーディネート案を評価します.

そして,ユーザさんの評価情報をコンピュータにフィードバックし,コンピュータは"進化計算"という技術を用いてユーザさんの評価に基づいて新しいコーディネート案を作成し,再び提示します. これらの手順を繰り返し,そのユーザさんの感性に合ったものを生成していきます.

好きか嫌いかを選ぶだけ!


近年の製品開発分野などでは,ユーザの感性に合った商品開発が重要になっており,対話型進化計算システムの応用が期待されていますが,ユーザの評価負担が大きいということが問題となっています.

私たちは,ユーザの評価負担軽減に対して,"評価をシンプルに"という観点より,評価インタフェースの改良に関する研究を進めてきました. これまでに,ユーザがコンピュータから提示された2つのデザイン案についてどちらが好みかを"トーナメント形式"で答える方法や,複数のデザイン案の中から好みのものを選択する"対話型タブーサーチ"を提案しています.


トーナメント形式


対話型タブーサーチ

これらのプロトタイプシステムを提案する中で,近年ではスマホが普及し,タブレット端末も一般的に利用されるようになってきました. このような流行に乗っかって,私たちも,Androidアプリベースで腕時計をデザインする対話型進化計算システムを実現しています.
詳しくはこちら → お化粧レディースウォッチデザインメンズウォッチデザイン

他にも,1人のユーザの感性情報だけでなく,多くのユーザの感性情報を投票として獲得する対話型進化計算システム,ユーザの視線情報を用いた対話型進化計算システムなどについても研究しています.
詳しくはこちら → 投票型協調デザイン視線情報を用いたシステム

また,誰でも対話型進化計算システムを体験できる ぬりえシステム も公開しています.

代表的な研究業績
【招待解説】竹之内 宏, “ユーザの感性情報を用いた動的なコンピュータシステム”, 情報処理,Vol.62,No.5,pp.d45-d69,2021-04.
【学術論文】Hiroshi Takenouchi, Masataka Tokumaru, Noriaki Muranaka, "Interactive Evolutionary Computation Using a Tabu Search Algorithm", IEICE Transactions on Information and System, Vol.E96-D, No.3, pp.673-680, 2013-03.