投票で作ろう みんなのデザイン

対話型進化計算システムでは,コンピュータがユーザの感性にマッチしたものをデザインするということを説明しました. しかし,通常の対話型進化計算では,1人のユーザの感性しか利用できません. 一般に,製品開発では,1人のユーザの感性にカスタマイズした製品を作ることも重要ですが,数百人程度の多数のユーザの感性を分析して,製品開発に活かせる知識を抽出することもまた重要です. 私たちは,対話型進化計算に"多人数の投票形式によるデザイン評価"を取り入れるという新しいシステムについて研究しています.

現在のインターネットでは,Google や Facebook,Twitter など多くのWebサイトで,Webサイトを閲覧したユーザが掲載された記事に対して,共感の有無に関する投票ができるシステムが普及しています. この研究では,このようなシステムにおいて多くのユーザの感性を投票により獲得し,対話型進化計算のデザイン評価に用いることを想定したシステムを提案しています.

私たちがこれまでに提案してきた手法に「一対比較投票方式」という手法があります. この手法では,多くのユーザがインターネットを介して,提示された2つのデザイン案のうちから好みの方を選ぶというインタフェースを採用しています.


一対比較投票方式のインタフェース(評価したい対戦を選ぶ)



どちらのデザインに投票するか決める

このシステムでは,ある観光地の看板をその地域住民の方々が投票形式でもってデザインしようとしています. 観光地の看板となると,旅行者の目に付くようなデザインも重要ですが,地域の人々の意見も取り入れることも大切です. このような場合に投票形式でデザインを最適化できるシステムがあれば,対話型進化計算システムをより有効に利用できる可能性があります.

これまで,プロトタイプシステムを用いた基礎実験により,一対比較投票方式のある程度の有効性が示されています. 過去には,一対比較投票方式と同様に,一対比較評価をトーナメント形式で実施する「複数ユーザ参加型トーナメント方式」という手法についても,数値シミュレーションや実ユーザを対象とした実験で種々の有効性を検証してきました. 現在は,100人程度が投票に参加する大規模な評価実験や実環境向けの評価方法の発案などにチャレンジしています.

代表的な研究業績
【学術論文】坂井 将之,竹之内 宏,徳丸 正孝, “デジタルサイネージを用いた複数のユーザの投票によるデザイン生成支援システム”, 日本感性工学会論文誌,Vol.15,No.4,pp.503-511,2016-08.
【国際会議】Hiroshi Takenouchi, Hiroyuki Inoue, Masataka Tokumaru, "Signboard Design System with Votes by Many People", 2014 IEEE Symposium Series on Computational Intelligence (SSCI 2014), ISIC2014 proceedings, pp.14-19, 2014-12 (Orlando, Florida, USA).

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