あなたのコンシェルジュ ~感性検索エージェント~

何か欲しいものがあるとき,お店やカタログで欲しいものを探すことがあると思いますが,数件のお店を尋ねたり,数百ページのカタログを閲覧して商品を探したりすることは大変です. 現代にはインターネットという便利なものがあり,欲しいものを瞬時に検索し,購入することができます.検索のときには,例えば「バッグ」や「Tシャツ」のように"キーワード"を入力しますが,ここで少し問題があります.
「バッグ」といっても多種多様で,リュックサックやトートバッグ,ハンドバッグなどいろいろな種類があり,デザインも様々です. リュックサックやトートバッグなどのように「言葉で表現できるもの」ならば,キーワードである程度絞り込みはできますが,デザインになると言葉での表現が難しくなります. 「かっこいいバッグ」や「かわいいかばん」のように何とか言葉で表現できても,「私はかっこいいと思っても,他の人はあまりそう思わない」というように,個人差があります.

そもそも,人の感性は十人十色です.現代の検索システムは,人の感性を充分に理解して検索結果を表示しているわけではないのです.

私たちは,このような検索システムに対して,人の感性を理解した検索や商品のレコメンドができるシステムに関する研究を行っています. これまで,感性検索エージェントというモデルを提案し,様々な検証を行っています. 感性検索エージェントは,ユーザのデータに対する評価傾向を学習し,ユーザの代わりに膨大なデータベースから"ユーザの好むものを検索"するコンシェルジュのような働きをします.


 
感性検索エージェントのシステム概要

感性検索エージェントには,進化計算やパターン認識などさまざまなメタヒューリスティックスの技術が応用されています.

私たちは,感性検索エージェントモデルをファジィ推論によって実現する手法について研究しています. ファジィ推論は,対象の物理特徴量を人間の感覚に近い曖昧な尺度(小さい/大きい,寒い/暑いなど)を用いたメンバシップ関数によって定量化し,そのメンバシップ値と複数のファジィルールによってファジィ集合演算を行い,推論値を決定する手法です. この研究では,「ユーザの潜在的な嗜好ルールを抽出できる可能性がある」というメリットがあります. ユーザ自身も気づかないようなその人の嗜好ルールを見つけることができれば,例えば,企業が今後の商品開発に役立てたり,新しいデザインの商品をユーザに勧めたりできるようになります.

本研究では,これまでにキャラクターコーディネートやJ-POP楽曲を題材にしたルール抽出システムを構築し,様々な検証を実施しています.
詳しくはこちら → キャラクターコーディネート音楽検索

昨今,深層学習手法によって様々な推論や予測が実現されていますが,なぜそのような推論結果になったのか,予測値はどのような根拠に基づいて計算されたのかを「人間が理解できる形で説明することは困難」とされています. ファジィ推論は情報技術の分野では古くからある技術ですが,これらの問題解決の一助になる可能性を秘めています.

代表的な研究業績
【国際会議】Ryota Shiraishi, Hiroshi Takenouchi, Masataka Tokumaru, "Optimization of Fuzzy Rules in Kansei Retrieval Agent with Fuzzy Reasoning", Joint 10th International Conference on Soft Computing and Intelligent Systems and 19th International Symposium on Advanced Intelligent Systems (SCIS&ISIS2018), pp.449-454, 2018-12 (Toyama, Japan).
【学術論文】Hiroshi Takenouchi, Masataka Tokumaru, "Kansei Retrieval Agents Model with Fuzzy Reasoning", International Journal of Fuzzy Systems, Vol.19, Issue.6, pp.1803-1811, 2017-12.
*Bold: 本研究室の学生

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