知能機械工学科オリジナルサイト 仙波卓弥教授 電着工具、およびその製造方法に関する技術発明が特許権を取得

【特 許 番 号】 第7013026号/第7013027号
【登 録 日】令和4年1月21日
【発明の名称】電着工具/電着工具の製造方法

工学部知能機械工学科 仙波教授が発明し、特許出願した「電着工具」/「電着工具の製造方法」に関する技術発明が特許権を取得しました。

< 本特許発明の要約 >

近年需要が増えている高硬度・小物部品の研削加工には、電気めっきを行い、台金の表面にダイヤモンド砥粒を1層だけ固定化した電着工具が多用されています。従来の電着工具として、粗粒のダイヤモンドホイールを使って平滑な研削加工面を作るため、工具の回転中心から砥石作用面にある砥粒先端までの距離を揃えることができる砥粒埋込み電着工具の製造方法があります。この電着工具は既存の工具の中では最も切れ味が良いのですが、通常の電着工具では、工具の回転中心から砥粒先端までの距離が精密に揃っていないため、平滑な加工面は作れません。
本発明の電着工具の製造方法は、粘着テープ上に貼り付けられたメッシュシートの各オープンスペースに砥粒を1個ずつ配設する工程、粘着テープからメッシュシートを剥離する工程、砥粒が付着した面を台金の表面に向けて粘着テープを配置し、プレスすることにより台金の表面に砥粒を埋め込む工程、台金の表面に電気めっきを施す工程からなります。この製造方法によれば、粘着テープ上に貼り付けられたメッシュシートのオープンスペースに砥粒が1個ずつ配設することにより、粘着テープからメッシュシートを剥離すると、粘着テープ上に砥粒が規則正しく配列され、この粘着テープの砥粒が付着した面を台金の表面に向けて配置し、プレスすることで、台金の表面、すなわち砥石作用面上に砥粒が規則正しく配列され、電気めっきにより台金へ保持されます。

ここで、電気めっきは、プレス後、砥石作用面に付着している粘着剤を除去した後に行うことが望ましく、これにより、粘着テープを剥がした際に粘着テープの粘着剤が砥石作用面に付着している場合に、この付着している粘着剤を除去した後に電気めっきを行うことで、めっき皮膜をきれいに形成することができます。なお、粘着剤が残っていると、粘着剤が絶縁体となって電気めっきができなくなるため、プレス後、粘着剤は完全に除去した後に電気めっきを行う必要があります。また、本発明の電着工具の製造方法では、電気めっきを砥粒の1個分の厚さだけ施した後、めっき皮膜を磨いて砥粒の一部を表面に露出させることが望ましく、これにより、台金上に1層だけ埋め込まれた砥粒をめっき皮膜により完全に覆って面触れを除去することが可能となります。
以上の方法で製造された電着工具によれば、砥粒が台金の表面に正方配列され、かつ、研削方向に対して斜交配列されることにより、条痕の幅を減少させることができるため、砥石幅方向の粗さを均一にすることができ、メッシュサイズが#500以下の粗粒を使用した場合であっても平滑な研削加工面を作ることが可能となります。

(図1)本発明の製造方法の工程図
(図2)本発明の台金表面の顕微鏡画像
(A) 市販のダイヤモンドホイールによる加工面
(B) 本発明の電着工具による加工面