FIT工学部 研究室最前線 電子情報工学科 盧研究室
世界ナンバーワン&オンリーワンの研究を目指す盧研究室
盧研究室は三次元画像計測とAI人工知能技術の実用化技術に特化した研究室であり、きめ細かい指導により世界一の研究成果を持って社会に貢献することを目指しています。近年は、「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」をはじめ、文部科学省、経済産業省、福岡県などからの研究支援事業に採択されており、さらに企業との共同研究も積極的に行っています。その結果、3億円弱の研究支援金を獲得し、100篇以上の論文を発表、また20以上の発明特許(アメリカ特許・中国特許を含む)を取得しています。
なお、研究室の卒業生は国内外の大学の先生、企業のソフトウェア開発者などとして活躍しています。現在、津波の画像計測と津波防災システムの構築、最適三次元画像計測、三次元画像計測技術の応用(ロボット、顕微鏡)、AI技術の画像計測分野への実用化技術などの研究に取り組んでいます。
災害状況に応じた避難経路の作成
ハード&ソフトウェアを広く学べることが学科選択の理由。
私は高校生のとき、明確な将来のビジョンがなかったため進路を悩んでいました。ただ漠然と大学へ入り、卒業後に就職することをイメージしていました。そんなとき、福工大工学部の中にある電子情報工学科を知りました。工学部の中でも電子情報工学科は、たとえば「回路」や「プログラミング」など、ハードウェアもソフトウェアもどちらも広く学ぶことができる学科です。この両面を学べる幅広い学習内容が、私にとって最大の魅力でした。
電子情報工学科で様々な知識を吸収し、またスキルを磨くことによって、4年後の就職の際に、工学分野のどのような仕事に携わることになっても身につけたことが活かせると確信し、入学を決意しました。実際、プログラミング自体は福工大で初めて学びましたが、とても面白かったことを鮮明に覚えています。
INTERVIEW
災害時の障害物を検出して事故を防止する研究に取り組む。
現在は盧研究室で、”災害状況に応じた避難経路の作成”をテーマに設定し、研究に取り組んでいます。まず、衛星写真とその色平均を用いることで、台風や地震等の災害時に生じる「倒木」などの障害物を検出し、その領域を通行止めにするという手法の実現に取り組みました。災害時には、自治体等が制作したハザードマップを見ながら避難場所へ移動することになりますが、もし避難経路に障害物があった場合は事故のリスクもあり、また引き返すなどの対応を取らなければなりません。そうしたことを防止する目的があります。
現在は、その発展形として、倒木、洪水、崖崩れ等の災害状況に応じた「最適な避難経路を表示する研究」に取り組んでいます。私の場合、4年次の研究期間も少ないので、この研究は未完のままになりますが、後輩の学生が引き継いで、衛生写真による「障害物の検出」から「最適な避難経路の表示」までを連動させた研究に取り組み、完成してくれることを願っています。
災害前と災害後の衛星写真の比較によって差異を見つけることで、災害発生後の「倒木」などの障害物を検出する。障害物を検出した場所は、写真に赤色で表示される。研究に際しては、衛生写真を加工して倒木が発生した状況をあらかじめ創作し、障害物を検出・表示するプログラム作成にあたった。
画像処理やAIなど先端技術を用いる研究に魅力された。
盧研究室を選択したのは、画像処理やAIを専攻する研究室だったからです。写真など身近な画像に関すること、そして学科で学んだプログラミングを併用して目標を実現できることに魅力を感じました。3年次に画像処理の授業を受けた際、プログラミングによって1枚の画像をモノクロに変えたり、画像自体に文字を加えたりできることが強く印象に残り、画像処理への関心が高まっていきました。また当時Chat GPTの発展がすさまじく、オープンAIに触れる機会も増えたため、AIへの興味が一層湧いてきたことも影響しています。
先生は、とても面倒見が良い方です。研究が行き詰まったときのアドバイスはもちろん、定期的に進行や近況を確認していただいたり、4年生の就職活動の話なども相談にのっていただいたりしました。また研究室は、みんなで協力し合う雰囲気があります。全員が同じ研究テーマではありませんが、エラー原因の考察やアイデアの共有、相談など、多くの面でお互いに良い影響を与え合っています。
ロボットアームを用いた、三次元計測による品質検査システム。ロボットアームによって対象物を全方位から撮影し、三次元化した画像により物体の異常等を検出する。カメラを設置したロボットアームの先端部分は学生の手作り(設計)で、ロボットアームは将来的に自動化を目指している。
プログラミング能力とロジックを組み立てる能力が格段に向上。
やりがいは、細かく設定した目標を達成したときに感じます。たとえばデバッグでエラーが出たり、期待した結果が出力されなかったりしたときはショックで精神的なダメージも大きいですが、その分、結果が顕著に表れる画像処理において期待通りの出力がされると、何にも代えがたい達成感が得られます。
また、この研究室に入って良かったことはたくさんあります。その一つが「プログラミング能力」の向上です。コードを書くスキルはもちろんですが、卒業研究のような具体的に書くべきコードが定まっていないなかで、「こういうことを実現したい」から「こうしたコードが必要になる」といった、ロジックを組み立てる能力が以前よりかなりアップしたことを実感しています。
画像計測とAIを融合させた、自動車の品質検査システム。研究には、実際の自動車のボディを使用している。実験システムには3台のカメラが設置されており、目視では見逃すような微細なヘコミや擦り傷もAIが高い精度で検知して表示する。1〜2年後には完成の予定で、実用化されれば世界初の品質検査システムとなる。
進化する情報社会を牽引できるエンジニアを目指したい。
現在は発生した災害状況に応じた避難経路の候補を表示できるように、地図の細線化(白、黒の二値化した白の領域を、外側から削って幅1画素に変換する処理)に取り組んでいます。
卒業後はIT関係の企業へシステムエンジニアとして就職します。より快適な生活を送るために必要な社会の基盤となるシステムを開発し、進化する情報社会を牽引できる存在になるために今後も努力し、自身の価値を高められるエンジニアになりたいです。
大学選びは、「なりたい自分」から逆算して考えることで、最適な大学を探し出すことができます。進路に悩む高校生の皆さんには、ぜひ後悔のない進路を選択できるよう精一杯頑張っていただきたいです。その点、福工大は様々な分野に秀でた先生方や先輩に指導してもらえる環境があり、同級生と切磋琢磨できる大学です。就職率が高く、私自身とても面倒見が良い大学であることを実感しています。就職を見据えた大学選びとしてはこの上ない環境だと思うので、進学を検討してみてください。
左)3Dカメラを用いた三次元画像計測。対象物(レンガ)を撮影し、三次元モデル化する。一般的には、画像の三次元化には多数の写真が必要になるが、一枚の写真だけで三次元化できることが特徴。計測が容易で、動体も人物も計測できる。
右)光学顕微鏡を用いた三次元画像計測。小さな対象物(ネジ)を撮影し、同じようにネジヤマを三次元化する。目視では確認しにくい箇所も容易に計測可能で、安価な光学顕微鏡でも高精度の機能を発揮する。
A棟の屋上に設置されている、2台の「津波計測用カメラ」。約15km先の玄界灘の海面の状況を撮影しており、三次元解析によって海面高や波高の情報を取得し、津波発生を判定する。今まで博士課程の大学院生2名、修士課程大学院生8名が、このカメラを用いた「津波の画像計測システムの構築」の研究に取り組んだ。
研究紹介
- 工学研究科電子情報工学専攻・修士課程1年/M.S.さん
「画像計測技術を用いた生産管理プロジェクト」をテーマに、画像解析技術を活用して生産業の管理効率を向上させるプロジェクトに取り組んでいます。具体的な内容は開示できませんが、市販のカメラを用いて生産物を計測し、画像計測技術によって個数やサイズ、健康状態の変化を管理可能にすることを目指しています。私はこのプロジェクトにおいてスマートフォンアプリケーションの開発を担当しており、カメラのAPI制御を通じて計測を開始する機能と、計測結果を表やグラフとして表示する機能の実装を行っています。 - 工学研究科電子情報工学専攻・修士課程2年/留学生Cさん
出身大学である中国の大学と福岡工業大学は、ダブルディグリープログラムを提携しており、以前から日本の大学への留学を希望していたので福工大へ入りました。また専攻がコンピュータサイエンスだったので、電子情報工学科を選びました。この研究室に入ったのはコンピュータビジョンに最も適していたためで、現在は、「Vision Transformerの性能向上」に関する研究を行っています。事前学習手法を改良することで、画像分類などのタスクにおけるモデルの精度向上を目指しています。 - 工学研究科電子情報工学専攻・博士課程1年/留学生Oさん
興味のあった日本文化を深く理解し、技術を学びたいと思っていたことから出身大学である青島科技大学 (中国山東省青島市)との4+2育成プログラムがある福岡工業大学へ留学しました。現在、「中古車の車体表面のヘコミや擦り傷を検知する画像測定システムの開発に取り組んでいます。現在の車体表面のヘコミや擦り傷の検知は、人が目視で判断するしかありません。微細な傷は、見逃すこともあります。この研究は、コンピュータビジョンやAIを活用して検査の効率化を図り、中古車部品の再利用率を高めることが目的です。