FIT工学部 研究室最前線 電気工学科 田島研究室

知能機械工学科

田島研究室

田島 大輔 助教

FIT工学部の取り組み

研究内容

有機性廃棄物を電極材料に応用したキャパシタの開発。

田島研究室(田島大輔 助教)は、現在、電力の貯蔵装置として化学反応を伴う二次電池(充電して繰り返し使用する蓄電池)の利用が盛んですが、それらの二次電池は電極部分の劣化が起こり、数年周期で電池の取り替えが必要となります。しかし最近、電荷の物理的な吸脱着反応により電気を蓄積するため電極の劣化がほとんど無く、しかもメンテナンス不要な電池「電気二重層キャパシタ」が注目され、自動車などの回生エネルギーを有効活用するなど普及が進んでいます。この研究室ではキャパシタの電極に使用されている炭素材料に着目して、食品カス(焼酎カスなど)の有機性廃棄物を利用した新しい炭素材料による高性能なキャパシタの開発に取り組んでおり、開発とともに地域活性化へもアプローチを試みています。

充実した電気分野の学習環境が入学の理由。就職支援も魅力の一つ。

髙原さん

僕が福工大へ入学したのは、学生一人ひとりに対する確かな教育力、そして最先端の設備で研究に取り組める環境が素晴らしいと思ったからです。電気工学科を選んだのは高校3年のとき。電気はこれからの生活に欠かせない大事な存在だと感じたことが理由ですね。また将来、電気関係分野の職に就くことを目的に、本学の電気工学科で電気に関する幅広い分野をしっかり学ぼうと思ったことも動機です。

朝永さん

僕も大学では、生活に密着した電気分野を学びたいと思っていたのですが、そんなときに高校の先生が勧めてくださったのが福工大だったんです。福工大の電気工学科は2クラス制で学生に対する教育が行き届いており、先生と近い距離で学べること、また、就職についても親身な指導を受けられると感じたことが僕にとっては大きな魅力でした。

前田研究室3

▲ゴマ焼酎カス24gを組み込んで開発した蓄電池・電気二重層キャパシタ。

焼酎や柚子のカスを利用した二次電池用電極材料の開発がテーマ。

髙原さん

この研究室では、「有機性廃棄物を利用した電池用電極材料の開発」に取り組んでいます。具体的には廃棄物を電池の炭素材料に生成した後、電池に組み込んで抵抗や容量などを図り、電池の性能を検証する実験です。僕の場合は焼酎製造の際に出る原料カス=胡麻のカスを使って研究を行いました。実際に製造元と交渉して製造カスを入手し、実験に用いています。僕がこの研究室を選んだのは、研究がいかにも「電気」という内容でないこと。廃棄物から電池をつくるという内容がとても新鮮だったんです。

朝永さん

僕も研究内容は同じですが、電極材料に利用したのが柚子(ゆず)で、「柚子胡椒」などの原料に用いられた製造カスを利用しました。外皮を削られ、搾ぼられた後の白い部分などをドライフルーツ状に乾燥させてさらに炭化。それを電極材料に用いて電池性能の実験を実施しました。この研究室を選んだのもまったく髙原君と同じで、廃棄物から電池をつくるという研究にとても惹かれたからです。「柚子を本当に電池に利用できるのか?」という好奇心が、田島研究室に入った大きな要因ですね。

髙原さん

この研究は、地域の特産物を活用していることも特徴です。僕は筑後地区で製造されている胡麻焼酎「紅乙女」の原料を用いましたが、研究室の中には焼酎製造に使用された麦カスとか米カスとかを利用している学生もいます。それから、二次電池の充電と放電(使用)を調べ、何回も繰り返したときに電池はどうなるのか劣化を調べたりしている学生もいるんですよ。

朝永さん

僕が使った柚子のカスは、宮崎県の西米良村から頂いています。ここは柚子が特産物。ですから柚子製品を製造した後には大量の廃棄物が出ていて、僕はそれを研究に用いているわけです。研究自体は蓄電池への廃棄物利用ですが、その先には、廃棄物を利用して「地域の発展」につなげるという目的があります。たとえば電池の製造工場を作って地域の人たちにそこで働いてもらい、村を活性化させるイメージです。

前田研究室2

▲高電圧実験室内の乾燥機に入れた素材。これは胡麻焼酎のカスを乾燥させたもの。

前田研究室3

▲焼酎カスは、屋外の高電圧実験室で乾燥させた後に電気管状炉で約5時間をかけて炭化・賦活させる。

すべての工程に関わる面白さ、良い実験結果を得たときの喜びがある。

髙原さん

この研究の面白さは、電池の材料になる焼酎カスを収集することから始まり、それをもとに電極材料を製作し、二次電池の実験をするというすべての工程に関わることですね。もちろん実験自体もやりがいがたっぷりです。二次電池に流す電気、電流の大きななどの条件を変えたりしながら実験する際に、「これが一番いけるんじゃないか」と設定を考えて実施した実験で、良い結果が出たときの「喜び」といったらありません。

朝永さん

僕も電流を変えてみたり、時間を変えてみたりして電池実験するんですが、良い結果が出たら本当に感激です。以前、実験に夢中になって研究室に泊まり込んだこともありました。
実験とは違いますが、柚子を提供してもらっている西米良村へ行くこともあるんですよ。昨年の夏には、実験の中間発表を行いに現地へ足を運びました。先生と一緒に、村の人たちへ実験結果を発表したんです。この3月には最終発表も行う予定です。

髙原さん

僕も2~3ヶ月に1回、焼酎メーカーに廃棄物を頂きに行っています。朝永君もそうですが研究はとても忙しく、僕は、平日は夕方6時までの時間をめいっぱい使っています。平日はほぼ研究オンリーといってもいいくらいです。

前田研究室2

▲直流電源装置による充放電実験。炭化させた素材の性能をチェックする。

前田研究室3

▲朝永くんの研究材料の乾燥させた柚子のカス。まだほんのりと柚子の香りが漂う。

研究での取り組みや培った忍耐力などを就活でしっかりアピール!

朝永さん

いろいろ忙しかったし苦労もあったけど、就活でしっかりアピールできたことがこの研究の良かったことの一つですね。研究に地道に取り組んだことを、面接で紹介しました。研究に取り組む姿勢と言うか、忍耐力というか。結果が出なくてもコツコツと取り組んだことで、精神面が強くなったことを強調できたことが内定につながったと思っています。

髙原さん

僕も、就活の際の自己PRにものすごく役立ったなあ。面接では研究内容をしっかりアピールできた手応えがありましたね。
僕の就職先は、建設・設備企業です。施設関連では将来、電気に関わる仕事にも携わるはず。できればいつかは、国が関わるような規模の大きい仕事を手掛けたいですね。それから、今後は蓄電池の大切さも人々に伝えたいです。非常用電池とか発電などの分野に目をもっと向け、また将来は開発にも携わって、人々の安心安全な生活に貢献したいですね。

朝永さん

僕の就職先は、設備のメンテナンスに関わる会社。きっと発電機の保守保全にも携わることでしょう。ですから今後も多様な知識しっかり学んで、生活に欠かせない電気をしっかり皆さんに供給できればと思っています。研究室で培った不屈の精神で、仕事に取り組みたいですね。

髙原さん

最後に先生のことも紹介します。田島先生は、平成27年度から福工大に赴任された先生で、指導もすごく丁寧で優しい先生です。僕も朝永君も、田島先生の研究室で良かったと思っているし、今の3年生の多くがこの研究室を希望しているみたいで、大人気です。

朝永さん

先生は、資格の勉強も指導してくださいます。先生が持っていらっしゃる資格も凄くて、「電験1種」という学生にとっては「神」のような資格をお持ちなんですよ。こんな先生のもとで取り組む研究が、面白くないわけがないですよね。