FIT工学部 研究室最前線 電子情報工学科 前田研究室

電子情報工学科

前田研究室

前田 文彦 教授

FIT工学部の取り組み

※学生の学年等の表記はすべて取材時のものです。

研究内容

次世代材料として注目されるグラフェンに関する研究。

前田研究室(前田文彦 教授)は、「グラフェン」という物質に注目しています。グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状の2次元ネットワークを組んだ原子層のシートでグラファイト(黒鉛=鉛筆の芯の素材)を構成する一層分だけの結晶です。特徴は、室温でキャリア移動度がSiの100倍以上、最大電流密度がCuの約100倍等、電子デバイス材料として非常に優れた特性を有していることです。将来、集積回路の配線や透明電極、センサなど多くの分野で応用が期待され、Siの限界を超える「次世代エレトロニクスデバイス」のキーマテリアルとして注目されています。

研究室では、3グループに分かれ「グラフェン成長に関する研究」のほか、「ガスセンサーに関する研究」「層状物質を用いたフレキシブルデバイスの研究」のテーマで研究が行われています。

spisara

研究室の魅力を語る

大学院 工学研究科 修士課程

電子情報工学専攻2年

R.Sさん

(電子情報工学科卒業)

出身:Sripruetta school(タイ)

ツイニングプログラムを経て入学。そして大学院へ。

福工大とタイのキングモンクット工科大学の「ツイニングプログラム」による、1週間のスタディツアーを利用して福工大に来たことが入学のきっかけになりました。施設が豊富で整っており綺麗な学校だと思ったこと、先生、先輩たちとスタッフが優しく接してくださったことに感銘を受け、学部生としての入学を決めました。

電子情報工学科を選んだ理由は、高校生時代から電化製品やスマホの技術に興味があったからです。この分野を学ぶには、ソフトウェアとハードウェアの知識を広く学ぶことが必要だと思って選択しました。入学前に1年間タイで日本語を勉強したものの日本語での受講は非常に難しく、理解できない内容もありました。しかし、先生やクラスメイトから丁寧に説明してもらって学習を進めることができました。今も感謝しており、福工大を選んで良かったと思っています。

前田研究室1

管状炉を移動できるオリジナルの真空加熱炉。炉内にアルゴン(不活性ガス)を流して試料を約1000℃に加熱する。

電子物性分野を研究したいと思い前田研究室を選択。

私は学部卒業後に大学院へ進み、現在、「グラフェン成長法に関する研究」に取り組んでいます。この研究は、触媒CVD法をベースとして「より安全に行える低コストの新しい成長法」を確立するためのもので、金属基板上に塗布した固体炭素薄膜を成長材料として用いるグラフェン成長法の実験を行っています。金属基板が研究の鍵で、研究室の先輩の実験を継続して行ったり、自分の気になる新しい基板上で成長させたりと、先生と相談して実験条件を変えながら研究を進めています。ちなみに私は、2019年10月に京都で行われた国際会議(ALC`19)で、修士課程1年半で行った研究をポスターにまとめて発表しました。

この研究室を選んだのは、学部生3年次に電子物性に関して研究したいと思ったからです。研究室紹介会の際に前田先生がグラフェンについて説明してくださり、興味が増幅。グラフェン成長法の実験にも面白さを感じました。ネット調べると、タイをはじめ様々な国でもグラフェンは注目されていて、将来的に役に立つと思って決めました。

前田研究室2

試料を加熱するため、真空大気圧加熱炉内にセットするランウィットさん。

前田研究室3

真空加熱炉に流すアルゴンガスの流量を調整するランウィットさん。

身に付いたのは、システム思考で計画を立てる能力。

前田先生は分からないことがあれば、丁寧に優しく教えてくださいます。日本語が理解できないときにも、先生は絵を描いて説明してくださいました。また、研究室では先生と学生との話し合いが頻繁に行われていて、とても和やかな雰囲気が漂っています。

学生が研究成果や進捗状況を発表するゼミでは、だれもが質問することができるので他の研究の知識を得ることもできます。

私は、次世代材料であるグラフェンの成長法を研究できること自体に大きな喜びを感じています。従来の成長法ではメタンガスを使用する危険性が伴い、高い費用もかかるので、本研究の成長法を確立すればコスト削減につながります。今、転写プロセスを用いない高品質のグラフェン成長にも注目していますが、様々な電化製品でSiの代わりに用いられ、高性能の製品生産に貢献できると思うとやりがいも大きいです。

この研究室に入って良かったことは実験条件を考える際に、先生に相談しながら指導を受けられること。また、同じ研究に取り組む学生が手伝ってくれることもありがたいです。私はこの研究を通して、実験条件を考えながら次のステップに進むための「 システム思考で計画を立てる能力」が身に付きました。

前田研究室4

真空対応四端子抵抗測定装置の中に金属をセットし、抵抗を測定。
センサに応用する。

前田研究室5

真空対応四端子抵抗測定装置の内部を真空にするため、
密封するためのフタを取り付ける。

研究で得た知識を応用して業務にあたりたい。

大学院修了後、私は三重県にある住友電装株式会社で働くことが決まっています。この会社は、自動車の電子機器に欠かせないワイヤーハーネスや自動車関連製品を開発・製造する会社です。業務内容は研究分野と違いますが、研究で得た知識と考え方を応用して働きたいと思っています。

福工大の魅力は、施設・設備が充実していて、総研、モノづくりセンター、PC教室など興味を広げる環境が整っていることです。就職サポートも大きな強みで、就職活動が始まるときには様々な相談もでき、履歴書の書き方などの講習なども行われます。英語能力を上げたい人には、ネイティヴの英会話レッスンなど学習機会も豊富。また、留学や英語論文作成、国際学会発表前プレゼン指導なども国際戦略室がサポートしてくれます。それに講義後にも質問があれば、先生方に聞く時間も設けられています。学生にとってはとても素晴らしい環境です。

前田研究室6

実験開始の前、顕微ラマン分光装置に光軸調整ユニットを取り付けて調整を行う学生。

前田研究室7

顕微ラマン分光装置で、試料表面の観察・反応分析を
行う学生と前田教授。

前田研究室8

蒸着装置を用い、炭素100%の芯を加熱して
蒸着することにより試料に炭素薄膜を形成する。