FIT工学部 研究室最前線 電子情報工学科 松井研究室

研究テーマ

回転型倒立振子のデータ駆動制御による状態フィードバックゲイン更新

松井先生の専門分野であるデータ駆動制御について研究中。

研究テーマは、不安定な「回転型倒立振子」を安定的に倒立できるように、現代制御を用いてコントロールすることです。現代制御はそれだけでも幅広い学問ですが、私は松井先生の専門分野である「データ駆動制御」について研究しています。しかしデータ駆動制御を行うためには、前段階として倒立振子が倒立状態のときのデータが必要です。そのため、研究当初は状態フィードバック制御を実装してデータを収集し、その後にデータ駆動制御を行うというプロセスになります。
現段階では、回転型倒立振子の製作をはじめ、状態フィードバック制御とノイズフィルタの実装を行いました。今後は、私が構築したオリジナルの実験システムによって得られたデータから、本題でもあるデータ駆動制御を行い、状態フィードバックゲインの最適化を行う予定です。松井研究室ではほかに、「熱の広がりを制御(均一化)する研究」や「フードデリバリーサービスの報酬最適化の研究」などに取り組む学生もいます。

INTERVIEW

研究室の魅力を語る

電子情報工学科4年

D.N.さん

出身:
大分県 大分高校

※2023年12月取材時

興味のあった分野を学べる電子情報工学科を迷いなく選択。

私は大学進学に際し、選択の基準としてまず「工業大学」に行きたいという思いがありました。これは父が工業高校出身であり、工業分野で長年働く姿を見てきたこと、また私自身、電気系の製品を扱ったり、DIYを趣味にしたりするなど、いわゆる「ものづくり」が好きだったことが選択の根底にあります。ですから、工業大学という工学知識や技術の修得を目指す人が数多く集まる学習環境は、私にとって非常に居心地が良いだろうと考えていました。こうした思いが結果的に、総合大学ではなく福工大の選択につながりました。
また同時に、プログラミングや電子回路にも興味をもっていたので、それらに関わる分野を専門的に学べる電子情報工学科を迷いなく選びました。

オリジナルの実験システムで、回転型倒立振子の倒立状態における倒立状態のデータを計測中。画面の波形は回転型倒立振子の動きを表示している。
回転型倒立振子は通常、装置に設置した際に手を離すと不安定になり下へ倒れるが、制御を行うことによって立ったままの状態を維持できる。

制御工学の知識不足を解消するために志望した松井研究室。

松井研究室へ入ったのは、松井先生の授業を受けて「制御の知識が足りない」と実感したからです。私は1年次から「ロボット相撲プロジェクト」で、相撲ロボットを製作する活動を続けており、ロボット設計や大型工作機を用いた加工、制御回路等の製作を通して、機械、材料、電子の各工学分野の幅広い知識を修得することができました。しかし同時に、設計結果に理論的裏付けを与えることができないもどかしさも感じており、さらなる制御工学の知識の修得が不可欠だと考えていました。機械工学と電子情報工学を理解してこそ研究に取り組める制御工学の研究室は、私の理想そのものでした。
松井先生は、論理的で現実的な思考をされる方です。企業で働いていた経験もお持ちのため、考え方や言動に「社会に出ても通用するのか」という前提が常にあるように思えます。また研究室では、各学生が、それぞれ、独自のテーマの研究を行っているため、メンバー同士が協力して研究することはほとんどありません。静かな緊張感の中、各自が制御工学の難しさを感じつつ先生に鍛えられながら、研究を進めています。

モータドライバ回路の設計図をもとに、回転型倒立振子制御用のインターフェイス回路を製作する。
ロボットに距離を測定する超音波センサを取り付け,ロボットの壁からの停止距離を制御する実験に取り組む。

制御理論を用いて対象物を制御できたときの達成感は格別。

制御工学は、機械要素、温度、金額などの制御対象を任意に(思いのまま)制御するための学問です。しかし、制御対象の特性は様々です。制御対象に思いのままの動きをさせるためには、制御対象の動作を常にフィードバックし適切なタイミングで適切な操作を加える必要があります。ですから、制御理論を用いて思う通りに制御できたときは、制御対象を理解して支配した達成感を得ることができます。
制御装置の設計の際、機械(工学)の構成要素としてのベアリングやモータ、歯車などの特性が分かっていて当たり前です。また、電子情報工学としてのプロセッサの処理動作の理解、プログラミングもできて当然。そのうえで、制御理論を理解しなければなりません。要するに松井研究室は、所属学生がハードウェアもソフトウェアも理解していることが前提の研究室です。ハードやソフトの知識を総動員して新たなことを学ぶ楽しさは電子情報工学科ならではと言えますが、それは難しいことでもあります。そうした中で成長できるところが松井研究室の良さであり、制御工学及び関連分野における十分な知識が修得できると期待しています。

半導体製造装置等で使用される温度均一化制御ためのシミュレーションプログラム作成のアドバイスを受ける。松井研究室は、松井教授が学生へマンツーマン指導するスタイルが多い。
松井教授の部屋に置かれている、振動抑制装置(二慣性型実験装置)の説明を受ける。シミュレーション成功の後に、実際に取り扱うことになる。

「学生生活で退屈したことは一度もない」ことを断言。

今後は、松井先生の専門である現代制御におけるデータ駆動制御を理解して応用できるように研究を進めていく予定です。将来的には、モノづくりセンターでの機械加工、機械設計の経験、そして制御工学の知識を総合的に発揮できる、大型工作機械メーカーや半導体製造装置メーカーへの就職を考えています。ただし、学んだ制御工学が適用できる分野は広範なため、これからしっかりと進路を検討したいと思っています。
私は、福工大の学生生活で退屈したことは一度もありません。これは勉強やバイト、就活で忙しいという意味ではなく、学生生活のほとんどの中で、電子情報工学と機械工学の学びを楽しむことができ充実していたという意味です。その理由は、先生方が親身になって私の興味や関心に応えてくださること、またモノづくりセンターでのプロジェクト活動など、授業以上の経験と知識を得る機会があったからです。後輩の皆さんは、是非これらのチャンスを逃さないよう意欲的に学生生活に臨んでほしいですね。きっと楽しく有意義な大学生活を送れると思います。

外乱オブザーバを用いた非線形制御系の制御パラメータを調整し、理想の応答に近づけるためのシミュレーションを実施する。
フードデリバリーサービスの報酬最適化の研究に取り組む。先行研究の論文の提案するモデルの応答を2人で確認する。