FIT工学部 研究室最前線 知能機械工学科 廣田研究室

知能機械工学科

廣田研究室

廣田 健治 教授

FIT工学部の取り組み

研究内容

塑性変形を用いた部品成形の高精度化,効率化に関する研究。

廣田研究室(廣田健治 教授)は、金属を変形させて形状を作る塑性加工は、形状を与える金型があれば同じ部品を大量に安く効率的に作ることができるため、自動車や家電など幅広い産業分野で用いられています。しかし、金属の変形には限界があり加工できる形状も制約を受けます。また、予期せぬ変形により正しい形状が得られないこともあります。例えば、金属板材から塑性変形により部品形状を切り取る「せん断加工」では切断面に割れやだれ込みが生じたり、薄い部品では反りが生じることがあります。本研究室では主に力のかけ方を工夫することでこうした問題を解決する手法を検討しています。一方で、他の加工技術を塑性加工に置き換えることで生産の効率化が期待されます。本研究室では自動車用の軸部品を想定し、軸と円盤部材を塑性変形によって強固に一体化する工法の開発に取り組んでいます。また、上記の研究テーマでは三次元の複雑な塑性変形が局所的に集中して生じるため現象が複雑になり、単純な力学モデルでは説明できない場合が多々あります。このため、数値解析を用いて内部の材料流動や応力状態を求め結果の考察や予測に役立てています。

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研究室の魅力を語る

知能機械工学科4年

W.Yさん

出身:福岡県立筑紫中央高等学校

知能機械工学科4年

T.Tさん

出身:福岡県立伝習館高等学校

就職率の高さとロボットに関心があったことが入学の動機。

渡邉さん

私が進学先に福工大を選んだのは、まず目についた就職率の高さでした。高い就職率を誇るだけに、就職支援における面倒見の良さが感じられたことが大きな理由です。また知能機械工学科へ入ったのは、もともとロボットに興味を持っていたことがきっかけです。快適な社会づくりには各種の機械が欠かせませんが、使う側でなく機械を創り出すサイドに立ちたいと思い、学習環境が充実している知能機械工学科を選びました。もちろん安い学費も魅力的でした。

田中さん

私も、ほとんど入学動機は同じです。やっぱり福工大の就職支援の厚さは大きいですね。それから、知能機械工学科へ入った理由も似ています。私も高校時代にはモノづくり、中でもロボット製作に関心があったことから機械分野をしっかり学びたかったんです。設計やCADなどの授業はとても学びがいのある授業に思えたし、基礎力をしっかり修得できる教育が行われていることが容易にイメージできました。福工大は学生を成長さてくれる大学、そう感じたことから入学を決意しました。

前田研究室2

▲フランジ(円盤)の穴の径を測定器で正確に計るため、フランジをカメラによって画面に映し配置を確認する田中君。

前田研究室3

▲変形後の形状に対して相当ひずみ分布表示画面(右)を見ながら、パラメーターを記録する渡邉君。

研究室では塑性締結技術の追究、そして局所変形の解析に従事。

田中さん

この研究室では、主に塑性加工の研究を行っています。私が取り組んでいるのは、「軸部材」と「円盤部材」の二方向同時塑性締結技術の研究です。塑性とは材料が力を受けて永久的に変形することで、研究内容を説明すると、円盤のまん中に穴を開けてその中に棒状の軸を突き入れ、高い強度で締結させるというものです。こうした締結技術は自動車部品など、特に軸部分にギアなどの円盤部が付随した駆動伝達部品での需要が高いのですが、求められている「低コストで生産できる技術」の確立をこの研究で進めています。今は軸の形状を検討しながら、小型化・軽量化を追究しているところです。

渡邉さん

私の研究テーマは、「局所変形における弾塑性FEM解析精度の検証」です。田中君たちが取り組んでいる塑性締結をパソコン上でシミュレーションし、締結部分について多様なデータを数多く取得したいと考えています。解析は初めて学ぶ分野なので、試行錯誤しながら研究を進めています。苦労していることは、解析ソフトの設定事項が複雑であることと、ソフトのマニュアルが英語版しかないことです。今は、三次元で円柱の圧縮試験の検証をしています。これからは、より複雑な加工の解析に取り組んでいきたいと考えています。

田中さん

この研究室を選んだのは、4力学の中でも材料力学が得意だったことが理由です。また、この生産技術は広い分野の製造業、特に自動車産業で多く使われていて、就職活動でも有利に働くと考えたことも理由の一つです。
廣田先生の印象ですが、とても丁寧な指導をなさる先生との印象を持っています。研究についていろいろな話をする中でも一つひとつ確認を取り、また学生自身での考究を促しながらも間違いがないように指導してくださいます。それに、人としてのやさしさのある先生です。研究室の学生同士もとても仲が良く、研究中はだれもが真剣ながら、時おり笑い声も起こるなど研究室には和気あいあいとした空気が漂っています。

渡邉さん

私は3年次のインターンシップがきっかけでした。赴いたのはロードローラーの製造会社で、ここで行われていた「解析」に興味を持ったことが要因です。この研究室では部品塑性の解析に携わることができると耳にし、迷い無く選択しました。もちろん材料力学が好きだと言うことが、選択の根底にはあります。
私の廣田先生のイメージは、指示が的確だということ。指導も丁寧で学生に考える時間をよく与えてくださいますが、そうしたことで学生が自ら研究に取り組む雰囲気・環境を作ってくださっている気がします。そんな研究室ということもあって学生同士は仲が良く、言いたいこと聞きたいことも自由にできます。先日も食事会を開き、大いに盛り上がりました。

前田研究室2

▲油圧プレスを用いてアルミニウムの試験片をプレスし、実験用に成形している学生。

前田研究室3

▲1階実験室にあるプレス加工用の油圧プレス機。パンチの形によって自由に金属片を成形できる。

材料力学の基礎学力、自主性、説明する能力、思考力が向上。

渡邉さん

やりがいを感じたのは、1〜2年生のときに習った力学と今の研究のつながりを「コレだったのか!」と実感できたときですね。加えて解析を進め、その解析が成功といえる結果を導き出したときもそうです。もちろん失敗もあります。しかしその失敗も、何故こうなるのかという原因を力学的な視点から考えたうえで理解し、修正できたときには喜びに変わります。また今は、思いどおりの研究に取り組めている現状にとても満足しています。
ここで得たのは、材料力学の基礎力ですね。もともと好きだった分野ですが、この研究室でより確かな学力が身につきました。それから2ヶ月に1回、学生は研究室内で自分の研究内容を、パワーポイントを用いて発表・説明しなくてはなりません。これによって何かを人に伝えるという能力も磨けているように思います。

田中さん

私がやりがいを感じるのは実験データを得た後に、何故このような結果になったのかを自分たちで考察し、その考えをもとに先生と話し合い、部品を締結させる早さや部品の形状などの条件を考えて次の実験を進める…これを繰り返して検証していく活動そのものです。自分たちで考えながら実験を進め展開できるところに、大きな喜びを覚えます。そして思った通りの実験データが出ると、本当に嬉しいです。
身についたのは自主性ですね。廣田先生は、学生に「次はどうしたら良いか考える」ことを促してくれる先生ですので、自分たちですべて検討・熟考しながら研究を進めなければなりません。ですから失敗の原因や解決策を考えるチカラが自主性とともに獲得できたと感じています。また渡邉君と同じように、発表のためのデータ整理や資料作成の能力、説明力もかなり向上したと思います。

前田研究室2

▲レーザー測定器で試験片の形状をチェックし、幅や角度などの数値をデータロガーに保存する作業に当たる。

前田研究室3

▲フランジの穴に軸を押し込んだ後の穴の形状をレーザーで測定中。フランジはレーザー照射時にノイズが発生しないように黒く塗ってある。

機械メーカーへの就職、大学院進学などそれぞれの道へ。

田中さん

研究では軸の形状を見直し、低コストで塑性加工ができるように工夫することが今後の目標です。就職は、すでに空圧制御機器のトップメーカーに内定しているので、配属は決まっていませんができれば将来的に開発や生産技術職などに就き、廣田研究室で身につけた能力や、福工大で身につけた様々な知識をもとに活躍したいと思っています。

渡邉さん

私のこれからの研究目標は、まだ正しく解析できていない難関部分があるのでそこをまずクリアすること、そして田中君の取り組む「塑性締結」のような非対称で局所的な大変形の解析を成功させることです。学部を卒業後は大学院に進む予定ですので、ぜひこの研究テーマを進展させたいですね。そして卒業後は機械製造分野の会社へ就職し、研究開発職の即戦力となって働ければと思っています。動く大型機械などの開発・製作などは取り組みがいもありそうです。

田中さん

福工大工学部はエンジニアとしての基礎をしっかり学べ、また学生の成長を促してくれる体制が整っています。研究や就職に関しても力を入れていますし、特に就職に関してはサポート体制も抜群です。私も就活の際はとても助かりました。

渡邉さん

福工大なら、工業系の高校を卒業しなくても大丈夫。力学も実践も、安心して基礎から学べるはずです。それからインターンシップ制度は、ぜひ注目してほしいですね。参加すれば、社会勉強はもちろんのこと将来の方向性もきっと見つかるはずです。それに、福工大工学部は先生がとても素晴らしいです。どの研究も学びがいがありますよ。

前田研究室6

▲学生は2ヶ月に1回、それぞれの研究成果や進捗状況を研究で先生や学生の前で発表する。