FIT工学部 研究室最前線 生命環境化学科 久保研究室

生命環境化学科

久保研究室

久保 裕也 教授

FIT工学部の取り組み

研究内容

製錬技術を用いた廃棄物の無害化及び資源化。

久保研究室(久保裕也 教授)は、「磁気分離を用いた有価資源の回収」を研究テーマに掲げています。磁気分離はエネルギー消費量が少なく、2次廃棄物が発生しないクリーンな技術です。鉄スクラップやスチール缶などの選別では古くから利用されていますが、粉砕方法、磁性を持たせる前処理、分離方式を工夫することで、有効利用されてこなかった廃棄物から資源を回収することが可能です。たとえば鉄鋼製錬の副産物であるスラグからリンを抽出したり、スクラップの溶融工程で発生するダストから亜鉛やカドミウムなどの重金属を濃縮したりできます。このほかにもレアメタルの回収や酸・アルカリ廃液の再生など、各種製錬技術を応用したリサイクルや浄化に関する研究を進めています。

spisara

研究室の魅力を語る

生命環境化学科4年

F.Sさん

出身:九州国際大学付属高等学校

生物からセラミックまで広い分野を学べることが入学理由。

福工大に入学した理由は、まず福岡県内の理系大学で実家からも通える距離にあったということが大きいですね。実家のある北九州からJRで通える立地環境の良さはとても魅力的でした。
 もちろん、生命環境科学科が福工大工学部にあったことも理由の一つです。高校時代に所属していた化学部で微生物について学習していたことから、興味のあった微生物分野を生命環境科学科で学びたいと思ったことが入学を後押ししました。またそうした生物系とともに物質系、たとえばセラミックや半導体など様々な分野の講義が行われていて、広い分野の知識を吸収できることも入学を決めた要因です。

前田研究室6

▲研究室には各自専用のデスクが割り当てられており、データの解析やレポートの作成などに当たる。

スラグに含まれるリンを効率的に抽出する研究に取り組む。

現在は、リサイクル工学関係のテーマに取り組んでいます。鉄鋼の未利用資源の活用が目的で、私のテーマは「脱リンスラグの乾式磁気分離」。簡単にいえば、鉄鋼製錬の副産物であるスラグに大量に含まれるリンと鉄を磁力によって分離し、リンだけを取り出して有価資源として活用するための研究です。リンは化学肥料として用いられますが、日本が輸入している高品質なリン鉱石は枯渇しつつあります。そこで、スラグに含まれるリンを効率的に取り出して利用しようという考えが研究の目指す方向です。とはいえ研究はまだ初期段階なので、自分で実験器具を提案・製作したり、起こった現象の観察を行ったりしています。
 この研究室を選んだのは、講義の中で最も興味をひかれたのが物質関係の科目だったからです。特に、久保先生の講義「資源循環工学」は、微生物関係の研究室に進もうと思っていた私の目をリサイクル工学分野に向けさせるほどの面白みがありました。久保研究室の研究テーマや活動内容、また雰囲気なども自分にピッタリ。迷うことなく久保研究室を選択しました。

前田研究室2

▲実験には、顕微鏡の部材を利用して製作した精密なオリジナル機材を使用。スラグの入ったシャーレと磁石の距離を変えながら実験を行う。

前田研究室3

▲シャーレ内のスラグは磁石との距離を変えることで模様が微妙に変化する。この模様の変化具合も大切なデータとなる。

自分次第で研究が進展しさらに広がるワクワク感がある。

三田先生はとてもきさくで話しやすい先生で、忙しい中でも時間を割いて実験やデータの解析に付き添ってくださいます。研究室には4年だけでなく、研究員や大学院生の方がいらっしゃるので、研究のみではなく大学院のことや発表の仕方なども教えていただいています。また研究室は女子学生が多いので、友達のような感覚で楽しい時間を過ごしています。
卒業研究は、実験と実験結果の考察を繰り返します。結果は、さらに論文を調べて比較したり、自分で新しい実験方法や条件を考えて新たに実験を行ったりするのでとても大変ですが、その分やりがいがあります。私は、昔から興味があった「生命の起源と宇宙に関する研究」をさせていただいているので、やりがいも楽しさもひとしおです。ここで、身についたのは「考える力」です。研究は基本的に、自分で何をするかを考えて実験する必要があります。併せてゼミでの発表のときにどう表現したら伝わるか、データをどう処理したら分かりやすいかなども考えるため、「考える力」が一番身についたと思います。

前田研究室2

▲サンプルの分析値をPCのエクセルに入力し、実験結果として示したい単位に換算する作業に取り組む男子学生

前田研究室3

▲重油に含まれるバナジウムとニッケルの濃度測定に取り組む女子学生。発生する有害なガスを吸引してくれるドラフトの中で安全に作業を行う

将来は、内定している鉄鋼企業で培ったチカラを生かしたい。

今後の目標は、とにかくまず自分の研究テーマをひと段落させることです。研究に専心しながらリンの分離がうまくいく条件を見つけ、分離が行える条件を力学的な面からしっかり考察したいと思っています。卒業後は、鉄鋼企業への就職が決まっています。技術系総合職として採用していただいたので、内定先企業が取り組んでいるリサイクル分野などをはじめとする多分野の仕事で、研究室で培った力を生かしながら頑張ろうと意気込んでいます。
 福工大の工学部は施設も充実していて学科の幅も広範囲。ですから、自分のやりたいことを探したい人にも最適な大学・学部だと思います。まだ将来の方向を決め切れてなくて、自分に向いていることが何かわからない時は、とりあえず飛び込んでみてください。様々な講義で、たくさんのことを吸収しながら将来をじっくり考える…福工大工学部はそんな人をきっと力強くサポートしてくれるはずです。

前田研究室6

▲サンプルの物質が破壊される要因について、学生たちにホワイトボードを用いて解説する久保先生。