FIT工学部 研究室最前線 電子情報工学科 小野美研究室

電子情報工学科

小野美研究室

小野美 武 准教授

FIT工学部の取り組み

研究内容

超伝導現象を利用した超高速・低消費電力の情報処理回路の研究。

小野美研究室(小野美武 准教授)は、「超伝導」をキーワードにした研究を行っています。超伝導を用いた実例としては車体を空中に浮かべて高速走行するリニアモーターカーなどが分かりやすいと思いますが、小野美研究室では「超伝導現象を利用した超高速かつ低消費電力な情報処理回路の研究」をメインテーマに設定しています。超伝導とは、ある種の物質を液体ヘリウムや液体窒素温度近傍まで冷却したときに電気抵抗が完全にゼロとなる現象です。また超伝導は、電気抵抗がゼロとなるだけではなく磁場に対する特殊な性質も持っており、磁場を超伝導体外側に排除するマイスナー効果と呼ばれる現象や、超伝導リング中の磁束が量子化する現象などもあります。
従来の情報処理回路は、高速になるほど消費電力が高くなりますが、超伝導を用いた回路の研究が進めば、高速性と低消費電力を両立させた次世代コンピューティングデバイス実現の可能性が高まります。

spisara

研究室の魅力を語る

電子情報工学科4年

F.Tさん

出身:大分県立大分雄城台高等学校

オープンキャンパスで感じた多様な魅力が入学の要因。

オープンキャンパスへ参加した際に感じた、「美しいキャンパスや設備の充実度」「先生や先輩学生の対応がとても丁寧で面倒見が良かったこと」などが決め手になり、福工大への入学を志望しました。また、工学系大学出身の女性が社会に多くないこともあって就職には不安がありましたが、福工大の就活のサポートが手厚いことも分かり、入学意欲がさらに高まりました。
もともと機械やロボットに興味があったので、以前から工学部に進みたいと考えていました。ただ高校生の時点では、将来どんな仕事をしたいのかはっきり決まっていなかったので、より多くの選択肢を得るためにハードウエアとソフトウエア両方の知識が広く学べる電子情報工学科を選びました。普通科出身ですが専門分野も基礎の基礎から丁寧に教えてもらえるうえに、先生のサポートによって不安なく学習できたので、今は電子情報工学科へ入って本当に良かったと思っています。

前田研究室2

研究室内に置かれた家庭用電気配線は、藤原さんが
取得を目指す「第2種電気工事士」資格の実技練習のためのもの。

前田研究室3

自身がCADで設計した電子回路を、
パソコンでシミュレーションする女子学生。

超伝導電子回路の「単一磁束量子回路」という特殊回路を研究。

研究室では現在、量子化された磁束量を論理値の “0”, “1” に対応させて論理演算を行う「単一磁束量子回路という特殊な回路」の研究を行っています。このような超伝導電子回路を構成するのに必要なデバイスとしては、ジョセフソン接合と呼ばれるトンネル接合を用いますが、学生はそのデバイスも試作中です。今は薄膜堆積装置によって超伝導薄膜を堆積し、光学リソグラフィおよびケミカル処理を行って回路パターンの作成に取り組んでいます。
小野美研究室を選んだのは、講義では回路やプログラムの学習が中心だったため「知らないことをやってみたい!」という好奇心が湧き上がったからです。超伝導に関する研究する機会は少ないので、大学でしかできない研究をしたいと考えたこと、研究自体が「面白そう」と思ったことも研究室選択の理由です。研究室訪問時に「人がまだやっていないことを研究したい」と小野美先生がおっしゃった言葉に刺激され、先生のもとでの研究してみたいという思いが募ったことが、今も思い起こされます。

前田研究室2

研究は主に、素子の研究と回路設計に分かれる。実験結果やレポートをパソコンでまとめる学生に指導する小野美先生。

前田研究室3

B棟インキュベーションスタジオ内に設置された、超伝導の薄膜を堆積させるスパッタリング装置。

やりがいは、電子デバイス作成の貴重な経験を得られること。

私が感じる研究のやりがいは、電子デバイス作成の貴重な経験を得られることです。超伝導デバイスを作成するための一連の工程では、半導体回路でも用いられる集積化プロセス技術を使用しており、真空での薄膜作製技術や光学リソグラフィによるパターンニング技術、回路を形作るエッチング技術などの多くの技術に携わることができます。また研究環境整備の過程では、真空装置などを分解してのメンテナンスや配管工事に関わることもできました。実験装置の構造や仕組みを詳しく学ぶ、貴重な経験ができたと思っています。
また超伝導を学ぶ段階で、「自分で理解して自分の言葉で他人に分かりやすく伝える力」がついたと思います。研究を始める前段階として資料を輪講するのですが、講義で習わない初めて出てくる言葉が多くなかなか説明もできませんでした。このため、表面的に文章や数式を理解するのではなく、他人に説明ができるようになるため「自分が理解できるまで徹底的に資料を集めて勉強する」ことや「理解したことを分かりやすい表現に書き換えて他人に説明する」ことを練習する絶好の機会になりました。

前田研究室6

顕微鏡で集積回路の配線をチェック中。回路は横のモニターに映して確認できる。

将来は、プラント制御に関わる仕事にも携わってみたい。

今、卒業研究として「超伝導ジョセフソン接合集積化プロセスの最適化」に取り組んでいます。前期は薄膜堆積ができるところまで研究が進んだので、これからは光学的なフォトリソグラフィ工程とエッチング技術によって、デバイスが作成できるところまでの一連のプロセス立ち上げを目標に日々頑張っているところです。卒業後は、地元の電気工事会社で働くことが決まっています。今まで学んできた分野とは少し違う分野へ進みますが、できれば将来は、回路分野も関係してくるプラント制御などの仕事もしてみたいです。
福工大は勉強や私生活はもちろん就職においてもサポートが手厚く、安心して大学生活を楽しめる大学です。先生と学生の距離が近いことも大きな魅力。講義後以外にも質問する時間が設けあったり、また進路の相談に乗ってくださったりと、学生一人ひとりにしっかり向き合う先生ばかりです。ぜひ、自分の興味を広げてくれる環境が整っている福工大工学部へ入り、学びを楽しみながら未来への可能性を広げてください。

前田研究室6

簡易クリーンルーム内にあるスパッタリング装置の薄膜堆積プロセスを、オペレートしている学生。

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前田研究室6

「超伝導の性質」を知ってもらうためのデモンストレーション実験。セラミックを液体窒素で冷やすと時超伝導状態になり、磁石が空中に浮く。