FIT工学部 研究室最前線 電気工学科 井上研究室
新たな細線化手法により作製された超伝導線材の電気的分離状態の評価
レアアースを用いた高温超伝導線材の研究に取り組む。
井上研究室は、「高温超伝導線材」の研究に取り組んでいます。私の研究テーマは、「新たな細線化手法により作製された超伝導線材の電気的分離状態の評価」です。私が評価を行っている希土類(レアアース類)系高温超伝導線材は、通常の丸型とは異なりテープ形状を有しています。しかし交流で使用する際には損失が発生するため、この損失を低減することを目的とした細線化を目指しています。
具体的には、基板上に金属をパターニングした後に超伝導層を成膜することで、パターン形状を反映した細線化線材を作製しています。さらに、本手法で作製された線材を磁気的な手法で調べることや、数百µm程度に加工し通電試験などを行うことで電気的分離状態を評価しています。また、これらの実験から得られたデータをもとに考察を行い、その結果を電気学会や低温工学・超電導学会などの学会で発表しています。ちなみに研究室には、「ツイストした超伝導線材の機械特性評価」や「超伝導線材を積層した複合導体の通電特性評価」などに取り組む学部生や大学院生もいます。
INTERVIEW
工学分野のカリキュラムや技術者育成制度の整った福工大へ。
福工大への進学を決めた理由は、常に新たなことへ挑戦を続ける大学であると感じたからです。近年の加速度的な技術革新に伴い、技術者の道を歩む私たちも進化していく必要があります。優れた技術者を目指すためには基礎知識に加え新たな知識を得ること、そして、これらを研究活動に応用し世界に発信していくことが重要です。その点、本学は、基礎から応用までを学べるカリキュラムや世界に通用する人材を育成する様々な制度が充実しています。それが、進学を決めた大きな要因です。
また、複数ある学部・学科の中から、工学部電気工学科(学部生時代)を選び、その後に大学院で電気工学を専攻したのは、「電気工学」が技術革新の根幹を支えている分野だからです。現在、よく耳にする半導体も電気工学の分野であり、たとえばスマートフォンなどの多くの機器が電気によって動作しています。電気工学を学ぶことで、「多くの人や場所で必要とされる人材になれる」と思い、電気工学科を選択しました。
井上研究室での様々な経験は社会で役に立つことを確信。
井上研究室を志望したのは、様々な経験を得て自身の成長につながると考えたからです。研究では、測定装置の組み立てや動作させるためのプログラムの構築、データ解析などを行っています。測定装置の構築では、学習してきた電気工学やプログラミングなど幅広い分野の知識が必要であり、これらを実践的に身につけることが可能です。また学会での発表では、文章の構成や言葉のニュアンスなど非常に細かな部分に気を配る必要があります。こうしたことを通して得た経験は、今後の社会人生活で必ず役に立つと確信しています。
井上先生は、実験で行き詰まっている際に常に的確なアドバイスを与えてくださいます。また、日常で使用している電子機器に関しても多種多様な知識をお持ちです。研究室に関しては、学部生・大学院生問わず仲がいいと感じています。お互いに助け合いながらも、時には、研究・発表を行うため技能を磨き合うことのできるライバルでもあります。井上研究室は、技術者として成長できる環境が整った研究室であることを実感しています。
やりがいを感じながら幅広い分野の力を身につけることが可能。
研究で最もやりがいを感じる瞬間は、興味深い研究成果が得られたときです。研究活動では、複数の視点から研究結果を得るために色々な装置を使用した実験を行うため,膨大な時間を要します。きつく大変な時期もありますが、これまでに報告されていない研究成果を得られたときの感激は大きく、これがやりがいにつながっています。さらに、研究成果が多くの人の生活に良い影響を与えることを考えると、一段と大きな喜びが湧き上がってきます。
研究に取り組むなか、多くの力を身につけられたことを今改めて感じています。実験を行う技術はもちろんですが、問題解決能力や考察力、プレゼン能力や文章力といった幅広い分野の力を身につけることができました。また入学当初は、自分の思ったことをつい口走ることも多かったのですが、現在では文章の構成や単語一つの意味まで考えて話すように心掛けています。
大学院修了後は自動車メーカーで開発の仕事に携わる予定。
今後は自分の研究成果を論文などにまとめていきたいです。そのためには、相手に伝わりやすい文章を書き、グラフなどを作成していく必要があります。今まで研究室で学んだ知識や経験を活かし、充実した論文作成という目標に向けて頑張ります。なお、大学院修了後は自動車メーカーへの就職が決まっています。研究テーマである超伝導とは異なる分野ですが、研究室で得られた経験や能力を与えられた職場で活かしていきたいと考えています。
高校生の皆さんには、「自身のやりたいこと」を大切にしてほしいと伝えたいです。福工大工学部には、そんな皆さんのやりたいことを後押ししてくれる先生方がいらっしゃいますし、制度も整っています。当然、研究活動では苦労することもありますが大きな成長につながることは間違いありません。ぜひ福工大工学部で、自分の決めた道を、自信をもって進んでください。
TOPICS
◎研究室では、国のプロジェクトである「2MW級航空機用電気推進システムの開発」をはじめ、「次世代輸送機器用モータとシステム化に関する研究」「高温超伝導複合導体の高負荷率化基盤技術開発」などの研究についても大学や国研、企業と協力して取り組んでいます。
◎研究室の多くの学部生・大学院生が、学会賞などを受賞しています。