FIT工学部 研究室最前線 電子情報工学科 田村研究室

研究テーマ

無線アクセスネットワークにおけるリアルタイムなアプリケーション推定

オンラインゲームと動画・Web・IoT・音声の通信トラヒックを比較し、AIモデルを構築して推定可能かを検証中

田村研究室では、インターネットやネットワーク制御の分野を対象にした研究を行っています。研究室の先輩は、IoT(Internet of Things)デバイスに着目。デバイスごとのタイミングによってインターネットとの通信が生じるIoTデバイスと既存のリッチコンテンツ等のユーザ主導で発生する、アプリケーショントラヒックとの差異を明らかにするため、無線LAN上で転送されるリッチコンテンツ〈World Wide Web(WWW)、動画、音声〉と各種IoTデバイスによるトラヒック特性を調査・分析し、さらに、計測したトラヒックデータを用いて機械学習によるアプリケーションを推定していました。
しかし現在、IoTデバイスだけでなく、多くのユーザーがオンラインゲームを利用しています。そこで私の研究では、無線LANにおけるオンラインゲームのトラヒック特性を明らかにすると共に、先行研究で調査されたWWW、動画、音声、IoTのトラヒック特性との差異を明らかにしました。この調査研究でオンラインゲームのトラヒック特性が、YouTube等の動画、もしくは、音声のトラヒック特性と似ていることが分かり、先行研究と同じクラス分けで推定を行うという結論になりました。このことから今、オンラインゲームの通信トラヒックをデータに組み込み、機械学習によるアプリケーション推定が可能かを検証しています。最終的に、トラヒックの特徴に合わせて無線LANで帯域制御や優先制御を行うことがこの研究の目的です。

INTERVIEW

研究室の魅力を語る

大学院電子情報工学専攻・修士課程2年

Y.S.さん

出身:
福岡県立筑紫中央高等学校

※2025年10月取材時

ハードウェアとソフトウェアの両方を幅広く学べる環境が魅力。

私が福工大へ入学した理由は、二つあります。一つは、高校時代に学んだ科目の中で、特に物理の「電磁気分野」が得意だったことです。学びがいも大きく、成績も良かったことが影響しています。二つめの理由は、当時から情報技術に対して漠然とですが興味を持っており、大学ではこの分野を深く学んでみたいと考えていたからです。
大学進学を考える中で目に留まったのがこの福工大であり、情報分野の学科が充実していることを知りました。当然、情報技術分野を学ぶ環境としては福工大が最適だということを確信。様々な学科の中でも、ハードウェアとソフトウェアの両方を幅広く学べる電子情報工学科に魅力を感じ、福工大工学部電子情報工学科への進学を決めました。

研究に取り組むなか、ゲームや動画などのトラヒックの判定に伴う使用データについて、田村先生と議論を重ねアドバイスをもらう。
トラヒックを推定するために、Pythonでコーディングしたプログラムを実行し、推定精度を考察する。

インターネット分野の理解を深めるため修士課程は田村研究室へ。

大学院生となった現在は、ネットワーク分野を研究していますが、学部生時代は別の研究室で3次元画像計測の研究に取り組んでいました。この分野の研究もやりがいはあったのですが、修士課程では以前から興味を持っていたインターネット分野の理解を深めたいと考え、インターネットとネットワーク制御などの研究を行う田村研究室へ入ることを選択しました。
担当の田村先生は、とても気さくで話しもしやすく、研究の相談にも丁寧に対応してくださいます。研究室には現在、私を含めて修士課程2名、学部生7名(そのうち大学院進学予定の学部生1名)が在籍しています。私たち修士課程の大学院生を中心に、誰もが研究室に来やすい雰囲気づくりを心がけています。研究活動に励む一方で、親睦や息抜きを兼ねてレクリエーションを行うほか、卒業生と今でも交流を続けるなど、「人とのつながり」をとても大切にしている研究室です。

ネットワークパフォーマンス測定ツールのiPerf3を使って疑似トラヒックを発生させてスループット(1秒間あたりの転送量)を計測しながら、WiPryで使用する周波数帯の電波強度を可視化し測定する。

画面にはiPerf3によって計測されたスループットが表示されている。

問題解決に役立つ論理的思考力が身についたことを実感。

研究のやりがいを感じるのは、今まで明らかにされていなかったオンラインゲームの通信トラヒックの特性を明らかにすることができる点です。身近で普段よくプレイするオンラインゲームですが、その裏で「このような通信が行われている」と分かるのは、とても面白いですね。また、もともと機械学習にも興味を持っていたので、通信トラヒックを推定するAIモデルの作成についても研究の楽しさを味わっています。数学的な理解を必要とするところが多々あり、解釈や理解に苦労することもありますが、「なんとか理解したうえでプログラムを書いて実装し、結果が出て修正を繰り返す」というサイクルを回していくことで、研究の精度が上がっていくことにもやりがいを覚えます。
この研究活動を通して、問題解決に役立つ論理的思考力が身についたと思っています。先生や仲間との相談や議論を重ねるなかで、自分のロジックを検証し、より良い成果を導く力を培うことができました。この能力は、研究だけでなく社会に出てからも役立つと考えています。

Wi-Fi6帯域制御シミュレーションの研究に取り組む。中央画面でネットワーク構成のプログラミング作業を行い、左画面で出力を確認。

研究中の左画面に表示されているのは、研究室で実際に通信中のパケットをキャプチャしたもの。これをシミュレーションに流し込んで使用している。

多様な知識を活かして企業成長や経営課題の解決に貢献を。

今後の目標は、より高精度なトラヒック推定AIモデルを構築することです。なお、卒業後は大手外資系総合コンサルティングファームに内定をいただいており、エンジニアとして大規模なシステム開発に携わる予定です。大学で初めてプログラミングに触れた際にその面白さを感じ、Web系技術を独学に加えてスクールでも学びました。また、長期インターンやアルバイトで実務経験を積むなか、困難を乗り越えてシステムを完成させたときには強い達成感を得ることができました。これらの経験を活かし、入社後は、社会により大きなインパクトを与えるシステム開発に挑戦したいと考えています。その後のキャリアでは、デジタルコンサルタントとして活躍したいです。エンジニアとして培った開発経験、研究を通じて得たネットワーク・AI分野の知識を活かし、企業の成長や経営課題の解決に貢献したいと思っています。
情報技術分野を学びたい方、特に数学・物理が得意な方には福工大工学部がお勧めです。実践的に学べる機会が多いため、自分の努力次第で大きく成長できるチャンスがあり、希望する進路を実現できる環境が整っています。

Wi-Fi7に搭載された速度低下を抑えるPreamble Puncturing技術の研究に取り組むため、使用チャンネルを設定する。
アクセスポイントの設定画面。

TOPICS

2024年10月、本学が主催する国際会議International Conference on Innovations in Engineering and Social Science 2024(ICIESS 2024)で、修士2年生の2名がポスター発表に挑戦し、1名が「BestStudentPoster Presentation Award」を受賞しました。