FIT工学部 研究室最前線 生命環境化学科 北山研究室

研究テーマ

高熱伝導窒化ケイ素セラミックスの開発研究

半導体などで使用されるセラミックス材料の開発研究に取り組む。

北山研究室では、様々な機能を有する新規の無機材料(セラミックス材料)の開発、および環境・エネルギー分野への応用について研究しています。私は、半導体などに使用されるセラミックス材料の開発研究を行っており、広範な分野の中でも「窒化ケイ素セラミックスの高熱伝導性を高めるための研究」に取り組んでいます。開発するセラミックスは研究室内にある電気炉を用いて、無機化合物の微粉末を1000℃以上の高温で焼き固めて作製しています。最終的には、セラミックス材料の安価な工業製品化を目指す研究です。
なお、この研究室では、「Si3N4に対する活性金属ケイ化物の濡れ性の調査」や「N2及びAr雰囲気下におけるSi3N4-YSi2系の相挙動図の作製」の研究ほか、企業との共同研究による「常圧焼結による高熱伝導窒化ケイ素の開発」も行っています。

INTERVIEW

研究室の魅力を語る

大学院生命環境化学専攻・修士課程2年

S.N.さん

出身:
福岡県立北筑高等学校

※2025年10月取材時

興味のある「化学」の多岐にわたる分野を学べることが入学理由。

私が福工大工学部の生命環境化学科へ入学したのは、高校時代から「化学」に興味を持っていたからです。大学選択のポイントとなったのは、工学部の生命環境化学科が、「物質化学」「環境・エネルギー」「生命科学」「食品」など多岐にわたる分野から、化学を専門的に学べるということに魅力を感じたからでした。化学に関連する様々な分野の科目を学ぶことで化学に関する知識が深まって視野も広がり、進路の選択肢も増えると考えて進学を決めました。
当初は、環境・エネルギー分野に興味を持っていましたが、セラミックスが現代社会のものづくりに欠かせない半導体に使用されていることを知って、材料分野への関心が次第に高まっていきました。

電気炉(多目的高温炉)のコントローラーに、研究用試料の窒化ケイ素を高温で焼結させるためのプログラムを設定する。
試料の窒化ケイ素を、電気炉(多目的高温炉)内にセットする。窒化ケイ素は、1800度で約8時間焼き続けて焼結させる。
BiVO4(バナジン酸ビスマス)の光触媒実験を行う。ソーラーシミュレータでメチレンブルー溶液の分解速度を測定することにより、光触媒の活性効率を求める。
SiC(炭化ケイ素)粉末をプレスして固めたサンプルを、ダイヤモンドカッターを操作して実験に適したサイズにカットする。

無機材料に関する専門知識や技術の修得を目指して北山研究室へ。

北山研究室を選んだのは、セラミックスに関する研究への関心が高まったことにより、無機材料に関する専門知識や技術を修得したいと思ったからです。また、気さくで話しやすい担当教員の北山先生の人柄にも惹かれました。北山先生は就活中の学生に対し、各人の個性や関心に応じた企業情報なども随時提供してくださるほど面倒見が良く、学生の進路相談も親身になって聞いてくださいます。このことも、北山研究室を選んだきっかけになりました。もちろん実験に関する相談などにも、忙しい中でも時間を割いてのってくださいます。
研究室自体は明るく、和気あいあいとした雰囲気が漂っています。また研究に取り組む学生に関しては、ガッツあふれる学生たちが揃っていると思います。なお私自身は、約1年間の研究では物足りないとの思いから、研究をさらに深めるため大学院へ進学しました。

オゾン発生装置を用い、難分解性有機物質を模したフミン酸溶液を分解して無機化(CO2とH2Oまで分解すること)する実験に取り組む。

最大約1000度まで熱することができる電炉から、100度〜140度で約3時間焼成したTiO2(酸化チタン)の薄膜電極を取り出す。

セラミックスの研究によって考え抜く力が身についたことを実感。

この研究室に入って良かったことは、やはり現代社会に欠かせない材料である「窒化ケイ素セラミックス」について学べたことです。研究に伴って「資源素材学会」「素材物性学国際会」「表面技術協会」などの学会で研究内容を発表しましたが、発表用のプレゼン資料やポスターの制作によって、思考の言語化や可視化の訓練を行うことができたこともメリットの一つと言えます。
また、このセラミックスの研究によって「考え抜く力」も身につきました。研究では自分自身、あるいは他者によって定められた期限に間に合わせるために、何の実験をどのように行うかについて考える必要があります。学会発表の際にも、何を用いてどう表現したら伝わるか、データをどう処理したら分かりやすいかなども考えなければなりません。このような経験から、社会でも必要な「考える力」が一番身についたと思います。

粉末材料を金型に充填し、一軸プレスを用いて成形後、SiC(炭化ケイ素)を焼き固めるための事前準備を行う。

オゾン発生装置で分解を促したフミン酸溶液を、pHメーターで計測する。酸性を示すと、有機物質の分解が進んでいることがわかる。

将来は、研究者となって顧客のニーズに応える製品を開発したい。

研究の最終目標は、窒化ケイ素セラミックスの作製を、従来の方法よりも低温・短時間で大量生産が可能なレベルまでに持っていくことです。今後は、私がこれまでに行ってきた研究結果を踏まえて、窒化ケイ素に添加する材料や熱処理条件を変えていきながら、高熱伝導窒化ケイ素セラミックスの作製に取り組んでいきたいと考えています。卒業後は、内定をいただいている化学素材メーカーの様々な製造現場で素材づくりに関するノウハウを学び、製造現場を知り尽くした研究者となって、顧客ニーズに応える製品を産み出していきたいと思っています。
生命環境化学科をはじめ、福工大工学部の各学科に興味がある方は、まずオープンキャンパスなどに参加してみてはいかがでしょうか。ぜひ、素晴らしい学習環境を体感し、自分が学びたいことや研究したいことを見つけてください。

エバポレーターを用いて、溶液の中に入っている溶質(窒化ケイ素/ケイ化イットリウム)と溶媒を分離させる。
BaTiO3(チタン酸バリウム)とBaB2O4(ホウ酸バリウム)の混合物をホットサーモカップルで溶解させたのちに急冷して、ガラス化を観察する。