卒業生の今 次世代航空機への搭載を目指す高性能材料「CFRTP」のスペシャリストへ。

知能機械工学科

平田 裕紀

出身高校/祐誠高等学校(福岡県)
工学部知能機械工学科/2018年卒業
勤務先/日機装株式会社(航空宇宙事業本部 航空宇宙技術センター 技術部 研究開発グループ所属)

CFRTPを用いた次世代航空機向け新製品の開発を担当。

日機装株式会社は、「インダストリアル事業」、「精密機器事業」、「航空宇宙事業」、「メディカル事業」などの事業を展開している会社です。私は現在、航空宇宙事業の分野で、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)と呼ばれる材料を用いた次世代航空機向け製品の開発を担当しています。CFRTPは、熱可塑性樹脂を炭素繊維で強化した複合材料です。

なお今日、当社の航空宇宙事業部の主力製品に使用している材料はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)と呼ばれる熱硬化性樹脂を炭素繊維で強化した複合材料で、現在、航空機の構造材料の主流になっています。この2つの材料は、CFRP=クッキー、CFRTP=チョコレートに例えられます。CFRPは熱を加えると硬化する“熱硬化性樹脂” を、CFRTPは熱を加えると軟化する“熱可塑性樹脂”を使用しています。CFRTPは、一度硬化しても熱を加えれば自由に変形できるという特徴があるため比較的リサイクル性が高く、環境意識が年々高まる航空業界で注目されている材料です。

このCFRTPを用いた製品の製造技術及び周辺技術を確立し、新製品を産み出すことが開発のテーマであり私の職務です。この技術は発展途上のため、当社の技術力を高めて製品に落とし込むべく、私は開発テーマにおいて確立・明確にすべき技術を整理し、スケジュールを組み、また試作品や治具等の設計から試作、試験、解析を実施し、さらに得られた結果の分析に取り組むなど、一貫した開発業務を行っています。

日機装は航空業界でものづくりをしたいという思いを実現できる会社。

志望の理由としては、幼い頃から航空機に興味があったこと、そして、ものづくりが好きだったことが根底にあります。日機装を知ったのは、大学3年次の終盤あたり。独自の高い技術力で航空業界を支えているという情報を得て、“ここしかない”と直感で応募しました。面接で志望理由を聞かれた際に、二言目に“直感です”と答えて面接官に笑われた記憶があります。また、大学3・4年次に配属された江頭研究室では、マイクロバブルの研究に取り組んでいましたが、そこで研究することの楽しさを知り、ものづくりへの思いがより強くなったことも影響しています。

今の業務では、大学4年間で学んだ4力学や設計/製図、材料等の専門知識は不可欠な知識であり、実際に活かされていると感じています。大学で使用していた一部の教科書は今でも私のデスクに置いており、時々読み返しています。講義の中で教授のアドバイス、また何度も口すっぱく指導いただいていたことは、今でも“あのときに仰っていた通りだな”と思い起こすことが多々あります。

大学で培われた、協調性やコミュニケーション能力も活かされています。振り返ると大学では、グループワークや課題などで、仲間と協力して取り組む機会が多かったように思います。仕事も、個人プレーではできません。ですから同僚や後輩、先輩、上司との良い人間関係の構築や主体性が重要になりますが、こうしたことも大学4年間で自ずと身につけたスキルの一つだと思っています。

複合材料業界における世界最大の展示会での評価が大きな自信に。

やりがいや達成感を覚える瞬間は、誰もやったことがない技術に挑戦しているとき、アイデアが形になったとき、そしてそれが評価されたときでしょうか。新しいことに挑戦するときはワクワクしますし、結果の良し悪し関係なく新たな発見があった際は大きなやりがいを感じます。もちろん、そうした取り組みが評価された際には大きな達成感や喜びを覚えます。当社は2023年、フランス・パリで開催された複合材料業界における世界最大の展示会「JEC World 2023”の“JEC Composites Innovation Awards2023」において、開発品がファイナリストにノミネートされました。その際は、大きな達成感を得ることができ、より良いものづくりがしたいという思いが一層強くなりました。また、このことは大きな自信にもつながりました。

これからの目標としては、まずCFRTPを用いた製品開発をさらに進展させ、実際に航空機や他の移動体に製品を搭載させたいと思っています。我々が研究開発できるのは当社を支えている各種製品に携わる他社員のおかげです。ですから、技術の蓄積および主力製品を産み出すことで、「会社や世の中に貢献したい」との思いを胸に日々の業務にあたっています。併せて今後、技術者の醍醐味でもある技術の権利化(特許取得)についても積極的に取り組んでいく考えです。自身の将来像として目指すのは、CFRTPのスペシャリスト。高い技術力をもとに、将来の当社を支える一員になりたいと思っています。

後輩へのメッセージ

福工大は、ものづくりの楽しさを教えてくれた大学です。今、開発に取り組む私が伝えたいことは、「将来の目標を達成するためには、目標を明確にしたうえで今やるべきことを理解し行動すること」の重要性です。また、想像力や逆境を楽しめるマインドも大切です。結果がどうであれ、その結果が最善。その過程で逆境が待ち受けているかもしれませんが、その逆境を楽しんでみてください。